CDP2026 Forests7コモディティ化の解説

CDP 2026のForests領域では、従来の4品目に加えてココア・コーヒー・天然ゴムの3品目が新たにスコアリング対象となり、7コモディティ体制への移行が行われました。本記事はCDP Forests領域の変更内容と実務影響を、サプライチェーンマッピング・回答準備・第三者検証の観点から整理します。

※本記事はCDP 2026の公式英語資料を一次情報として整理したものです。質問番号やEssential Criteria、Type of verification、Disclosure・Awareness・Management・Leadershipといった用語は、CDP公式資料との照合性を優先し、原文表記のまま記載しています。

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目次

CDP Forests 要約

CDP 2026のForests領域は、畜牛・パーム油・大豆・木材製品の4品目に、ココア・コーヒー・天然ゴムの3品目が追加されて7品目体制となりました。質問1.22、5.11、8.1から8.17、Essential CriteriaのEC-F3はLeadership到達のため、EC-F12からEC-F17はA List取得のための基準として、いずれも全コモディティを評価対象としています。

CDP Forests 背景

ココア・コーヒー・天然ゴムの3品目は、その産業のサプライチェーン上で森林破壊や自然生態系の転換に大きな影響を与えるコモディティとして国際的に認識されてきました。Accountability Framework initiative すなわちAFiおよびScience Based Targets Network すなわちSBTNが定める高リスクコモディティリストに含まれています。

CDP公式文書によれば、天然ゴムは2018年以降、ココアとコーヒーは2020年以降、CDPの質問書で報告自体は受け付けられてきました。ただしいずれもスコアリング対象には含まれていなかったため、対応の優先度は組織判断に委ねられていました。2026年からは本格的なスコアリング対象となるため、これら3品目の調達または生産を行う組織は、既存4品目と同等の精度でサプライチェーン情報を整備する必要があります。

特に食品メーカー、菓子・チョコレート製造業、タイヤメーカー、自動車部品サプライヤーなど、これら新規3品目を取り扱う業種では、対応工数が大きく増加することが予想されます。

CDP Forests 定義

CDP Forestsは、CDPの3つのスコアリング分野の1つで、森林破壊と自然生態系の転換に関連する企業活動を評価する領域です。SSPはこれを、組織が直接的または間接的に取り扱う森林リスクコモディティについて、サプライチェーンの透明性・リスク管理・目標設定・第三者検証を総合的に問う評価体系と定義します。2026年からの対象品目は、畜牛・パーム油・大豆・木材製品・ココア・コーヒー・天然ゴムの7品目となります。

CDP Forests 基礎

CDP Forestsで評価される主な項目は次のとおりです。

質問1.22
組織の生産・調達コモディティを開示します。

質問1.24.2
バリューチェーンマッピングの実施範囲をコモディティ別に確認します。

質問5.11
バリューチェーンとの環境課題エンゲージメントを開示します。Forestsを含む環境課題が対象です。

質問8.1から8.17
コモディティ別の生産量・調達量、原産地、トレーサビリティ、no-deforestation・no-conversion目標、第三者認証、検証状況を開示します。

Essential Criteriaは適用レベルが分かれます。EC-F3、すなわちFull commodity disclosureは、Leadership到達のための関門で、組織が生産・調達するすべてのコモディティを質問8.2で開示することを求めます。EC-F12からEC-F17は、A List取得のための関門で、開示した各コモディティについて個別に評価されます。CDP公式は「Scored separately for each disclosed commodity」と明記しています。

CDP Forests 結論

7コモディティ化への対応の優先度は、自社の取扱コモディティと量に依存します。SSPの結論は次のとおりです。

  • ココア・コーヒー・天然ゴムを取り扱う組織は、これら3品目について既存4品目と同等の精度でサプライチェーン情報を整備する必要があります。取り扱い量がわずかであっても開示が求められる点に注意が必要です。

  • サプライチェーンマッピングは7品目すべてで完了させ、地理的範囲を明示することが推奨されます。

  • no-deforestationまたはno-conversion すなわちno-DCF目標の対象範囲を7品目に拡張し、目標年度・進捗状況を整理します。

  • 第三者認証スキームの活用状況を整理します。Rainforest Alliance、Fairtrade、Forest Stewardship Council、Roundtable on Sustainable Palm Oilなどが該当しますが、これらはCDP公式が指定する認証ではなく、各業界で広く使われている認証スキームの例示です。

  • 質問8.9.3と8.9.4でType of verification列のThird party選択が要求されるため、検証取得の有無と範囲を確認します。

CDP Forests 変更点

CDP 2026のForests領域における主要な変更は次のとおりです。

スコアリング対象コモディティの拡張、4品目から7品目への移行が行われました。

質問1.22のスコアリングがDisclosureとAwareness両方で全コモディティを評価するように変更されました。

質問8.7.1のno-deforestationまたはno-conversion targetで、cutoff dateの選択肢に2025年が追加されました。

質問8.7.2の採点方式が、ベスト行採点方式から比例セル採点方式に変更されました。

質問8.9.3と8.9.4でType of verification列がThird partyの選択を要求する設計に明示化されました。
検証量がモニタリング量を超えないクロスチェックも導入されています。

CDP Forests 論点

CDP Forests対応で実務担当者が判断を迫られる主要な論点は次のとおりです。

論点重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
取扱量の閾値判定取り扱い実績がある場合は量に関係なく開示準備取り扱い量がわずかなら開示不要取り扱い実績の有無で開示範囲を確定
サプライチェーンマッピングの範囲7品目すべてで地理的範囲を明示主要品目のみで十分全品目で同等の精度が要求される
no-DCF目標の対象拡張既存4品目目標を7品目に拡張既存目標で対応可7品目すべてに対象範囲を明示
第三者検証範囲質問8.9.3・8.9.4で第三者検証要求第二者検証で十分Third party選択を前提に検証スキーム選定
Cutoff dateの設定2025年選択肢の追加に対応2020年で固定サプライチェーンの実態に応じて選択
認証スキームの整理コモディティ別に推奨スキームが異なる単一スキームで全品目対応コモディティ別に最適スキームを選定
バリューチェーン上流の情報入手サプライヤーへの照会体制が必要直接調達のみ把握上流のトレーサビリティ確保が必須

CDP Forests 比較

新規3品目と既存4品目のスコアリング扱いの比較は次のとおりです。

項目既存4品目新規3品目
スコアリング対象開始従来から2026年から
質問8.x系列の評価全質問でスコア化全質問で同等にスコア化
第三者認証スキーム各品目で確立スキーム整備中の品目もあり
サプライチェーンマッピング難易度業種により高上流が複雑な場合あり
no-DCF目標の事例多数業種事例は限定的

CDP Forests 章解説

CDP Full Corporate Scoring Changes 2026のModule 8 Forestsセクションの章別解説は次のとおりです。

第8.1章


商品カテゴリーの開示。何が求められるか。組織が生産・調達するコモディティについて、量・原産地・関連活動を開示することが求められます。実務影響は何か。新規3品目の取扱いがある組織は、既存4品目と同等の精度で情報整備が必要です。注意点は何か。質問8.1.1で除外理由を記載する場合、新規3品目についても明確な根拠を示す必要があります。

第8.7章


no-deforestation または no-conversion 目標。何が求められるか。コモディティ別のno-deforestationまたはno-conversion目標、cutoff date、目標年度、進捗状況を開示します。実務影響は何か。cutoff dateの選択肢に2025年が追加されたため、最新サプライチェーンの実態に応じた選択が可能となりました。注意点は何か。全コモディティに対する目標が必須ではありませんが、A List取得のためのEC-F14は7品目すべてに対する取り組みを個別評価します。

第8.9章


DF/DCF状態の評価。何が求められるか。deforestation-free すなわちDFおよびdeforestation-and-conversion-free すなわちDCFの状態の評価方法、第三者検証の有無、検証量を開示します。実務影響は何か。質問8.9.3と8.9.4でType of verificationにThird partyの選択が要求されるため、第三者検証の取得が事実上の前提となります。注意点は何か。検証量がモニタリング量を超えないクロスチェックが導入されたため、過大申告は機械的に検出されます。

CDP Forests 重要点

サプライチェーン上流の情報入手と第三者検証の連携。新規3品目のうち、特にココアと天然ゴムは小規模生産者が多くサプライチェーンが複雑です。一次サプライヤーから情報を入手するだけでは、原産地までの追跡が完結しないケースが多くあります。第三者検証スキームを早期に選定し、サプライチェーン上流のデータ取得と検証を連携設計することが推奨されます。

コモディティ別の認証スキーム選定。7品目それぞれで主要な第三者認証スキームが異なります。畜牛にはRoundtable on Sustainable Beef、パーム油にはRoundtable on Sustainable Palm Oil、大豆にはRoundtable on Responsible Soy、木材製品にはForest Stewardship Council、ココアにはRainforest Alliance、コーヒーにはFairtrade、天然ゴムにはGlobal Platform for Sustainable Natural Rubberが業界で広く使われている例として挙げられます。これらはCDP公式が指定するものではなく、自社のコモディティポートフォリオに応じて適切なスキームを選定する必要があります。

CDP Forests 手順

CDP Forests対応の実務フローは次のとおりです。

自社の取扱コモディティを再棚卸する

ココア・コーヒー・天然ゴムの調達と生産の有無を、購買・製造部門と連携して網羅的に確認します。

7品目のサプライチェーンマッピングを進める

地理的範囲、サプライヤー、生産者までの追跡可能性を整理します。

認証スキームの取得状況を確認する

コモディティ別に取得済みスキームと取得予定を整理します。

no-DCF目標の対象範囲を拡張する

既存4品目目標を7品目に拡張し、cutoff dateを必要に応じて2025年に更新します。

第三者検証の取得を計画する

質問8.9.3と8.9.4でType of verificationのThird party要求に対応するため、検証スキームを選定し検証取得を計画します。

質問書全体の回答を整える

質問1.22から8.17までの森林関連質問を一貫した情報で記載します。

Essential Criteria該当性を確認する

EC-F3についてはLeadership到達のため、EC-F12からEC-F17についてはA List取得のため、7品目すべてで基準充足を確認します。

CDP Forests FAQ

Q1 取扱量がわずかな場合も開示が必要ですか

はい。CDP 2026では取扱量に関わらず、ココア・コーヒー・天然ゴムの取扱実績がある組織は質問1.22で開示が求められます。なお、CDP公式によれば天然ゴムの報告自体は2018年以降、ココアとコーヒーの報告自体は2020年以降、CDPで受け付けられてきたため、これら3品目の取扱いがある組織は既存の報告経験を活かしつつ、2026年からのスコアリング基準に整合させる準備が推奨されます。

Q2 既存の認証スキームが新規3品目に対応していない場合はどうしますか

コモディティ別に最適な認証スキームが異なります。例えばココアはRainforest Alliance、コーヒーはFairtrade、天然ゴムはGlobal Platform for Sustainable Natural Rubberが業界で広く使われています。新規3品目の取扱いがある場合、これらのスキームの取得状況を確認することを推奨します。

Q3 cutoff dateを2025年に変更すべきですか

cutoff dateの選択肢に2025年が追加されましたが、自社のサプライチェーンの実態に応じた選択が前提です。サプライチェーンが2025年以降の追跡能力を持つ場合のみ、2025年への変更を検討します。

Q4 第三者検証の取得が間に合わない場合はどうしますか

質問8.9.3と8.9.4ではType of verification列でThird partyの選択が要求されます。検証未取得の場合は、その状況を質問内で適切に記載し、今後の取得計画を明示することが推奨されます。

Q5 サプライチェーン上流の情報入手が難しい場合はどうしますか

CDPではUnknownやNot collectedを選択肢として用意しています。ただしA List取得のためのEC-F13からEC-F17は上流の情報整備が前提となるため、サプライヤーへの照会体制と認証スキーム活用を進めることを推奨します。

Q6 SMEのForests質問群はFull Corporate版と同じですか

SMEのModule 21は新設され、Full Corporate版とは別の質問構成となっています。基本的な論点はFull Corporate版と同じですが、設問数と詳細度はSME向けに調整されています。

CDP Forests 全体像

CDP 2026の主要変更点全体については、CDP 2026 全体像と主要変更点まとめ で全体俯瞰を行っています。他の領域の変更点と合わせて自社の対応戦略を立てる場合は、詳細記事をご参照ください。

CDP Forests まとめ

CDP Forests領域は7コモディティ化により対応工数が大きく増加しています。ココア・コーヒー・天然ゴムの取扱いがある組織は、サプライチェーンマッピング・認証スキーム取得・第三者検証の3領域を並行して進めることが推奨されます。SSPはCDPのForestsスコア向上に向けた第三者検証取得を専門領域として支援しています。DF/DCF量の第三者検証や認証スキームに関するご相談はお問い合わせください。

参考リンク

CDP Forests Scoring Essential Criteria 2026
CDP Forests Full Corporate Scoring Methodology 2026
Accountability Framework initiative AFi
Science Based Targets Network SBTN
Roundtable on Sustainable Palm Oil
Forest Stewardship Council
Rainforest Alliance
Global Platform for Sustainable Natural Rubber

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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