CDP2026 全体像と主要変更点まとめ

CDP 2026は質問書とスコアリング方法論の複数領域で再編が行われた年です。本記事はCDP 2026全体の俯瞰と主要変更点5つの位置付けを整理し、各領域の詳細解説は別記事に委ねる総括記事です。回答準備や第三者保証取得の戦略設計に必要な判断軸を提示します。

※本記事はCDP 2026の公式英語資料を一次情報として整理したものです。質問番号やEssential Criteria、Type of verification、Disclosure・Awareness・Management・Leadershipといった用語は、CDP公式資料との照合性を優先し、原文表記のまま記載しています。

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目次

CDP 2026 要約

CDP 2026の主要変更はForestsへのココア・コーヒー・天然ゴム追加によるスコアリング7コモディティ化、Aviationセクター新設、Essential Criteriaの記述様式の改善、Ocean関連目標の新設、GHG Protocol LSRS対応、プラスチック領域の大幅再編、SME質問書の拡充です。第三者保証は救済路の整備でスコア構造への影響度が増しています。

CDP 2026 背景

CDPは企業の環境情報開示を国際的に集約するフレームワークです。Climate Change、Water Security、Forestsを中心に、2026年からはOcean、Plastics、Biodiversityも明示的なテーマとして組み込まれています。改定文書群は2026年4月以降に段階的に公開されており、Questionnaire Changes Trackerが4月15日と4月23日、Essential Criteria・Scoring Methodology・Scoring Changesが4月30日付でリリースされています。質問書はFull Corporate版とSME版の二系統で構成されています。

今回の改定の動因は国際的な開示基準群との整合性強化です。具体的にはISSB S2、TNFD推奨事項、Science Based Targets Network すなわちSBTNの方法論、Accountability Framework initiative すなわちAFiのコモディティ責任調達枠組み、GHG Protocolが新規公表したLand Sector and Removals Standard すなわちLSRS、RE100テクニカル基準、Ellen MacArthur Foundation Global Commitmentなどです。

CDP公式文書ではスコアリング方法論およびEssential Criteriaは2025年から2026年にかけて概ね安定と評価されており、CDP公式が明示する主な変更は2点です。1点目はForestsへのココア・コーヒー・天然ゴム追加によるスコアリング高リスクコモディティの拡張、2点目はEssential Criteriaの記述様式の広範な改善です。CDP公式はこれらEssential Criteriaの改善が基準のambitionや組織が開示すべき情報には最小限から実質的に影響しないと説明しています。一方で、Aviationセクター新設、Metals and miningおよびSteelのカテゴリー加重訂正、質問書本体の領域別再構成など、上記2大変更以外にも多くの中規模変更が並行しています。

CDP 2026 定義

CDP 2026は、CDPが2026年の開示サイクルに向けて公表した質問書とスコアリング方法論の総称です。SSPはこれを、2025年版を基礎としつつ、Forestsの対象コモディティ拡張、Aviationセクター新設、新興テーマであるOceanの導入、国際基準との整合性強化を主軸とする改定と位置付けています。

CDP 2026 基礎

CDP 2026の質問書はFull Corporate版とSME版の二本立てです。Full Corporate版は19のセクターコード、Mining-Biodiversityを派生として除けば18セクターと、Ocean・Plastics・Biodiversityを含む環境テーマで構成されています。

スコアリングはDisclosure・Awareness・Management・Leadershipの4レベル制で評価されます。各レベル内にletter grade band、すなわちD-/D、C-/C、B-/B、A-/Aが設けられており、グレードの境目は質問書の得点率で判定されます。A ListはAグレード企業のうち追加のEssential Criteriaを全て満たした企業の認定枠であり、独立したスコアリングレベルではありません。

CDP 2026 結論

CDP 2026への対応は質問書の領域別変更を体系的に分解し、優先順位を付けた回答準備を行うことが効率を最大化します。SSPの結論は次のとおりです。

  • Forests領域に大きな再編があるため、ココア・コーヒー・天然ゴムを取り扱う組織はサプライチェーンマッピングの全面見直しが必要です。

  • Module 7にGHG Protocol LSRSへの対応質問が新設されたため、土地セクター活動と技術的CO2除去の社内会計を整理する必要があります。

  • Module 10のプラスチック領域は全11問が変動した変動率100%の再編領域であり、SME質問書も新たにForestsとWaterの質問群が追加されています。なお、絶対変更件数ではClimate Change、すなわちModule 7が約205件で最大です。

  • 第三者保証はCDP 2026における追い風要素となっており、スコア構造に直接影響するため、保証スコープの設計をCDP回答準備と連動させることを推奨します。

CDP 2026 変更点

CDP 2026の主要な変更点は次の5点に集約されます。詳細は以下のとおりです。

Forestsスコアリング対象コモディティの7品目化

畜牛・パーム油・大豆・木材製品の4品目に、ココア・コーヒー・天然ゴムが追加されました。詳細は『CDP 2026 Forests 7コモディティ化の解説』をご参照ください。

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GHG Protocol LSRS対応の新規質問群

質問7.12と7.13系列が再構成され、土地セクター活動と技術的CO2除去・地質学的CO2貯留が新たな採点対象となりました。詳細は『CDP 2026 LSRS対応の徹底解説』をご参照ください。

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プラスチック領域の大幅再編

Module 10は全11問が変動した変動率100%の領域で、目標・包装フォーマット・リサイクル設計・リユースモデルに関する新設質問4件が追加されています。SME質問書のModule 21・Module 22も新設されています。詳細は『CDP 2026 プラスチック M10徹底解説』をご参照ください。

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Essential Criteriaの記述様式の改善

行動の抽象記述から、質問の特定列で選択すべき具体的な選択肢を明示する方式に変更されました。意図および難易度は不変であるとCDPは説明しています。

第三者保証要求の強化

質問7.9.1から7.9.3、8.9.3と8.9.4、9.3.2、13.1で検証要求が新設・強化されています。質問13.1にはScope 1/2/3保証済組織への救済路ROUTE Bが新設されました。詳細は『CDP 2026 第三者保証の重要性と実務』をご参照ください。

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CDP 2026 論点

クラスター全体の論点と関連記事の対応関係は次のとおりです。

論点関連記事実務での重要度判断のポイント
Forestsの7コモディティ対応CDP 2026 Forests 7コモディティ化の解説ココア・コーヒー・天然ゴムの調達と生産の有無を再点検する
GHG Protocol LSRSの社内会計対応CDP 2026 LSRS対応の徹底解説土地セクター活動と技術的CO2除去の対応可否を確認する
プラスチック関連質問の再編CDP 2026 プラスチック M10徹底解説EMF Global Commitment整合のデータ収集体系を再設計する
SME質問書のForests・Water拡充CDP 2026 プラスチック M10徹底解説グループ系列のSME組織の対応負荷を試算する
第三者保証取得とスコアの関係CDP 2026 第三者保証の重要性と実務保証スコープの設計をCDP回答準備と連動させる
Essential Criteria記述様式の改訂本記事で詳述社内回答ガイドの差し替え版を準備する
Aviationセクター新設本記事で言及自社のセクター区分割り当てを確認する
Ocean関連目標の新設本記事で言及全業種に質問パスが出現するため早期確認する

CDP 2026 比較

CDP 2025とCDP 2026の主要な比較は次のとおりです。

項目CDP 2025CDP 2026
Forestsスコア対象コモディティ4品目7品目
Aviationセクター区分なし新設
Ocean関連質問新設質問なしModule 5.16系で新設
土地セクター会計バイオジェニックカーボン質問LSRS準拠の新7.12と7.13系列
プラスチック関連変動基準年全11問が変動、変動率100%
Essential Criteria記述行動の抽象記述選択肢の具体指定
第三者保証への評価検証情報を記載のみ検証割合のスコア化と救済路の整備
SME質問書Climate中心Forests・Waterを新設、各14問
カテゴリ加重業種別に設定概ね不変、Metals/Steel訂正のみ

CDP 2026 ナビゲーション

関連記事の概要は次のとおりです。

CDP 2026 Forests 7コモディティ化の解説では、追加された3品目の背景、質問8.x系列での変更、コモディティ別の評価ロジック、回答準備の手順を整理しています。食品・菓子・タイヤ・自動車部品サプライヤー等のサプライチェーンを持つ組織向けです。

CDP 2026 LSRS対応の徹底解説では、GHG Protocol Land Sector and Removals Standardの位置付け、旧7.12と旧7.13系列の整理、新質問群の対応、技術的CO2除去とCCSの会計処理、2026年初年度の特例と将来予告を解説します。土地利用変化の影響を受ける農業・林業・食品セクター、CCSを推進する電力・素材セクター向けです。

CDP 2026 プラスチック M10徹底解説では、Module 10とModule 11がCDPスコアリング対象外であるという前提を踏まえ、Module 10の質問変動の中身、新設質問4件、SME質問書のModule 21・Module 22新設の影響を解説します。食品・飲料、消費財、化学セクターと、SME系列を持つグループ組織向けです。

CDP 2026 第三者保証の重要性と実務では、検証要求が新設・強化された質問群、保証水準と適用基準の整理、保証取得とCDPスコアの関係を、第三者保証の観点から解説します。全業種の開示担当者および保証取得を検討中の組織向けです。

CDP 2026 手順

CDP 2026への対応の全体実務フローは次のとおりです。

自社の質問パスを確定する

Module 1の業種選択や、Financial Servicesの場合の質問1.10での活動指定など、自社に表示される質問の集合を早期に確定し、新設質問の出現有無を把握します。

主要な変更領域を領域ごとに分解する

Forests・LSRS・プラスチック・第三者保証の各領域で、自社への影響度を判定します。

削除された質問を特定し、過去回答の流用可否を判断する

Questionnaire Changes TrackerのCopy Forwardシートで質問単位に判定します。

社内データ収集体系を再設計する

LSRS対応データ、プラスチックデータ、保証対象データの収集要件を整理します。

第三者保証スコープを設計する

CDP回答前に保証対象範囲を確定し、保証手続きとCDP提出スケジュールを逆算します。

Essential Criteriaの差し替え版を作成する

2025年版の社内回答ガイドを2026年版の選択肢指定方式に置換します。

SME系列会社へ早期に方針を共有する

Module 21とModule 22の新設に伴うグループ全体の負荷を試算します。

提出スケジュールを確定する

CDPの提出期限と内部承認プロセスを照合し、最終提出日から逆算した社内スケジュールを確定します。

CDP 2026 FAQ

Q1 CDP 2026は2025年から大きく変わったのでしょうか

CDP公式は概ね安定と表現していますが、これはカテゴリー加重と全体構造の評価です。質問書の個別領域、特にプラスチック関連、Forests関連、Module 7の土地セクターと再生可能エネルギー領域では明確な再構成が行われており、社内対応は2025年と同等では不十分です。

Q2 主要な変更点はどれを優先して対応すべきですか

自社業種・取扱コモディティ・規模により異なります。一般的にはForestsの7コモディティ化と、GHG Protocol LSRS対応、プラスチック領域の3つが影響の大きい変更です。第三者保証取得済み組織は質問13.1のROUTE Bで救済される構造のため、保証スコープの設計も同時に進めることを推奨します。

Q3 SMEのみ対応しているグループ会社にも変更の影響はありますか

はい。SME版にModule 21のForests関連質問群とModule 22のWater Security関連質問群がそれぞれ14問ずつ新設されたため、これまでClimate Changeのみ対応していたSME組織でも、新たにForestsとWaterへの対応が発生します。

Q4 過去回答の流用はどこまで可能ですか

CDP公式のCopy Forward機能では、Questionnaire Changes TrackerのCopy Forwardシートで質問ごとの流用可否が示されています。削除された質問や、列構成が変更された質問は流用できないため、対象質問の事前棚卸が必要です。

Q5 第三者保証は2026年から必須となりましたか

第三者保証はCDPで2026年から必須化されたわけではありません。ただし質問13.1にScope 1/2/3保証済組織向けの救済路ROUTE Bが新設されたため、保証取得済組織はスコア構造で構造的に有利となります。回答品質の証跡を超えてスコアに直接影響する戦略的要素として位置付けが変化しました。

Q6 提出締切はいつですか

提出締切は組織区分・セクター・国別で異なります。Full Corporate版・SME版・各セクター固有スケジュールはmyportal.cdp.netで確認することを推奨します。

CDP 2026 まとめ

CDP 2026は、Forests 7コモディティ化、GHG Protocol LSRS対応、プラスチック領域の大幅再編、SME質問書の拡充、第三者保証要求の強化という複数の改定が同時に進行する年となりました。特に第三者保証取得を予定する組織は、保証スコープの設計を回答準備の早期段階から検討することが重要です。SSPはCDPスコア向上に向けた温室効果ガス領域の第三者保証取得を専門領域として支援しています。

参考リンク

CDP公式ガイダンスポータル myportal.cdp.net
CDP Climate Change Scoring Essential Criteria 2026
CDP Forests Scoring Essential Criteria 2026
CDP Water Security Scoring Essential Criteria 2026
GHG Protocol Land Sector and Removals Standard and Guidance
IFRS Foundation ISSB S2
Taskforce on Nature-related Financial Disclosures TNFD推奨事項
Science Based Targets Network SBTN
Accountability Framework initiative AFi
Ellen MacArthur Foundation Global Commitment

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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