【GX-ETS】 排出目標量の算定方法を解説

GX-ETS第2フェーズにおいて、排出目標量の算定は制度対応の中核をなす作業です。排出目標量はベンチマーク方式とグランドファザリング方式の2つの方法で算出され、プロセスごとにどちらが適用されるかは制度側で決まっています。本記事ではSSPの実務経験に基づき、両方式の考え方、適用の判断基準、そして算定にあたって押さえるべき要点を整理します。

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目次

GX-ETS排出目標量 要約

排出目標量とは、制度対象者に割り当てられる排出枠の基礎となる数値であり、ベンチマーク方式とグランドファザリング方式の2つで算出されます。20業種の特定事業活動に該当するプロセスにはBM方式が、それ以外にはGF方式が自動的に適用される仕組みとなっています。この排出目標量に勘案事項による調整量を加えた排出目標量等合計量が、毎年9月30日までに届け出る最終値にあたります。

GX-ETS排出目標量 背景

第1フェーズのGXリーグでは、排出目標量は企業が自主的に設定するものでした。各社の事業戦略に応じた柔軟な目標設定が可能でしたが、その分、企業間の公平性や削減の実効性に課題を残していました。

第2フェーズでは、排出目標量の算定方法が制度として厳密に定められています。国が告示で公表する排出原単位の目標値や削減率を用いて、一律のルールに基づく算定が求められるようになりました。企業が独自に目標を設定する余地はなく、自社のプロセスがどの算定方式に該当するかを正確に判定することが出発点となります。

この仕組みは、業界の効率上位水準を基準とするBM方式と、過去の実績から一律に削減するGF方式を組み合わせることで、公平性と実効性の両立を図った制度設計といえます。排出効率の良い企業はBM方式のもとで排出目標量に余裕が生まれ、その余剰分を排出枠市場で売却することも可能になります。

GX-ETS排出目標量 定義

SSPは排出目標量を次のように定義しています。BM方式およびGF方式で算出した各プロセスの排出目標量に、副生燃料の別枠計算分を加えた合計値であり、制度対象者に割り当てられる排出枠の基礎となる数値です。

排出目標量等合計量は、この排出目標量に勘案事項による調整量を加えた最終値を指し、毎年9月30日までにERMSを通じて届け出なければなりません。排出枠は原則としてこの排出目標量等合計量と同量が無償で割り当てられます。

GX-ETS排出目標量 基礎

排出目標量の算定にあたって理解すべき基礎概念を整理します。

計算に使う数字は大きく2種類に分かれます。ひとつは生産量や燃料使用量といった自社データであり、モニタリングを通じて把握し登録確認機関の確認を受けるものです。もうひとつは目指すべき排出原単位や削減率といった国が告示で公表する固定値であり、全社共通の数値として適用されます。

BM方式

「目指すべき排出原単位」に「基準活動量」を掛けて算出する方法であり、業界の効率上位水準と自社の活動規模で排出目標量が決まる仕組みとなっています。目指すべき排出原単位は、日本の同業種全体のデータから国が算出した固定値であり、企業がこの値を自ら計算する必要はありません。

GF方式

「基準排出量」に削減係数を掛けて算出する方法であり、自社の過去実績から毎年一律に削減していく仕組みです。エネルギー起源は年1.7%、原材料起源は年0.3%という削減率が適用されます。原材料起源の削減率が低いのは、化学反応に由来するCO2は技術的に削減が困難なためです。

基準年度は2023年度から2025年度の3年間であり、この期間の平均値が基準活動量や基準排出量として使用されます。第2フェーズの5年間を通じて基準年度データは原則として固定されますが、活動量が7.5%以上変動した場合には更新の仕組みが用意されています。

GX-ETS排出目標量 結論

SSPは排出目標量の算定において、次の3点を特に重要と考えています。

第一に、BM方式とGF方式の適用はプロセスごとに自動的に決まるものであり、企業が選択できるものではありません。20業種の特定事業活動に該当するか否かを正確に判定することが最初のステップとなります。

第二に、1社が複数の算定方式を併用するケースは珍しくありません。製造と発電を行う企業であれば、製造工程にはBM方式、ユーティリティにはGF方式、自家発電には発電BM方式、副生燃料には別枠GF方式と、4つの算定方式が同時に適用される場合もあります。

第三に、排出目標量の算定には登録確認機関による事前確認が義務づけられています。勘案事項による調整量は確認対象外ですが、排出目標量の部分については確認を受けなければ届出が完了しません。確認機関との早期契約がここでも重要になります。

GX-ETS排出目標量 論点

論点制度上の位置づけ実務上の留意点
方式選択の自動判定20業種の特定事業活動に該当すればBM、それ以外はGF企業に選択権はなく、自社プロセスとの照合が出発点
1社複数方式の併用製品BM・燃料BM・発電BM・GF・副生燃料別枠製造×発電×ユーティリティで4方式が並存することも珍しくない
基準年度データ2023〜2025年度の3年平均第2フェーズ中は原則固定、7.5%超変動時は更新
補正の要否品種補正・直接排出比率による補正事業活動ごとに明確化、必要データを早期準備
登録確認機関の事前確認排出目標量の届出前に必須勘案事項調整量は確認対象外
排出目標量等合計量排出目標量+勘案事項調整量毎年9月30日までにERMSで届出

GX-ETS排出目標量 比較

比較項目ベンチマーク方式(BM)グランドファザリング方式(GF)
適用対象20業種の特定事業活動BM対象外のすべての事業活動
算定式目指すべき原単位 × 基準活動量(×直接排出比率)基準排出量 ×(1−削減率×経過年数)
基準値業界上位50%(2030年度に上位32.5%へ)自社の2023〜2025年度排出量3年平均
削減率2026〜2030年度で段階的引き下げエネ起源1.7%/年、原材料・副生燃料0.3%/年
効率改善インセンティブ強い(効率良いほど余裕が生まれる)限定的(早期削減努力の調整措置で補完)
品種補正・直接排出比率補正事業活動により必要適用なし
副生燃料の扱い本体算定とは別枠で算定別枠(基準排出量×(1-0.003×経過年数))

GX-ETS排出目標量 ナビゲーション

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GX-ETS排出目標量 手順

1. 自社のプロセス構成を棚卸しする。工場ごとに保有するプロセスを洗い出し、20業種の特定事業活動との照合を行います。1社が複数の特定事業活動に該当することは珍しくありません。

2. 各プロセスの算定方式を特定する。特定事業活動に該当するプロセスにはBM方式を、該当しないプロセスにはGF方式を、副生燃料には別枠GF方式をそれぞれ適用します。

3. 基準年度データを収集する。2023年度から2025年度の3年間について、BM対象プロセスは活動量データを、GF対象プロセスは排出量データを正確に把握します。

4. 補正の要否を確認する。BM方式では品種補正や直接排出比率による補正が必要なプロセスがあるため、対象となるか否かを確認し、必要なデータを準備します。

5. 排出目標量を算定する。国が告示で公表する固定値と自社データを用いて、各プロセスの排出目標量を算出し合算します。ERMSの演算機能を活用することが推奨されています。

6. 調整措置の該当有無を確認する。活動量変動、新設・廃止、早期削減努力の3つの調整措置について該当するかを判定し、該当する場合は反映します。

7. 登録確認機関の確認を受ける。排出目標量について登録確認機関による確認を受け、確認報告書を取得します。

8. 排出目標量等合計量を届け出る。排出目標量に勘案事項による調整量を加えた最終値をERMSで届け出ます。通常の届出期限は9月30日です。

GX-ETS排出目標量 FAQ

Q1 BM方式とGF方式は企業が選べるのですか

選ぶことはできません。20業種の特定事業活動に該当するプロセスには自動的にBM方式が、それ以外にはGF方式が適用される仕組みとなっています。

Q2 目指すべき排出原単位は自社で計算するのですか

自社で計算する必要はありません。国が日本の同業種全体のデータに基づいて算出し、告示で公表する固定値を引用するだけです。登録確認機関も告示値との一致を確認するにとどまります。

Q3 基準活動量は毎年変わるのですか

原則として変わりません。基準年度である2023年度から2025年度の3年平均で固定され、フェーズ中は同じ値を使い続けます。ただし活動量が7.5%以上変動した場合には更新される仕組みが設けられています。

Q4 1社が複数のBMに該当することはありますか

あり得ます。たとえば製鉄と板ガラスの両方を手がける企業であれば、高炉のBMと板ガラスのBMが同時に適用され、さらにGFや発電BMも加わる場合があります。

Q5 GF方式の削減率はなぜエネルギー起源と原材料起源で異なるのですか

原材料起源のCO2は化学反応に由来するため、燃料転換のような手段では削減が困難です。そのためエネルギー起源の年1.7%に対し、原材料起源は年0.3%という低い削減率が設定されています。

Q6 排出目標量と排出目標量等合計量の違いは何ですか

排出目標量はBM方式とGF方式で算出した各プロセスの合計値にあたります。これに勘案事項による調整量を加えたものが排出目標量等合計量であり、9月30日に届け出る最終値となります。排出枠はこの排出目標量等合計量に基づいて割り当てられます。

Q7 勘案事項による調整量は登録確認機関の確認対象ですか

確認対象外です。登録確認機関が確認するのは排出目標量の部分のみであり、カーボンリーケージ対策やR&D投資による調整量は確認を受けずに届け出ることになります。

GX-ETS排出目標量 まとめ

GX-ETS排出目標量の算定は、制度対応の中核をなす複雑な作業ですが、その構造は明確に整理されています。BM方式かGF方式かの判定は制度側で決まっており、企業は自社プロセスの正確な棚卸しと基準年度データの整備に注力すべきです。

算定の実務では、品種補正や直接排出比率による補正の要否、副生燃料の別枠処理、調整措置の該当判定など多くの判断が求められますが、いずれも制度上のルールに従って機械的に処理できる性質のものです。登録確認機関による事前確認を円滑に進めるためにも、基準年度データの品質確保と早期の準備着手をSSPとして推奨します。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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