CDP 2026 LSRS対応の徹底解説

CDP 2026のModule 7では、旧バイオジェニックカーボン関連質問が整理され、GHG Protocol LSRS対応の関連性開示質問群が新設されました。本記事はCDP LSRS対応の背景・新質問の構造・2026年における報告制限・社内会計準備のポイントを、温室効果ガス算定実務の観点から解説します。

※本記事はCDP 2026の公式英語資料を一次情報として整理したものです。質問番号やEssential Criteria、Type of verification、Disclosure・Awareness・Management・Leadershipといった用語は、CDP公式資料との照合性を優先し、原文表記のまま記載しています。

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目次

CDP LSRS 要約

CDP 2026の質問7.12と7.13系列は、GHG Protocol Land Sector and Removals Standard すなわちLSRSへの対応のため再編されました。CDP公式によれば、LSRS公表時期の都合により、組織は2026年企業質問書ではLSRS準拠の排出量および除去量の量的報告はまだできません。2026年は組織が土地セクター活動および炭素除去の関連性と会計区分の評価状況を示す段階です。

CDP LSRS 背景

GHG Protocolは温室効果ガス排出量算定の国際標準を提供する団体です。Land Sector and Removals Standard すなわちLSRSを新たに策定し、土地セクター活動と除去活動の会計処理に関する詳細なガイダンスを示しました。これは農業・林業・食品セクターの活動が、組織の温室効果ガスインベントリにどのように反映されるかを規定する基準です。なお、LSRSの正式公表時期および最終化状況の詳細についてはGHG Protocol公式サイトで確認することが推奨されます。

CDP 2026はこのLSRSへの整合化のため、質問7.12と7.13系列を再編しました。CDP 2026質問書本体には、LSRS公表時期の都合により組織は2026年質問書でLSRS準拠の排出量・除去量の量的報告はまだできない、と明示されています。一方で2026年は組織が土地セクター活動および炭素除去が自組織に関連するか、関連する場合にはLSRSで求められる会計区分の評価状況を示すことができます。

特に農業・林業・食品セクターは、土地利用変化や農業活動からの排出と除去の両方を扱う必要があり、社内の温室効果ガス算定体系の見直しが今後必要となります。電力セクターや素材セクターでカーボンキャプチャー&ストレージを推進する組織も、新質問7.13系列で関連性の開示が求められます。

CDP LSRS 定義

CDP LSRSは、GHG Protocolが新たに策定したLand Sector and Removals Standardの略称で、土地セクター活動と除去活動の温室効果ガス会計処理を規定する国際基準です。SSPはこれを、CDP 2026の質問7.12と7.13系列を通じて、土地利用変化と技術的除去の双方を組織のインベントリに統合するためのフレームワークと位置付けています。2026年は関連性開示の段階であり、量的報告は将来の質問書で本格化する見込みです。

CDP LSRS 基礎

CDP LSRSで評価される主な項目は次のとおりです。

質問7.12で組織の土地セクター活動の有無を開示します。農業・林業・その他土地セクター活動が対象です。

質問7.12.1でLSRSサブカテゴリーの該当性をスコープ1・スコープ2・スコープ3別に開示します。実際の列構成はScope 1・Scope 2・Scope 3・Please explainの4列です。

質問7.12.2でバイオジェニックCO2排出量を開示します。これは旧質問7.12.1の番号変更版で、列構造に変化はなく、条件分岐ロジックが新7.12の関連性質問に紐付くように更新されました。

質問7.12.3で直接操業のバイオジェニックデータを開示します。これは旧質問7.13.1の番号変更版で、Agricultural commodities・Food, beverage & tobacco・Paper & forestryセクターのみに表示されます。条件分岐ロジックのみ更新されています。

質問7.13で技術的CO2除去または地質学的CO2貯留の有無を開示します。

質問7.13.1で除去アカウンティングのサブカテゴリーをスコープ1・スコープ2・スコープ3別に開示します。

CDP LSRS 結論

CDP LSRS対応の優先度は、自社の業態と土地セクター活動の有無に依存します。SSPの結論は次のとおりです。

  • 農業・林業・食品セクターは土地利用変化と農業活動の両方の影響を受けるため、対応の優先度が最も高くなります。質問7.12で関連性を開示する準備が必要です。

  • 電力セクターや素材セクターでCCSまたは直接空気回収を推進する組織は、質問7.13系列で関連性開示が必要です。

  • CDP 2026では新7.12.2と新7.12.3が「全レベル採点対象外」と明記されており、Disclosure・Awareness・Management・Leadershipのいずれの段階でも採点されません。回答自体は求められますがスコアへの影響はないため、データ整備の優先順位を踏まえた対応が現実的です。

  • 旧7.12と旧7.13の親質問は単純に削除され、旧7.12.1は新7.12.2へ、旧7.13.1は新7.12.3へ番号が変更されています。Copy Forwardシートで質問単位の流用可否を確認することが推奨されます。

  • 別件として質問7.15のScope 1とScope 2排出量のGHG type別分解は、Q7.15自体は2026年もDisclosure級とAwareness級でスコア化されますが、Scope 2の分解部分のみ2026年は未スコアで、CDP公式は「2026年はreporting initialのため、Scope 2 breakdownsは2027年からスコア化」と予告しています。データ整備という意味では並行準備が推奨されます。

CDP LSRS 変更点

CDP 2026のModule 7におけるLSRS対応の主要な変更は次のとおりです。

旧7.12のバイオジェニックカーボン関連性質問と旧7.13の直接操業のバイオジェニックカーボン関連性質問は、いずれも親質問として削除されました。

旧7.12.1の排出量質問は新7.12.2に番号変更され、列構造はそのままに条件分岐ロジックのみ更新されました。

旧7.13.1の直接操業データ質問は新7.12.3に番号変更され、列構造はそのままに条件分岐ロジックのみ更新されました。

新7.12の土地セクター活動の有無が新設されました。LSRSの土地セクター枠組みに直接対応する関連性開示の質問です。

新7.12.1のLSRSサブカテゴリーの該当性が新設されました。スコープ1・2・3別の該当性をマトリクス形式で確認します。

新7.13の技術的CO2除去・地質学的CO2貯留が新設されました。CCSや直接空気回収を推進する組織が対象です。

新7.13.1の除去サブカテゴリーが新設されました。スコープ1・2・3別の該当性を整理します。

CDP公式の重要な制限事項として、新7.12.2と新7.12.3は全レベル採点対象外となっています。LSRS公表時期の都合により、組織は2026年企業質問書ではLSRS準拠の量的報告はまだできないと公式に明示されています。

CDP LSRS 論点

CDP LSRS対応で実務担当者が判断を迫られる主要な論点は次のとおりです。

論点重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
土地セクター活動の該当性判定農業・林業・その他土地セクター活動の有無を確認製造業は対象外直接操業に加え上流のバリューチェーン活動も含めて判定
LSRSサブカテゴリーの該当性スコープ1・2・3別に該当性を整理スコープ1のみで対応可スコープ全体で網羅的に整理
バイオジェニックカーボンの再記載旧質問の回答を新7.12.2・7.12.3に対応過去回答を流用可Copy Forward可否を確認の上、対応
技術的CO2除去の会計処理LSRSに整合した会計処理が必要排出量と相殺可能除去はインベントリで別建て計上が原則
Q7.15 Scope 2 GHG分解への準備データ整備を2026年中に開始Q7.15は2026年すべて未スコアScope 1分解は2026年からスコア化、Scope 2分解は2027年から
第三者検証への対応LSRS関連データも検証スコープに含める既存スコープのみで可新質問データも検証範囲に追加

CDP LSRS 比較

旧7.12・7.13と新7.12・7.13系列の対応関係は次のとおりです。

旧質問 (CDP 2025)新質問 (CDP 2026)主な変更
旧7.12(バイオジェニックカーボン関連性、一般セクター)削除親質問は単純に削除。新7.12は別内容
旧7.13(バイオジェニックカーボン関連性、AC/FB/PFセクター)削除親質問は単純に削除。新7.13は別内容
旧7.12.1 排出量新7.12.2 排出量番号変更(条件分岐ロジック更新のみ、列構造はNo change)
旧7.13.1 直接操業データ新7.12.3 直接操業データ番号変更(条件分岐ロジック更新のみ、列構造はNo change)
該当質問なし新7.12 土地セクター活動の有無LSRS新設、Disclosure・Awareness採点
該当質問なし新7.12.1 LSRSサブカテゴリー該当性LSRS新設、Disclosure・Awareness採点
該当質問なし新7.13 技術的CO2除去LSRS新設、Disclosure・Awareness採点
該当質問なし新7.13.1 除去サブカテゴリーLSRS新設、Disclosure・Awareness・Management採点

CDP LSRS 章解説

CDP Full Corporate Scoring Changes 2026のModule 7でLSRS関連の章別解説は次のとおりです。

第7.12章 土地セクター活動

何が求められるか。組織が農業・林業・その他土地セクター活動を行っているかを開示します。LSRSサブカテゴリーへの該当性をスコープ別に整理することが求められます。実務影響は何か。農業・林業・食品セクターは新たな会計区分での集計が必要となります。注意点は何か。直接操業のみではなく、上流のバリューチェーン活動も含めて該当性を判定する必要があります。

第7.12.1章 LSRSサブカテゴリーの該当性

何が求められるか。LSRSが定めるサブカテゴリー、すなわち土地利用変化、農業活動、植林・再造林等の該当性をスコープ1・2・3別に開示します。実務影響は何か。スコープ全体で網羅的な該当性整理が必要となり、社内の温室効果ガス算定体系を再構築する必要があります。注意点は何か。バウンダリーの設定とサブカテゴリー間の重複排除に注意が必要です。

第7.13章 技術的CO2除去・地質学的CO2貯留

何が求められるか。CCSや直接空気回収などの技術的除去活動を実施しているかを開示します。実施している場合は、除去のスコープ別計上を行います。実務影響は何か。除去は排出量との相殺ではなく、インベントリで別建て計上が原則となるため、会計区分の整理が必要です。注意点は何か。除去活動の永続性すなわちpermanenceと検証可能性が将来的にスコアに影響する可能性があります。

CDP LSRS 重要点

LSRSと社内温室効果ガス算定体系の整合化。LSRSは温室効果ガスインベントリの算定基準を提供する標準であり、CDPはこれを開示の枠組みとして援用しています。社内の温室効果ガス算定体系がLSRSの会計処理に整合していない場合、CDP回答時に質問7.12・7.13系列で適切な開示ができないリスクがあります。GHG Protocolの公式ガイダンスを参照し、社内体系の見直しを進めることが推奨されます。

2027年Q7.15 Scope 2分解スコアリングへの準備。Q7.15そのものは2026年もDisclosure級とAwareness級でスコア化されます。ただしScope 2分解部分のみ2026年は未スコアで、2027年からスコア化が予告されています。Scope 2の温室効果ガス別、すなわちCO2・CH4・N2O・HFC・PFC・SF6・NF3の分解集計は、データ収集体系を整備しないと短期間で対応できません。2026年中にデータ収集設計を開始することで、2027年の対応負荷を分散できます。

CDP LSRS 手順

CDP LSRS対応の実務フローは次のとおりです。

自社の土地セクター活動の該当性を判定する

直接操業と上流のバリューチェーン活動の両方で判定します。

LSRSサブカテゴリーの該当性をスコープ別にマトリクス整理する

スコープ1・2・3別に該当性を網羅的に整理します。

社内温室効果ガス算定体系をLSRSに整合化する

算定区分の見直しと再集計を行います。

旧7.12.1と旧7.13.1の回答内容を新7.12.2・7.12.3に対応させる

Copy Forwardシートで質問単位の流用可否を確認の上、必要な記載を行います。

技術的CO2除去・地質学的CO2貯留の有無を確認する

CCSや直接空気回収を推進する場合は質問7.13系列に対応します。

第三者検証スコープにLSRS関連データを追加する

新質問群のデータも検証対象に含めます。

2027年Q7.15 Scope 2分解への準備を開始する

データ収集体系の見直しを2026年中に進めます。

CDP LSRS FAQ

Q1 LSRSとは何ですか

LSRSはGHG Protocol Land Sector and Removals Standardの略称で、GHG Protocolが公表した土地セクター活動と除去活動の温室効果ガス会計処理に関する国際基準です。CDP 2026の質問7.12と7.13系列がこの基準に整合する形で再編されています。正式公表時期と最終化状況についてはGHG Protocol公式サイトで確認することが推奨されます。

Q2 製造業は土地セクター活動に該当しないのではないですか

直接操業では該当しないケースもありますが、上流のバリューチェーン活動、原材料調達・農産物使用などで該当する可能性があります。スコープ3カテゴリ1、すなわち購入製品・サービスなどで土地セクター活動が含まれる場合は、質問7.12で対応が必要となります。

Q3 旧7.12と旧7.13の過去回答は流用できますか

旧7.12と旧7.13の親質問は単純に削除されました。旧7.12.1は新7.12.2に、旧7.13.1は新7.12.3に番号変更され、列構造はNo change、変更点は条件分岐ロジックの更新のみです。Questionnaire Changes TrackerのCopy Forwardシートで質問単位の流用可否を確認の上、必要に応じて再記載を行います。

Q4 CCSを推進していない組織は質問7.13に対応する必要がありますか

CCSや直接空気回収などの技術的除去活動を実施していない場合、質問7.13で「該当なし」を選択することが可能です。ただし将来的に除去活動を推進する計画がある場合、現時点での状況を適切に開示することが推奨されます。

Q5 2027年Q7.15 Scope 2分解スコアリングはどのような形になりますか

CDP公式は質問7.15のScope 1とScope 2排出量のGHG type別分解について、2026年はScope 1分解はDisclosure級・Awareness級でスコア化されるが、Scope 2分解は初年度のため未スコア、2027年からScope 2もスコア化と予告しています。詳細な評価基準は2027年文書で公表予定です。現時点では、現行のスコープ別総量集計に加えて、温室効果ガス別の分解データを収集する体系を準備することが推奨されます。

Q6 第三者検証スコープにLSRS関連データを含めるべきですか

CDP 2026では質問7.9.3でスコープ3排出量の検証割合がスコア対象となっています。LSRS関連データもスコープ3に含まれる場合は、検証スコープに追加することが推奨されます。

Q7 LSRSの会計処理を社内体系に反映するのに必要な期間はどのくらいですか

組織の規模と既存の温室効果ガス算定体系の整備状況により異なります。中規模組織では3から6ヶ月、複雑なバリューチェーンを持つ大規模組織では6から12ヶ月程度の準備期間を見込むことが現実的です。2026年回答に間に合わせるためには、2026年前半中の着手が推奨されます。

CDP LSRS 全体像

CDP 2026の主要変更点全体については、CDP 2026 全体像と主要変更点まとめ で全体俯瞰を行っています。Forestsやプラスチックなど他の領域の変更点と合わせて自社の対応戦略を立てる場合は、詳細記事をご参照ください。

CDP LSRS まとめ

CDP LSRS対応はGHG Protocolの新基準に整合化するための重要な改定です。農業・林業・食品セクター、CCSを推進する電力・素材セクターは、社内温室効果ガス算定体系の見直しと第三者検証スコープの拡張を並行して進めることが推奨されます。SSPはCDPの気候変動スコア向上に向けた温室効果ガス排出量の第三者検証を専門領域として支援しています。LSRS関連データを含むScope 1・2・3の検証についてはお問い合わせください。

参考リンク

GHG Protocol Land Sector and Removals Standard and Guidance
CDP Climate Change Full Corporate Scoring Methodology 2026
CDP Climate Change Scoring Essential Criteria 2026
CDP公式ガイダンスポータル myportal.cdp.net
IFRS Foundation ISSB S2

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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