【2026年6月最新版】SBTi V2.0 第三者保証 完全ガイド

V2.0で最も実務インパクトの大きい変更が、第三者保証の基準本体への組み込みです。本記事では、保証がどのデータに、どの段階で、どの水準で要求されるのかを一次資料の基準番号に沿って整理し、カテゴリーA企業が備えるべき事項と今後の必須化の方向を、第三者保証機関の視点から解説します。

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目次

なぜV2.0で第三者保証が基準の中心になったのか

V2.0は、目標の野心を検証する枠組みから、実施とデータ信頼性を規律する枠組みへと転換しました。企業はベストエフォートで目標を追求し進捗を透明に報告しますが、その前提となるのが信頼できる物理的GHGインベントリです。基準は、SBTiもSBTi認定検証機関も企業の排出データそのものを独立検証しないことを明記しており、データの正確性と完全性の責任は企業と保証提供者に帰属します。したがってV2.0では、第三者保証が目標の信頼性を担保する不可欠な構成要素となりました。

ここでいう第三者保証は、ISO 14064-3などに基づく通常のGHG保証と同様に、スコープ1・2・3の排出量とその算定を対象とする保証です。削減量の達成や目標そのものの妥当性を保証するものではなく、あくまで報告された排出量データの正確性と完全性を独立した立場から確かめる業務です。

保証が要求される6つの接点

V2.0で独立した第三者保証が要求される場面は、目標設定時とサイクル終了時に大別され、基準番号で示すと次の6接点に整理されます。いずれもカテゴリーA企業は必須、カテゴリーB企業は強く推奨されます。

接点基準番号評価段階主な保証対象
目標基準年GHGインベントリCNZS-C7目標検証時スコープ1・2・3排出量、低炭素電力の算定値、重要EIAの排出量、目標設定に用いる指標
目標基準年の再計算CNZS-C8再検証時5%以上の変動により再計算したインベントリと関連指標
サイクル終了時の進捗データCNZS-C37サイクル終了時評価進捗評価を裏付けるデータと計算
スコープ2時間単位マッチング比率CNZS-C32サイクル終了時評価報告した時間単位マッチング比率
市場メカニズム・証書の統合性CNZS-C28サイクル終了時評価利用・プロジェクト・取引要件への適合
継続的排出責任(OER)CNZS-C44サイクル終了時評価貢献の統合性基準への適合と資金拠出の完了

限定的保証と合理的保証の違い

基準が定める最低要件は限定的保証です。限定的保証は、重要な虚偽表示の兆候がないかを限定された手続で確認し、消極的形式の結論を表明します。一方、合理的保証はより広範な手続に基づき積極的形式の結論を表明し、より高い信頼水準を提供します。基準上はいずれの接点も限定的保証が最低ラインですが、規制対応や投資家要求の水準によっては合理的保証の取得が選択肢となります。取得した保証種別は報告事項であり、SBTiダッシュボードでの開示対象となります。

目標設定時とサイクル終了時 — 2局面の保証

保証は大きく2つの局面で機能します。目標設定時には、目標基準年のインベントリと目標設定に用いる指標が、目標検証の前提として保証されます。サイクル終了時には、進捗評価を裏付けるデータと計算、スコープ2の時間単位マッチング比率、市場メカニズムの統合性が保証の対象となります。前者が目標の出発点の信頼性を、後者が達成主張の信頼性を担保する関係にあり、カテゴリーA企業はこの両局面で独立した第三者保証を取得します。

準拠すべき保証基準と保証提供者の要件

基準は、保証を国際的に認知された保証基準に従い、認定を受けた独立した第三者が実施することを求めます。実務上の準拠基準としては、保証業務一般を定めるISAE 3000、サステナビリティ情報の保証を定めるISSA 5000、GHG情報に特化したISO 14064-3が該当します。保証提供者には、ISO 14065またはISO 17029に基づく認定と、対象企業からの独立性が求められます。報告すべき情報は、対象期間、範囲(境界・対象排出量・除外事項)、用いた方法論と基準、保証種別、指摘事項の要約です。

カテゴリーA企業が備えるべき保証の前提

保証は、整った算定体制・内部統制・証跡があって初めて成立します。具体的には、算定方法とデータソースの文書化、活動量データの一次証跡の保存、推計やプロキシデータの使用箇所の明示、組織境界と運用境界の確定が前提となります。これらが未整備のままでは保証手続が完了せず、目標検証の遅延につながります。基準が目標提出時点での保証取得を求める以上、保証範囲の確定と証跡整備は目標提出の1年以上前から着手することが現実的です。

第三者保証のこれから — 必須化の方向

保証の対象は今後さらに広がる見込みです。基準はカテゴリーB企業にも保証取得を強く推奨しており、2035年以降の継続的排出責任や、ネットゼロ到達時の残余排出の中和も独立保証の対象となります。加えて、CSRDやISSB基準など各国・国際の開示制度がサステナビリティ情報への保証を段階的に義務化しつつあり、SBTiの保証要件と収斂していく方向にあります。目標基準年データの保証は、こうした規制対応の基盤としても機能します。

SSPの第三者保証業務

SSPは、上記の各接点を対象とする独立した第三者保証・検証業務を、国際的に認知された保証基準に準拠して提供します。保証提供者には対象データからの独立性が要件として課されるため、SSPは同一データの算定代行やコンサルティングは行いません。これは制約ではなく、保証の有効性そのものを担保するための要件です。算定への助言と保証を分離することで、SBTiが求めるデータの独立した信頼性確認を成立させます。V2.0への移行を見据えた第三者保証業務について、SSPがご相談を承ります。

参考文献

Corporate-Net-Zero-Standard-version-2
https://files.sciencebasedtargets.org/production/files/Corporate-Net-Zero-Standard-version-2.pdf

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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