【GX-ETS】 グランドファザリング方式の計算手順を解説

GX-ETS第2フェーズのグランドファザリング方式は、基準年度の排出量から毎年一定率を削減して排出目標量を算出する方式です。20業種の特定事業活動に該当しないすべてのプロセスに適用され、エネルギー起源と原材料起源で異なる削減率が設定されています。本記事ではSSPの実務経験に基づき、GF方式の仕組みと実務上の判断ポイントを整理します。

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目次

グランドファザリング方式 要約

グランドファザリング方式は、基準年度の排出量に削減係数を掛けて排出目標量を算出する方式です。エネルギー起源は年1.7%、原材料起源は年0.3%、副生燃料起源は年0.3%の削減率が適用されます。過去の排出実績をベースとするため効率の差は反映されませんが、制度開始前から削減に取り組んできた企業には早期削減努力の反映という調整措置が用意されています。

グランドファザリング方式 背景

BM方式が適用される20業種の特定事業活動は、日本の産業セクターにおけるCO2排出量の大部分をカバーしていますが、それでもカバーしきれないプロセスは数多く存在します。工場のユーティリティ設備、小規模な製造プロセス、BM方式の対象とならない化学品の製造など、多様なプロセスが該当します。

こうしたプロセスに対して業界横断的なベンチマーク値を設定することは実務的に困難であり、過去の排出実績をベースに一律の削減を求めるGF方式が採用されました。GF方式は制度設計としてはシンプルですが、効率の良い企業も悪い企業も同じ削減率が適用されるため、BM方式のような効率改善のインセンティブは限定的となります。

この点を補うため、2013年度以降に削減率を上回る排出削減を実現した企業には、早期削減努力の反映という調整措置が設けられています。制度開始前の自主的な取り組みが不利にならないよう配慮された仕組みといえます。

グランドファザリング方式 定義

制度対象者の基準年度における排出量に、年度ごとの削減係数を掛けて排出目標量を算出する方式であり、BM方式の対象とならない全てのプロセスに適用されます。

基準排出量は2023年度から2025年度の3年平均であり、この値から経過年数に応じて毎年一定率で削減されていく仕組みとなっています。

グランドファザリング方式 結論

SSPはGF方式の適用にあたって、次の3点を特に重要と考えています。

第一に、エネルギー起源と原材料起源の区分を正確に行うことです。両者では削減率が大きく異なるため、区分を誤ると排出目標量に重大な影響を及ぼします。原材料起源に該当するのは制度で定められた28種類の活動のみであり、それ以外はすべてエネルギー起源として扱われます。

第二に、副生燃料が発生するプロセスでは、GF方式の本体計算から副生燃料分を除外し、別枠で計算する必要がある点に留意すべきです。この除外を怠ると二重計上のリスクが生じます。

第三に、早期削減努力の反映は申請しなければ適用されない点を見落としてはなりません。2013年度以降にGF削減率を上回る排出削減を実現している場合は、積極的に活用を検討すべきです。

グランドファザリング方式 論点

SSPがGF方式の運用で確認している主要な論点を整理します。いずれも排出目標量の算定結果に直接影響するため、申請前に必ず社内確認すべき項目です。

論点制度上の位置づけ実務上の留意点
起源区分の判定エネルギー起源・原材料起源・副生燃料起源の3区分28種類の原材料起源排出活動リストとの照合が出発点。誤判定は削減率に直結する
基準排出量の確定2023〜2025年度の3年平均値を採用算定報告書との整合性確認が必須。再計算可能な根拠資料を保管する
削減率の差エネルギー起源は年1.7%、原材料起源は年0.3%同一プロセス内でも起源別に区分する必要がある
副生燃料の取扱いGF本体計算から除外し別枠で計算本体計算と別枠計算の境界を明確化、二重計上を防止する
早期削減努力の反映2013年度以降の追加削減を申請可能申請しなければ反映されない。記録の遡及確認が前提
経過年数の管理制度開始からの経過年数に応じて削減率を累積適用年度更新時に経過年数と適用率を再確認する

グランドファザリング方式 比較

GF方式における3つの起源区分を比較すると、削減率と計算方法が大きく異なります。区分判定の精度が排出目標量の妥当性を左右するため、まずこの違いを正確に理解することが重要です。

比較項目エネルギー起源原材料起源副生燃料起源
主な対象燃料の燃焼に由来する排出28種類の指定活動に該当する化学反応等副生燃料の使用に由来する排出
年間削減率1.7%0.3%別枠計算(本体から除外)
基準年度2023〜2025年度の3年平均2023〜2025年度の3年平均同左
計算式の基本形基準量×(1−1.7%×経過年数)基準量×(1−0.3%×経過年数)使用側ルールによる別枠方式
主な該当例ボイラー、自家発電、加熱炉セメント脱炭酸、アンモニア合成、石灰石焼成高炉ガス、コークス炉ガス、転炉ガス
区分の判定基準28種類リストに含まれない燃料起源28種類リストに含まれる活動副生燃料の発生プロセスに該当

グランドファザリング方式 重要点

エネルギー起源と原材料起源の区分方法

GF方式を適用するうえで最も重要な判断は、排出がエネルギー起源と原材料起源のどちらに分類されるかという点です。原材料起源に該当するのは、セメントクリンカーの製造、生石灰の製造、ドライアイスの使用、潤滑油等の使用など、制度で定められた28種類の活動に限られます。

この28種類に該当しない排出はすべてエネルギー起源として扱われます。注意すべきなのは、原材料起源の排出は工場等の敷地外での活動も対象となる点です。例えばドライアイスを配送に使用している場合、その使用に伴うCO2排出は敷地外であっても原材料起源として算定に含めなければなりません。

早期削減努力の反映の考え方

早期削減努力の反映は、制度開始前から排出削減に取り組んできた企業を報いる仕組みです。対象工場等の起点年度(2011年度から継続的に省エネ法定期報告を行っている場合は2013年度)のエネルギー起源排出量を起点とし、GF削減率である年1.7%を超えて削減した分を「早期排出削減量」として認定し、「早期排出削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数)」の式で算定した量を排出目標量に加算する仕組みとなっています。詳細は早期削減努力の記事を参照してください。

この調整措置はGFエネルギー起源のみに適用され、原材料起源や副生燃料起源には適用されません。またBM方式対象プロセスにも適用されません。BM方式では効率の良い企業が自然に有利になる構造が組み込まれているため、別途の早期削減措置が不要という考え方によるものです。

グランドファザリング方式 手順

1. GF方式の対象プロセスを特定する。20業種の特定事業活動に該当しないプロセスがGF方式の対象となります。ユーティリティ設備や小規模製造ラインなど、見落としやすいプロセスも含めて網羅的に洗い出します。

2. エネルギー起源と原材料起源を区分する。28種類の原材料起源活動リストと照合し、該当するものを原材料起源に、それ以外をエネルギー起源に分類します。

3. 副生燃料の発生有無を確認する。副生燃料が発生するプロセスでは、GF本体の計算から除外し別枠で計算する必要があります。

4. 基準排出量を算定する。2023年度から2025年度の3年間について、エネルギー起源と原材料起源それぞれの排出量を算定し、3年平均を算出します。

5. 早期削減努力の該当可能性を確認する。2013年度のエネルギー起源排出量データを確認し、GF削減率を超える削減実績があるか検討します。

6. 登録確認機関の確認を受ける。GF方式による排出目標量とその根拠データについて、登録確認機関の確認を受け確認報告書を取得します。

グランドファザリング方式 FAQ

Q1 GF方式の削減率は将来引き上げられる可能性はありますか

第2フェーズの5年間は基本的に変わりません。ただし第3フェーズ以降に見直しが行われる可能性はあり、制度の動向を注視しておくことが望ましいでしょう。

Q2 基準排出量に災害時の異常値が含まれる場合はどうなりますか

基準年度の間に災害や法令点検等があり排出量が大幅に変動している場合であっても、補正は行われない取扱いとなっています。ただし新設・廃止や活動量変動の調整措置が適用される場合があります。

Q3 原材料起源の28種類はどのように確認できますか

排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部第2章で定められた28種類の活動が一覧として公表されています。主な活動としてはセメントクリンカーの製造、生石灰の製造、ソーダ石灰ガラスの製造、その他用途での炭酸塩の使用、アンモニア・炭化けい素・炭化カルシウム・二酸化チタン・ソーダ灰の製造、エチレン等の製造、カーバイド法アセチレンの使用、製鋼用電気炉における炭素電極の使用、鉄鋼の製造における鉱物の使用、鉄鋼の製造において生じるガスの燃焼、潤滑油等の使用、溶剤の焼却、ドライアイスの製造・使用、炭酸ガスのボンベへの封入・使用、耕地における肥料の使用、廃棄物の焼却(熱回収を伴うものを除く)などが含まれます。

Q4 GF方式に活動量変動の調整は適用されますか

適用されます。マニュアル2.8.2の表により、GF対象事業活動のエネルギー起源排出(要件1・2・3すべて)、原材料起源排出(要件1)、副生燃料起源排出(要件1)にも7.5%ルールが適用されます。BM方式対象プロセスのみという誤解が広まっていますが、最新マニュアルではGF対象も明確に対象となっています。

Q5 早期削減努力はBM方式にも適用されますか

適用されません。BM方式では効率の良い企業ほど排出目標量に余裕が生まれる構造が組み込まれているため、早期削減努力の反映はGFエネルギー起源のみを対象としています。

Q6 GF方式の経過年数はいつから数えますか

2026年度が経過年数1であり、以降2027年度が2、2028年度が3と順次加算されていきます。基準年度からではなく、制度開始年度から起算する点に留意が必要です。

グランドファザリング方式 全体像

GX-ETS排出目標量の算定方法の全体像については、BM方式との位置づけを含む包括的な記事をご覧ください。

グランドファザリング方式 まとめ

グランドファザリング方式は、BM方式の対象とならない全てのプロセスに適用される算定方式であり、多くの企業にとって排出目標量の一部を構成する重要な要素となります。エネルギー起源と原材料起源の区分、副生燃料の除外、早期削減努力の活用といった判断を正確に行うことが、適切な排出目標量の算定につながります。基準排出量の正確な算定と2013年度データの確認を早期に進め、登録確認機関との円滑な連携を図ることをSSPとして推奨します。

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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