【GX-ETS】 カーボンブラック製造 反応炉とGF算定

本稿はサステナビリティスタンダードパートナーズが、GX推進法に基づく排出量取引制度について、カーボンブラック製造業がどのように制度対象となり、ファーネス法反応炉のプロセスCO2と燃焼CO2、テールガスの最終処分先管理、二重計上防止を踏まえて排出目標量をグランドファザリング方式で算定し、排出枠償却に至るのかを整理するものです。なおGX-ETSはCO2直接排出のみを対象とし、CH4・N2O等の非CO2ガスは対象外です。

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目次

結論

カーボンブラック製造業者は、CO2直接排出量の年度平均が10万t以上となる事業者としてGX-ETSの制度対象となります。カーボンブラック製造業は、排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部2.16「エチレン等の製造」にエチレン・プロピレン・酸化エチレン等と同節で位置づけられており、GX-ETSで独立したベンチマークは設定されていないため、排出目標量はグランドファザリング方式で算定します(排出実績量は、反応炉の燃料燃焼CO2に加え、排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部2.16「エチレン等の製造」に規定する原材料起源CO2(カーボンブラック2.1 tCO2/t)を合算)。プロセスCO2と燃焼CO2の二重計上防止、テールガスの行先別マスバランスが実務の核心です。

背景

カーボンブラックは、原料油(FCCデカントオイル、クレオソート油等)と天然ガスを反応炉内で部分燃焼させ、ススと呼ばれる微粒炭素を回収して製造する無機炭素材料で、タイヤのゴム補強材、塗料・インキの顔料、電子部材の導電材などに広く使用されます。反応炉では原料の炭素の一部が製品となり、残りがCO2として排出され、同時に未反応の燃料ガスが副生してテールガスとなります。テールガスは加熱炉・ボイラーでの燃料として自所消費され、一部は外販される形態が一般的です。GX-ETSでは化学分野の一角として、ファーネス法の排出構造に即した算定が求められます。

SSPの定義

SSPはサステナビリティスタンダードパートナーズの略称で、経済産業省 GXリーグ登録検証機関として第三者確認を含む第三者保証業務を主業とする機関です。本稿におけるカーボンブラック製造業とは、ファーネス法・サーマル法・ランプ法などにより微粒炭素を工業的に製造する事業を指します。テールガスとは、反応炉から排出される未反応ガスで、主成分はCO、H2、CO2、H2O、少量のCH4等で構成され、自所内の加熱炉やボイラー燃料として利用するほか、外部売却や燃焼塔での処分が行われます。熱処理は、製品カーボンブラックの表面特性を調整するために加熱する工程で、CH4発生に影響します。

変更点の要約

  • カーボンブラック製造業は反応炉プロセスCO2と燃焼CO2の切り分けが明確化されました。
  • テールガスの最終処分先(自所消費・外販・燃焼塔)を追跡管理する必要があります。
  • 反応炉からの原材料起源CO2(2.1 tCO2/t)と燃料燃焼CO2を切り分けて算定することが求められます。
  • プロセスCO2と燃焼CO2の二重計上を防ぐマスバランス管理が標準化されました。
  • 原料油・天然ガスの受入量と製品カーボンブラック生産量の質量整合が確認業務の焦点です。
  • 排ガス処理設備の燃料消費も事業所バウンダリ内で計上します。

基礎知識

カーボンブラック排出管理で押さえるべき前提は3点です。第1はプロセスCO2の特定で、反応炉で原料の炭素のうち製品として回収されない分がCO2として放出され、算定・報告マニュアル2.16「エチレン等の製造」で規定された排出係数2.1 tCO2/tを用いて算定します(不完全燃焼のCOやCH4はGX-ETSの対象外)。第2はテールガスの追跡で、自所内燃料利用分は自所のバウンダリ内で燃焼CO2として計上し、外販分は販売先の排出として切り分けます。第3はGX-ETSの対象範囲の理解で、本制度はCO2直接排出のみを対象とし、非CO2温室効果ガス(CH4・N2O等)や電力由来の間接排出は対象外です。

論点整理表

論点制度上の位置づけカーボンブラック製造での該当判断基準実務上の留意点
対象判定GX推進法第33条第1項年度平均排出量10万t以上直近3年度のCO2直接排出量の平均国内主要メーカーは対象可能性あり
反応炉CO2プロセスCO2原料油・天然ガス部分燃焼質量収支から算定製品回収率と整合
テールガスCO2プロセスCO2反応炉排出ガスガス組成×流量燃料利用時は別計上
自所利用燃焼エネルギー由来加熱炉・ボイラーテールガス利用量×係数二重計上を回避
外販テールガス対象外外部販売販売先で計上契約書と計量で証憑化
熱処理CH4非CO2ガス表面改質工程熱処理量×排出係数製品ライン別把握
排ガス処理ベンチマーク内燃焼塔・脱硝設備燃料消費設備別計量
二重計上防止マスバランスプロセスと燃焼の切り分け質量保存則フロー図で整理
排出枠償却GX推進法翌年度1月31日までに保有保有義務量分の排出枠不足分は上限価格の1.1倍を負担金として納付

比較表

排出フロー算定区分計算方法証憑
原料油投入炭素投入側受入量×炭素含有率受入伝票と分析
製品回収炭素産出側生産量×炭素含有率出荷計量と分析
テールガス炭素産出側流量×組成×分子量ガス計量と組成分析
自所利用CO2燃焼排出テールガス利用×係数自所燃料計量
外販テールガス対象外販売量×係数販売先の計上責任
熱処理CH4非CO2熱処理量×GWP換算工程記録

制度対象判定とスケジュール特例

事業者単位の判定

カーボンブラック事業者は、主要製品ラインごとの年間生産量が数万tから数十万tのレンジで、原料油1tあたり約0.6tの製品と多量のテールガスが発生する構造のため、年度平均排出量は多くの事業者で10万tを超える可能性があります。判定は事業者単位で、子会社・関連会社は別事業者として個別判定する運用です。

2026年度特例

2026年度に対象となる場合は、2026年9月末までに基礎情報と年度平均排出量のみ届出し、排出目標量等は2027年9月末まで猶予されます。2026年度を活用し、反応炉別・テールガス経路別の計量体系、熱処理工程のCH4測定、登録確認機関契約を進めることが推奨されます。

カーボンブラックの算定(GF方式)の仕組み

グランドファザリング方式とマスバランス

カーボンブラック製造業にはGX-ETSで独立したベンチマークが設定されていないため、排出目標量はグランドファザリング方式で基準年度の排出実績量に基づき決定されます。排出実績量は、反応炉の燃料燃焼CO2に加え、算定・報告マニュアル2.16の原材料起源排出(カーボンブラック2.1 tCO2/t×生産量)を合算する質量保存則に立脚します。投入炭素から製品回収炭素と外販テールガス炭素を差し引いた残りを、テールガス自所燃焼分(燃焼CO2)と反応炉プロセスCO2(原材料起源)に切り分けて計上し、原料油・天然ガス・製品・テールガス・排出ガスの各ポイントの計量と組成分析を整合させます。

熱処理と製品特性

熱処理を伴う表面改質製品は、熱処理炉の燃料消費を個別に把握します(GX-ETSはCO2直接排出のみを対象とし、CH4は対象外)。熱処理なしの製品ラインでは反応炉外の加熱排出が限定的となり、エネルギー由来排出の比率が低下します。製品ラインナップの構成が排出原単位に影響するため、製品別の活動量把握が求められます。

ベンチマークとグランドファザリングの境界

対象工程

反応炉、予熱炉、冷却急冷装置、回収バグフィルタ、ペレタイザ、ドライヤ、充填包装、燃焼塔、脱硝装置、テールガス用ボイラー、工場内動力設備はバウンダリ内です。原料受入・保管設備のうち燃料を消費するものも対象です。

対象外とグランドファザリング

事務所、研究棟、別敷地の輸送拠点、製品物流倉庫などはベンチマーク対象外またはグランドファザリング扱いです。外販テールガスの販売先での排出は別事業者の計上責任で、当社のバウンダリ外です。

排出枠割当と未償却相当負担金

排出枠の運用

カーボンブラック事業者の排出枠は、反応炉プロセスCO2と燃焼CO2の合算規模で割り当てられます。排出削減は反応炉の効率改善、テールガスの高度利用(発電への転換、CCUSへの回送)、熱処理省エネ、代替原料の採用などが中心となります。排出枠は1t単位で無償で割り当てられ、市場取引で売買可能です。

負担金リスク

翌年度1月31日時点で排出枠が不足すれば不足分×参考上限取引価格×1.1を未償却相当負担金として納付します。原料油価格変動、製品需要変動、テールガス処分コストの変動が重なるため、排出枠ポジション管理と原料・製品・テールガスの計量精度向上を並行で進める必要があります。

移行計画と登録確認機関

移行計画の記載

カーボンブラック事業者の移行計画では、反応炉改良、テールガス発電の高度化、CCUS導入、水素混焼、バイオ原料油の採用、熱処理炉の電化などを投資計画に記載します。研究開発欄にはGX技術区分特許やグリーンイノベーション基金プロジェクトを記載します。

確認業務のポイント

登録確認機関は、プロセスCO2と燃焼CO2の切り分け、テールガスマスバランス、排出係数の選定根拠(2.16の2.1 tCO2/t適用)、原料・製品・テールガスの計量誤差、外販テールガスの契約書整合、排ガス処理関連設備のバウンダリを確認します。

実務フロー

  • Step1 事業者単位の年度平均排出量を確認し、制度対象判定を確定する。
  • Step2 ERMSアカウントとGビズIDを準備し、法人等保有口座を開設する。
  • Step3 反応炉別・テールガス経路別・熱処理炉別の計量体系を整備する。
  • Step4 登録確認機関と契約し、フロー図と計量証憑を共有する。
  • Step5 9月30日までに排出目標量等の届出と移行計画をERMSで提出する(※2026年度初年度の場合は基礎情報及び年度平均排出量のみの届出で足り、排出目標量等の届出と移行計画提出は2027年9月末まで猶予)。
  • Step6 11月末頃に排出枠の無償割当を受け、法人等保有口座で残高を確認する(※2026年度初年度の場合は排出枠の無償割当も2027年度となる)。
  • Step7 翌年度4月から9月に排出実績量の算定と登録確認機関の確認を受け、9月30日までに報告する。
  • Step8 翌年度1月31日までに保有義務量分の排出枠を保有し、不足時は市場調達か負担金納付で対応する。

FAQ

プロセスCO2と燃焼CO2の境界はどこに引きますか

反応炉内で原料の炭素が部分酸化してCO2となる分をプロセスCO2、テールガスを自所内の加熱炉・ボイラーで燃料として燃焼させて発生するCO2を燃焼CO2として切り分けます。マスバランスで二重計上を回避する運用を証憑化します。

外販テールガスはどう計上しますか

外販テールガスの炭素分は当社の反応炉から排出されるプロセス側では既に捕捉されていますが、その後の燃焼による排出は販売先の事業者が計上します。当社は外販量を計量し販売先と契約書で整理し、自所排出としては計上しません。

カーボンブラック2.1 tCO2/tの排出係数はどう適用しますか

排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部2.16「エチレン等の製造」の表Ⅱ-22に規定されるカーボンブラック排出係数2.1 tCO2/tを、カーボンブラック生産量に乗じて原材料起源CO2を算定します。これは反応炉で発生するプロセスCO2に相当し、テールガスの自所燃焼による燃焼CO2とは別勘定で計上します。GX-ETSはCO2直接排出のみを対象とし、CH4等の非CO2ガスは対象外です。

サーマル法とファーネス法で算定は変わりますか

排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部2.16(表Ⅱ-22)では、製造方法によらずカーボンブラック生産量に2.1 tCO2/tの排出係数を一律に適用するよう規定されています。サーマル法・ファーネス法・ランプ法のいずれの製法でも同係数を用い、反応炉の燃料燃焼CO2は別途エネルギー起源排出として計上します。製造プロセスごとに計量ポイント(原料受入・テールガス・製品出荷)を設計し、マスバランスによる二重計上回避を行います。

原料油の組成分析はどう扱いますか

FCCデカントオイル、クレオソート油、エチレンボトム油など、原料油ロットごとに炭素含有率、水素含有率、不純物を化学分析し、投入炭素量の計算根拠とします。ロットごとの分析結果を証憑として保存し、年間平均値の使用時は妥当性を示します。

燃焼塔でのフレアリングはどう扱いますか

非定常時の燃焼塔フレアリングはテールガスの処分先の一つで、当社のバウンダリ内の排出として計上します。フレア流量計、パイロット燃料、組成データを用いて排出量を算定し、運転日誌・非定常記録と連携させます。

まとめ

カーボンブラック製造業にとってGX-ETSは、GX-ETSの独立したベンチマークがない無機化学業種としてグランドファザリング方式で排出目標量を決定しつつ、反応炉のプロセスCO2(算定・報告マニュアル2.16の2.1 tCO2/t)と燃焼CO2、テールガスの最終処分先を質量保存則で一体把握する制度設計です。GX-ETSはCO2直接排出のみを対象とし、CH4・N2O等の非CO2ガスは対象外です。プロセスと燃焼の二重計上を避けるマスバランス、外販テールガスの切り分け、排出係数の出典明示を登録確認機関の確認に耐える形で整備し、排出枠市場の活用と未償却相当負担金リスクの管理、反応炉改良・テールガス高度利用・CCUS導入を移行計画で対外公表することが、この制度下での対応の骨格となります。

参考リンク

  • 経済産業省 排出量取引制度のページ
  • GX推進機構 排出量取引制度関連情報
  • デジタル庁 GビズID
  • GX推進法 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律
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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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