【2026年6月最新版】SBTi V2.0 企業カテゴリーと目標設定の基礎

SBTiコーポレートネットゼロ基準V2.0を理解する出発点となる、企業カテゴリーの判定と目標設定の基礎概念を整理します。全体像をつかんだうえで、判定の実務に踏み込みたい方に向けた解説です。

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目次

4つの基礎概念

企業カテゴリー

純売上高4億5,000万ユーロ以上または常勤換算従業員数1,000人以上のいずれかを満たす企業は、所在国を問わずカテゴリーAです。加えて高所得国に親会社を置く企業は、スコープ1と2の合計排出量が10,000 t CO2e以上である場合、または総資産2,500万ユーロ・純売上高5,000万ユーロ・常勤換算従業員数250人のうち2つ以上を満たす場合にカテゴリーAとなります。これらに該当しない企業はカテゴリーBで、移行計画の開示、目標基準年データの保証、スコープ3目標の設定などが任意となります。

目標の種類

すべての企業はスコープ1とスコープ2の近期目標(5年間)を設定し、カテゴリーA企業はスコープ3の近期目標も必須です。長期目標は2050年までに残余排出水準へ到達する目標であり、スコープ1で排出原単位方式または資産移行方式を選択した場合を除き任意です。

目標基準年

包括的なデータが利用可能な直近の年を目標基準年として選択し、サイクルごとに更新します。企業の現在の排出プロファイルに基づいて野心水準を決定する設計です。なお検証で同等の野心が確認されれば、より早い参照年に対する目標として対外的に伝達することも可能です。

アセスメントの仕組み

V2.0はSBTiアシュアランスモデルを導入し、目標検証とサイクル終了時評価の2段階で適合性を評価します。サイクル終了時評価はサイクル終了後12か月以内に完了する必要があり、カテゴリーA企業は進捗評価の根拠データに独立した第三者保証を受けることが求められます。

目標の野心水準はどう決まるか

目標の野心水準は、立地ベースのスコープ2を含む物理的GHGインベントリに基づいて決定されます。市場メカニズムや証書によって調達した低炭素電力は、目標の高さを決める段階では考慮されず、実施段階での評価対象となります。まず実態としての排出量で目標が決まり、その達成手段として削減行動や市場メカニズムが位置づけられる構造です。この順序を理解しておくことが、目標設定方式の選択とデータ整備の出発点になります。

近期目標は5年間を対象とし、企業の現在の排出プロファイルに整合する削減経路を描きます。長期目標は2050年までに残余排出水準へ到達する経路を示し、ネットゼロ目標はこれらに残余排出の中和を組み合わせたものです。いずれの目標も同じ物理的インベントリを土台とするため、算定の精度がそのまま目標の信頼性に直結します。だからこそ、カテゴリー判定と並行して算定体制の整備を早期に進めることが重要です。

実務で判断を求められる論点

実務担当者が判断を迫られる論点を表に整理します。

論点重要度判断のポイントよくある誤解
V1とV2.0のどちらで設定するかV1は2027年末まで利用可能であり、2030年目標保有企業は2028年からV2.0で次サイクルを設定するV2.0発効後はV1が即時に無効になるという誤解
企業カテゴリーの判定売上高、従業員数、総資産、排出量を連結ベースで直近2期平均により評価する目標設定の組織境界が子会社単位ならカテゴリー判定も子会社単位でよいという誤解
目標基準年の選択直近年が企業の構造と活動を適切に反映するかを評価し、例外適用時は正当性を報告する過去の基準年からの削減実績がV2.0で無意味になるという誤解
スコープ1目標方式の選択絶対量削減、排出原単位削減、資産移行の3方式から資本ストックの特性に応じて選ぶ原単位方式や資産移行方式は緩い基準であるという誤解
スコープ3の対象範囲と除外スコープ3の5%以上を占めるカテゴリーを必須対象とし、除外は条件と排出量と対応策の報告を伴う影響力がなければ説明なしに除外できるという誤解
市場メカニズムの利用可否実施ヒエラルキーの順序を踏み、統合性基準と発行プログラムのシステムレベル効果を確認する証書を購入すればどの排出にも充当できるという誤解
OERプログラムへの参加参加意思の表明は必須であり、不参加の場合は理由の提出が求められるOERは完全に任意で何も対応不要という誤解

企業カテゴリーの判定手順

カテゴリー判定は、最終親会社の連結ベースで直近2期の平均値を用い、売上高・従業員数・総資産・排出量の閾値からカテゴリーAかBかを判定します。判定結果は登録時に確認され、5年の目標サイクル中は維持されます。次のサイクルの目標設定時に再判定します。排出量の閾値は物理的GHGインベントリの数値で評価します。通貨はユーロ換算で閾値を適用します。

化石燃料企業とカテゴリーB企業の扱い

化石燃料の探査・採掘・生産に直接関与する企業は、セクター手法が確定するまで目標を検証できない点に注意が必要です。一方カテゴリーB企業は、スコープ3目標の設定、目標基準年データの保証、移行計画の開示が任意となりますが、SBTiは最低要件を超える取り組みを強く推奨しています。コングロマリット内の子会社は、独立した事業として運営される場合に別企業とみなされることがあります。

参考文献

Corporate-Net-Zero-Standard-version-2
https://files.sciencebasedtargets.org/production/files/Corporate-Net-Zero-Standard-version-2.pdf

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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