【GX-ETS】 排出目標量の5つの調整措置を解説

GX-ETS第2フェーズでは、BM方式やGF方式で算出した基本の排出目標量に対して、5つの調整措置が適用される場合があります。活動量変動、新設・廃止、早期削減努力の3つは届出前に反映し、カーボンリーケージとR&D投資の2つは実排出量確定後に判定される仕組みとなっています。本記事ではSSPの実務経験に基づき、5つの調整措置の全体像と適用タイミングを整理します。

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目次

GX-ETS調整措置 要約

5つの調整措置は排出目標量を実態に合わせて調整するための仕組みであり、企業にとっては排出枠の追加取得につながる重要な制度です。届出前に反映する3つと実排出量確定後に判定する2つに分かれ、後者のカーボンリーケージとGX関連技術分野の研究開発は、それぞれ別個の勘案事項として排出枠の追加割当の対象となります。調整措置の適用は基本的に自己判定であり、該当に気づかなければ自社が損をするだけで制度違反にはなりません。

GX-ETS調整措置 背景

基本の排出目標量はBM方式やGF方式によって基準年度データを基に算出されますが、実際の事業環境は年々変化するものです。生産量の大幅な増減、新工場の建設、既存設備の廃止、さらには排出コストの経営への影響など、基準年度のデータだけでは捉えきれない変化に対応するために調整措置が設けられています。

とりわけカーボンリーケージ対策は、排出コストの負担が過大になった場合に企業が海外移転してしまうリスクを抑制するための措置であり、産業政策としての側面を持っています。R&D投資の調整措置も、脱炭素に向けた技術開発への投資を促進する政策的な意図が込められた仕組みといえます。

GX-ETS調整措置 定義

SSPは調整措置を次のように定義しています。BM方式およびGF方式で算出した基本の排出目標量に対して、事業環境の変化や政策的配慮に基づく加減を行う5つの仕組みの総体です。適用タイミングによって届出前に反映する3つと実排出量確定後に判定する2つに分類されます。

GX-ETS調整措置 結論

SSPは調整措置への対応において、次の3点を特に重要と考えています。第一に、該当する調整措置を見落とさないことです。特にカーボンリーケージとR&D投資は排出枠の不足を大幅に軽減する可能性があり、活用しない手はありません。第二に、届出前の3つと実績確定後の2つでは適用タイミングが異なるため、年間スケジュールの中でいつ判定すべきかを明確にしておく必要があります。第三に、活動量変動や新設・廃止は実態と合わせる義務があるため、見落とすと排出目標量が実態と乖離するリスクが生じます。

GX-ETS調整措置 論点

SSPがGX-ETSの調整措置を運用するうえで重要と考える論点を整理します。5つの調整措置はいずれも排出目標量の確定に直接影響するため、適用条件と申請手続きの理解が不可欠です。

論点制度上の位置づけ実務上の留意点
5つの調整措置の網羅性排出目標量を確定する全プロセスをカバーいずれか1つでも見落とすと再計算が必要となる
申請主義の措置早期削減努力など申請しなければ反映されない該当事業者は積極的な申請検討が必要
該当時に反映が必要な措置活動量変動・新設廃止は該当すれば事業者が算定して届け出る(自動ではない)適用条件の証跡確保が前提となる
前年度の変動への対応新設廃止・災害等は発生翌年度の届出で事後調整する発生年度中から証憑を整え翌年度の届出に備える
適用優先順位複数措置の同時適用はあり得る(災害等と活動量変動の関係は届出マニュアル2.8.4で整理)適用順序と整合性の確認が必要
届出期限の管理いずれも排出目標量と併せて9月30日までに届け出る措置ごとの証憑・確認手続を期限から逆算して準備する

GX-ETS調整措置 比較

5つの調整措置を比較すると、適用方式と対象範囲、期限管理の難易度が大きく異なります。事業特性に応じて関係する措置を特定し、優先度の高い措置から準備を進めることが実務上の鍵となります。

比較項目活動量変動カーボンリーケージ早期削減努力新設・廃止災害時
適用方式該当すれば適用(事業者が毎年度判定・算定)要件を満たせば任意で算定・届出任意で加算(登録確認機関の合意された手続が必要)該当すれば届出義務(事業者が算定)基準年度中は選択適用、前年度分は翌年度に控除
適用対象BM・GF両方(連続3年度以上制度対象の事業者)指定21業種GF対象事業活動のエネルギー起源排出のみ全対象事業(連続2年度以上制度対象の事業者)全対象事業
判定の基準値直近2年度平均が基準活動量比±7.5%以上排出枠不足量×平均取引価格が営業利益の4%超起点年度前後3年度平均(原則2012〜2014年度)前年度の対象事業活動の開始・廃止(規模区分の変動含む)大臣が認める著しい被害(災害等)・保安検査(開放検査)
主な効果基準活動量を更新し直近2年度分を事後加減排出枠の追加割当エネルギー起源の目標量に追加割当量を加算前年度分を翌年度の目標量で事後に加算・控除基準年度は被災年度を前年度実績で置換、前年度分は翌年度に控除
申請・確認時期制度対象3年度目以降の毎年度、排出目標量の届出時(9月末まで)排出目標量の届出時(9月末まで)毎年度の排出目標量の届出時(9月末まで)発生翌年度の排出目標量の届出時(9月末まで)基準年度算定時、または発生翌年度の届出時(9月末まで)
主な根拠書類活動量実績データ登記簿・事業別売上高資料・営業利益が分かる資料(有報等)起点年度のSHK報告値(開示請求)・省エネ法定期報告活動開始日が分かる日報等・建築物除却届等罹災証明書・災害指定の政令等・保安検査証等

GX-ETS調整措置 ナビゲーション

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GX-ETS調整措置 手順

1. 活動量変動の該当有無をBM対象事業活動およびGF対象事業活動ごとに確認する。直近2年度の活動量実績の平均と基準活動量(基準排出量)を比較し、7.5%以上の乖離があるか判定します。

2. 新設・廃止の有無を確認する。当年度に新たに操業を開始したプロセスや閉鎖したプロセスがあるか確認し、該当する場合は排出目標量に反映します。

3. 早期削減努力の該当可能性を検討する。GFエネルギー起源プロセスについて、2013年度のデータとGF削減率を超える実績があるか確認します。

4. 排出目標量に届出前の3つの調整を反映する。活動量変動、新設・廃止、早期削減努力の調整を排出目標量に反映したうえで登録確認機関の確認を受けます。

5. 実排出量確定後にリーケージとR&Dの該当可能性を確認する。排出枠に不足が発生している場合、カーボンリーケージの4%閾値とR&D投資の業種平均比較を行います。

6. 該当する場合は勘案事項による調整量として届け出る。リーケージとR&Dの調整量は登録確認機関の確認対象外です。ただしR&Dの追加割当量は、公認会計士・監査法人・税理士等の第三者による合意された手続を受けたうえで届け出る必要があります。

GX-ETS調整措置 FAQ

Q1 調整措置は全ての制度対象者に適用されますか

全ての調整措置が全社に適用されるわけではありません。活動量変動はBM対象とGF対象事業活動の双方、早期削減努力はGFエネルギー起源のみが対象であり、リーケージとR&Dは不足がある場合にのみ関係します。

Q2 カーボンリーケージとR&Dは同時に適用できますか

同時に適用可能です。カーボンリーケージは排出枠の追加割当(営業利益が0以上の場合は控除後の2分の1、0未満の場合は2分の1)、GX関連技術分野の研究開発は不足分の10%を上限とする追加割当で、両者は別個の勘案事項です。両者を合算した上限は定められていません。

Q3 早期削減努力はBM方式にも適用されますか

適用されません。BM方式では効率の良い企業ほど排出目標量に余裕が生まれる構造が組み込まれているため、別途の早期削減措置はGFエネルギー起源のみを対象としています。

Q4 活動量変動のルールはGFにも適用されますか

適用されます。マニュアル2.8.2の表により、GF対象事業活動のエネルギー起源排出(要件1・2・3すべて)、原材料起源排出(要件1)、副生燃料起源排出(要件1)にも7.5%ルールが適用されます。

Q5 調整措置に気づかなかった場合はペナルティがありますか

カーボンリーケージ、R&D投資、早期削減努力については、気づかなくても制度違反にはなりません。ただし自社が損をする結果となるため、該当有無の確認を怠らないことが重要です。活動量変動や新設・廃止は実態と合わせる義務があるため注意が必要です。

GX-ETS調整措置 まとめ

GX-ETS調整措置は、基本の排出目標量を事業環境の変化や政策的配慮に基づいて調整する仕組みであり、企業にとっては排出枠の追加取得につながる重要な制度です。5つの措置は適用タイミングと対象が異なるため、年間スケジュールの中でいつどの判定を行うかを明確にしておくことが実務上の鍵となります。特にカーボンリーケージとR&D投資の該当確認は排出枠不足時の有力な救済手段であり、積極的な活用をSSPとして推奨します。

この記事を書いた人

SSP編集部は、非財務情報の第三者保証を専門とする株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズの実務者チームです。公認会計士やISO審査・サステナビリティ開示の実務経験を持つ専門職員で構成され、ISO 14064-3・ISAE 3000・ISSA 5000等の国際基準に基づくGHG排出量(Scope1・2・3)の検証・保証や、GX-ETS(排出量取引制度)の登録確認機関としての確認業務に従事しています。SSBJ・CDP・SBTなど最新の制度動向を一次情報にあたって追い、算定・開示の現場実務に即した、正確でわかりやすい解説をお届けします。

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