GX-ETS 化学-カーボンブラック製造の直接排出量管理

カーボンブラックは、タイヤや工業用ゴム製品の補強材として広く使用される素材です。その製造工程では、反応炉からのテールガス処理に伴い特有のCO2およびCH4排出が発生します。本記事では、GX-ETS制度への対応を見据え、カーボンブラック製造業におけるGHG排出量算定の基本的な考え方と管理上の重要ポイントについて解説します。

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目次

カーボンブラック 背景

反応炉におけるプロセス排出

カーボンブラック製造は、炭化水素フィードストック(石油留分やコールタール)を高温反応炉で部分的に燃焼させることにより、カーボンブラック粒子を生成するプロセスです。反応炉内での温度は1,200~1,600℃に達し、フィードストックの不完全燃焼によりカーボンブラックとテールガス(未燃焼ガス)が生成されます。このテールガスにはCO2とCH4が含まれており、その最終処分方法により異なる排出係数が適用されます。

テールガスの処分方法は複数あり、各々のCO2排出係数が異なります。

乾燥炉での熱回収利用:2.06 tCO2/t

ボイラーでの熱回収:異なる係数

直接大気放出またはフレア処理:別の係数

企業の施設構成により、テールガスの一部が複数の処分方法で処理される場合もあります。このため、テールガスの処分先配分を正確に把握することが、正確な排出量算定の基礎となります。

熱処理の有無がCH4排出量に与える影響

カーボンブラック製造におけるCH4排出量は、製品の熱処理の有無により劇的に異なります。熱処理を施したカーボンブラック製品のCH4排出係数は0.06 kg/tであるのに対し、熱処理なしの製品では28.7 kg/tと約480倍の差があります。この顕著な差は、高温処理により未反応の有機物が分解され、メタン生成の可能性が低下することに起因しています。

したがって、各製品ラインで実際に熱処理が実施されているかどうかを確認することは、CH4排出量の算定において極めて重要です。製造工程の設計上、熱処理装置が設置されていても、運用段階で省エネやコスト削減の観点から熱処理を省略する場合もあります。定期的に運転記録を確認し、実際の熱処理実施状況に基づいて排出係数を適用することが不可欠です。

カーボンブラック製造のベースラインCH4排出量は0.029 tCH4/tと定められており、これは各製品の特性を考慮した係数です。熱処理の有無により480倍の変動があることを踏まえると、製品仕様と実際の運用状況を正確に把握することが、防御的な排出量報告の基盤となります。第三者検証では、この点が特に厳格に確認されます。

カーボンブラック 重要点

テールガスの最終処分先の追跡管理

テールガスの追跡管理は、カーボンブラック製造業におけるGHG算定の中核です。反応炉で生成されたテールガスが、乾燥炉、ボイラー、フレア、大気放出など複数の処分方法に分岐する場合、各々への配分量を正確に把握する必要があります。配分比率が不明確なまま算定するとCO2排出量が大きく過小評価される可能性があり、第三者検証で指摘されるリスクが高まります。

1 設備フロー図を作成し、反応炉から各処分設備への配管接続を明確に記録しておくことで、監査時に処分配分の根拠を迅速に説明できます。

2 反応炉運転データと処分設備の処理量を相互参照することで、配分比率の妥当性を検証できます。

3 配分比率が季節変動や設備改修により変わる場合は、変更箇所と時期を明確に記録しておくべきです。

GX-ETS制度への適合性を高めるためには、テールガス処分方法の変更に伴う排出係数の見直しプロセスを制度化することが有効です。

プロセスCO2と燃焼CO2の二重計上防止

二次原料としてのカーボンブラック製造では、副産物や処理対象の二次原料由来のCO2が、プロセス排出として計上される場合があります。同じ炭素源が、製造プロセスのCO2排出として一度計上された後、テールガスが燃焼される際にCO2が再度発生すると、同じ炭素を二重に計上するリスクが生じます。

この二重計上を防止するには、炭素フローを明確に定義し、各工程でのCO2排出をどの段階で計上するのかを文書化することが重要です。例えば、プロセス排出として計上する場合は、その後の燃焼による排出は計上しない、といった明確なルールを企業内で定めておくべきです。第三者検証では、この点が複数の角度から確認されることが多いため、防御的な位置付けを準備しておくことが必須です。

カーボンブラック 手順

データ管理と検証準備

カーボンブラック製造業がGX-ETS制度への対応を進める上で、体系的なデータ管理体制の構築が急務です。

1 テールガス流量配分記録、製品ラインごとの熱処理実施状況、月次の物質収支、排出係数選択の根拠などを統合的に管理するシステムを構築します。

2 トレーサビリティを確保するため、システムに日付、責任者、変更履歴の記録機能を実装します。

3 排出係数の変更時には、変更理由、変更年月日、責任者を記録することで、監査対応の迅速性を向上させます。

4 データの信頼性を確保するため、複数部門によるデータ確認のプロセスを制度化します。

内部監査を定期的に実施し、データ管理体制の実効性を評価することで、第三者検証時の指摘事項を事前に把握・改善できます。特にテールガス配分の妥当性、熱処理の実施確認、排出係数の適用根拠の三点は、検証対応の重点項目となるため、これら を中心とした監査チェックリストを準備しておくべきです。

カーボンブラック まとめ

カーボンブラック製造業のGHG排出量算定は、テールガス処分方法の複雑性と、熱処理の有無による排出量の極端な変動という特徴を有しています。これらの要素を正確に把握し、文書化することが、GX-ETS制度への適合性を確保し、将来の排出削減施策を効果的に推進するための基盤となります。詳細な技術資料をダウンロードいただき、御社のGHG管理体制の構築にご活用ください。

参考情報

・環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」
・国立環境研究所「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」
・経済産業省「GX-ETS制度概要」

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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