SBTiコーポレートネットゼロ基準V2.0が2026年6月11日に公表され、2027年2月1日に発効します。本記事はV2.0の全体像と現行版からの主要な変更点を一次資料に沿って整理します。各テーマの詳細は関連記事に分けて解説します。

SBTi V2.0の要約
SBTiコーポレートネットゼロ基準V2.0は2026年6月11日に公表され、2027年2月1日に発効する企業向けネットゼロ目標設定基準の全面改訂版です。企業を規模と所在国でカテゴリーAとBに区分し、最新年を目標基準年とする5年サイクルの目標設定、目標実施の優先順位を定める実施ヒエラルキー、目標基準年インベントリへの第三者保証、継続的排出責任の任意認定プログラムを導入しました。
改訂の背景
Science Based Targets initiative(SBTi)は、企業の温室効果ガス排出削減目標が気候科学に整合しているかを検証する国際的なイニシアチブです。2021年公表のバージョン1には11,000社を超える企業が科学に基づく目標を設定しました。一方でこの10年間の運用を通じて、目標の設定よりも実施が困難であるという課題が明確になりました。V2.0はこの学びを踏まえた全面改訂であり、2回の公開協議とパイロットテストを経て公表されました。
SBTi V2.0の定義
SBTiコーポレートネットゼロ基準V2.0とは、企業が2050年までのネットゼロ達成に整合する温室効果ガス排出削減目標を設定し、実施し、進捗を評価するための要求事項と推奨事項を定めた、SBTi基準体系の基盤となる規範文書です。スコープ1、2、3のカテゴリー1から14を対象とし、目標の野心だけでなく、移行計画、実施の統合性、第三者保証、サイクル終了時評価までを一貫した枠組みとして規定します。
5つの主要変更点
現行のバージョン1系列と比較した主要な変更点は次の5点です。
企業カテゴリーの導入
規模と所在国でカテゴリーAとBを区分し、低中所得国の中堅企業や小規模企業の負担を軽減しました。

目標基準年の転換
歴史的基準年ではなく、包括的データが利用可能な直近年を目標基準年とし、サイクルごとに更新します。

目標基準年データへの第三者保証の必須化
カテゴリーA企業は目標基準年インベントリと関連指標に最低限定的保証を取得します。

実施ヒエラルキーと統合性基準の新設
活動・アクティビティプール・セクターの順に行動を優先し、市場メカニズムに最低統合性基準を規定しました。
継続的排出責任(OER)の導入
気候貢献を3段階で認定する任意プログラムを設け、2035年以降はカテゴリーA企業を中心に段階的義務化する方針を明示しました。
このほか、スコープ1と2の目標分離の必須化、スコープ2の時間単位マッチング報告の導入、サイクル終了時評価の新設も実務影響の大きい変更です。
バージョン1との比較
主要項目を新旧で対比します。
| 比較項目 | バージョン1系列 | バージョン2.0 |
|---|---|---|
| 公表と適用 | 2021年10月公表、2027年末まで目標設定に利用可能 | 2026年6月11日公表、2027年2月1日発効 |
| 企業区分 | 原則一律の要求事項 | カテゴリーAとBの2区分で要求水準を差別化 |
| 目標基準年 | 歴史的基準年を起点に削減率を設定 | 直近年を目標基準年としサイクルごとに更新 |
| スコープ1と2 | 合算目標の設定が可能 | スコープ別の目標分離が必須 |
| スコープ3目標 | 一定の排出割合を満たす場合に必須 | カテゴリーA企業に必須、3つの方式と除外条項を整備 |
| 基準年データの保証 | 明示的な保証要求なし | カテゴリーAは最低限定的保証が必須 |
| 目標実施の規律 | 実施方法に関する体系的規定なし | 実施ヒエラルキーと統合性基準を新設 |
| 進捗評価 | 年次報告中心 | 年次報告に加えサイクル終了時評価を新設 |
| バリューチェーン外の貢献 | 推奨にとどまる | OER認定プログラムを制度化し2035年以降の義務化方針を明示 |
| 移行計画 | 必須要件ではない | 全企業に策定必須、カテゴリーAは15か月以内に開示 |
適用スケジュールと移行措置
バージョン1は2027年末まで目標設定に利用でき、発効後も当面は両版が並存します。公表は2026年6月11日、発効は2027年2月1日、V1での目標設定受付終了は2027年末です。2030年目標を持つ企業は、2028年から2030〜2035年サイクルの目標をV2.0で設定することが推奨されています。前倒し目標設定や企業カテゴリーの適用など、V2.0の一部要素は移行措置を通じてV1のもとでも先行利用できます。この時間軸を踏まえ、自社の適用方針は早期に固めておくことが望まれます。
企業に求められる3つの対応
本基準は目標設定の枠組みから、実施と説明責任を中核とする行動の枠組みへ転換しました。第一の対応は自社のカテゴリー判定と適用時期の確認で、V1で先行するかV2.0を待つかの方針決定を含みます。第二はデータ基盤と保証体制の整備で、カテゴリーA企業は目標基準年のスコープ1・2・3排出量、低炭素電力の算定値、重要な排出集約活動の排出量に最低限定的保証を取得します。第三は移行計画の策定で、カテゴリーA企業は目標検証完了後15か月以内の開示が必須です。算定体制と保証準備への着手は早いほど有利です。
SSPはGHG排出量の第三者保証の専門機関として、V2.0への移行を見据えた第三者保証業務を承ります。

参考文献
Corporate-Net-Zero-Standard-version-2
https://files.sciencebasedtargets.org/production/files/Corporate-Net-Zero-Standard-version-2.pdf


