GX-ETS 石油精製・石油化学-ナフサクラッカーの直接排出量管理

ナフサクラッカーは、エチレンをはじめとする基礎化学品を製造する石油化学の中核設備です。高温での熱分解工程を伴うため大量のCO2を排出します。2026年度から本格稼働するGX-ETS制度においても、石油化学セクターは主要な対象業種に位置づけられており、各企業における排出量管理体制の整備が急務となっています。本記事では、ナフサクラッカーを運用する事業者向けに、排出量管理の基本的な考え方と算定上の重要なポイント、並びに実装に向けた具体的な対応方針について詳しく解説します。

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目次

ナフサクラッカー 背景

分解炉を中心とした排出構造の詳細理解

ナフサクラッカーの製造プロセスでは、原料ナフサを800度C以上の極めて高温で熱分解し、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類を生産します。

分解炉
最大の排出源であり、プラント全体のCO2排出量の60パーセント以上を占めます。燃料ガス加熱に伴うCO2が発生します。

付属設備
加熱炉、ボイラー、コージェネレーション設備などの燃料燃焼排出。

Scope 1管理範囲
焼却炉、フレアスタックからの排出、HFC漏えい、電気絶縁機器(SF6、NF3)、タンクやバルブからの漏えい。

これらの多様な排出源の特定と定期的な見直しは正確な算定の基礎であり、年1回以上の排出源インベントリの更新が推奨されます。

フレア排出の管理と非定常排出への対応

フレアスタックは通常運転時の余剰ガス処理だけでなく、緊急停止や圧力安全弁作動時の非定常排出の受け皿として機能します。

フレアの燃焼効率の検証
一般的に98パーセントとされる燃焼効率の妥当性を、流量変動や点火システムの状況から定期的に検証します。

非定常時排出の記録
ESD発生記録とフレア流量ログの突合せを定常的に実施し、非定常時の排出量を適切に反映させます。

ガス組成の把握
ガス組成の正確な把握のため、分析頻度と信頼性を確保します。

統計分析による異常検出
月次のフレア運転時間と流量記録の統計分析により、異常時の即時検出と削減機会の探索を実施します。

ナフサクラッカー 重要点

エチレン製造に伴うプロセスCO2と二重計上リスク

エチレン製造工程では、原料の炭化水素がクラッキング反応を通じて分解される過程で、プロセス由来のCO2が発生します。

温対法上のTier 1アプローチ
エチレン製造量に排出係数を乗じて算定。

二重計上リスクの回避
分解炉の燃料消費として計上したCO2と、プロセス排出として計上したCO2が重複しないよう、適用範囲を社内方針として明確に文書化します。

社内における担当部門間の定期的な協議会を開催し、算定方法の統一性を確保する仕組みが有効です。

ベンチマーク算定の留意点と製品構成対応

ナフサクラッカーのベンチマーク算定では、エチレンのほか、プロピレンやC4ブタジエンへの換算が必要となります。

等価換算
最新のガイドラインを参照し、製品構成に応じた変換係数を正確に適用します。

外部電力販売の控除
コージェネレーション設備からの販売に伴うCO2控除について、最新の監査基準と適用条件を確認します。

平均化処理の検討
製品構成の変動が大きい場合、複数年度データを用いた処理により排出枠割当の不確実性を低減します。

ナフサクラッカー 手順

実装戦略と継続的改善

GX-ETS制度の本格稼働に備え、以下の手順で体制整備を進めることが推奨されます。

排出源インベントリの完全性確認
各設備の排出係数の正確性を定期的に検証します。

月次の物量バランス確認
データの整合性を確保し、異常値を早期に検出します。

算定方法の社内標準化
複数部門間での統一性を確保するための管理体制を整備します。

監査準備
定期的な内部監査を実施し、第三者検証への対応体制を整えます。

継続的な改善により、規制対応はもちろん企業の競争力強化にもつながります。

参考情報

・経済産業省「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」
・環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」
・石油化学工業協会「環境報告」

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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