サステナビリティ保証基準の意見書案 監査法人以外の保証業務実施者と限定的保証

2026年10月29日、企業会計審議会の第3回サステナビリティ情報保証部会で、サステナビリティ情報の保証業務、品質管理、倫理・独立性に関する国内基準の設定についての意見書案が示されました。2026年7月に成立した改正金融商品取引法により、一定のプライム市場上場企業にはSSBJ基準による開示と第三者保証が義務付けられます。意見書案は、その保証で用いる基準の性格と作り方を定めようとするものです。

本記事では、株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズ(SSP)が、金融庁の公表資料をもとに、意見書案の現在の段階、基準3本の名称案と策定主体、監査法人以外の保証業務実施者の位置付け、保証範囲と限定的保証の考え方を整理します。案の段階であるため、確定版の公表後に内容を確認し直す必要があります。

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目次

サステナビリティ保証基準 要約

意見書案は、国際基準と原則同等の国内基準として、保証業務のJSSA 5000、品質管理のJSQM 1、倫理・独立性のJESSAという名称案を示し、策定主体は金融庁が適当としています。監査法人以外も登録要件を満たせば保証業務実施者になれる前提で、当面の保証範囲はScope1・2、ガバナンス、リスク管理、保証水準は限定的保証です。

意見書案はいまどの段階か

まず、意見書案が審議のどの段階にあり、何が未確定かを確認します。

部会の審議経過

部会は2026年4月の企業会計審議会総会で設置され、国際基準と整合性が確保された保証の基準のあり方を審議しています。これまでの開催は次のとおりです。

開催日回主な内容
2026年5月25日第1回事務局説明資料で制度の概要と論点を提示
2026年7月3日第2回前回の意見を踏まえ意見書の骨子イメージを提示
2026年10月29日第3回意見書案の本文を提示

まだ決まっていないこと

第3回で示された文書は「意見書案」で、日付は「令和●年●月●日」と未記入のままです。2026年11月3日時点で、部会のページには第3回の議事録も、意見書案に対する意見募集の案内も掲載されていません。意見書がいつ確定するか、意見募集が行われるかは、公式資料で明示されていません。

国内基準3本の名称と策定主体

意見書案の中心は、国内基準の性格と作り方です。

名称案はJSSA 5000など3本

意見書案は、原則として国際基準と同等な基準としつつ、日本固有の実情を踏まえた調整を加えたものを国内基準とする考え方を示しています。調整の内容は企業会計審議会で審議するとしています。名称は次のようにすることが考えられる、とされています。

区分名称案対応する国際基準
保証業務サステナビリティ保証業務基準5000「サステナビリティ情報の保証業務に関する基準」 JSSA 5000ISSA 5000
品質管理サステナビリティ情報の保証業務実施者に関する品質管理基準 JSQM 1ISQM 1
倫理・独立性サステナビリティ情報の保証に関する倫理及び独立性基準 JESSAIESSA

ISSA 5000は2024年11月に国際監査・保証基準審議会が、IESSAは2025年1月に国際会計士倫理基準審議会が公表しました。意見書案は、両基準が監査法人・公認会計士以外の者の利用も想定して開発されたことに触れています。

国際基準との調整として示された3点

調整の中身として、意見書案はすでに3つの項目を挙げています。1つ目は、保証業務実施者がコミュニケーションを行うガバナンスに責任を負う者の整理で、一例として取締役会や監査役等が該当すると考えられるとしています。2つ目は、ISQM 2も踏まえた審査の実施を基準等で求めるべきという点です。3つ目は、保証業務実施者間の引継と共同サステナビリティ保証を、品質管理基準等で明示的に要求事項とすべきという点です。2つ目と3つ目は、監査法人と監査法人以外の保証業務実施者が併存し、担い手が多様化することも踏まえた論点です。

金融庁が策定主体となる理由

基準の策定は自主規制機関が担うことも考えられますが、意見書案によれば、サステナビリティ情報の保証業務実施者に関する自主規制機関は現在存在しません。また、監査法人と監査法人以外のどちらも登録要件を満たせば保証業務実施者になれる制度です。この2点から、金融庁が策定主体となることが適当とされています。

協会の実務指針をもとに作る

日本公認会計士協会は、2026年3月にサステナビリティ保証業務実務指針5000と品質管理基準報告書第1号を公表しています。同年4月には、倫理規程関連の翻訳も公表されています。意見書案は、金融庁がこれらを監査法人以外も遵守できるよう修正し、国際基準との調整を反映し、作成者や投資者などの意見を踏まえて策定することが望ましいとしています。

監査法人以外の保証業務実施者

タイトルにある監査法人以外の扱いは、登録制度が前提です。

登録制の考え方

意見書案によれば、改正法に基づき、将来にわたって保証業務実施者を十分に確保する観点から、監査法人であるかどうかにかかわらず、登録要件を満たす場合は保証業務実施者になれる制度が導入されることになりました。金融庁には、登録要件の審査に加え、基準や行為規制の遵守状況の検査・監督を通じて保証業務実施者の質を確保することが求められている、とされています。

登録要件の考え方は、2026年1月の金融審議会ワーキング・グループ報告が示しています。登録の要件として、法人であること、業務執行責任者の専門的知識・経験・能力、品質管理部門または品質管理に主として従事する者の設置、審査担当者の確保、一定の財産的基礎などを求めるべきとされています。業務執行責任者を公認会計士資格者に限定する必要はないと考えられる、とも記されています。具体的な数値基準は公表資料では確認できません。

財務諸表監査人との連携

保証業務実施者と財務諸表の監査人が異なる場合も想定されています。保証業務実施者は、保証対象外の記載であるその他の記載内容を通読し、検討します。その中には財務諸表と監査報告書も含まれます。財務諸表等との重要な相違や、財務諸表等の重要な虚偽の表示の可能性を認識した場合に備え、一定の場合には秘密保持義務が解除されることをあらかじめ企業と合意するなどして、監査人と適切にコミュニケーションすることが求められています。

保証範囲と限定的保証

企業の準備に直結するのが、保証の範囲と水準です。

当面はScope1・2とガバナンス・リスク管理

意見書案は、第三者保証制度が当面の間、義務付けの範囲を、有価証券報告書等で開示されるサステナビリティ情報のうちScope1・2温室効果ガス排出量、ガバナンス、リスク管理に関する事項に限定していることを前提としています。ワーキング・グループ報告では、制度の適用開始から2年間をこの範囲とし、3年目以降は国際動向等を踏まえて今後検討するとされています。

保証対象外の情報の扱い

開示の一部だけを保証する場合、SSBJ基準のうちどこまでが保証範囲で、何が適合する規準になるのかが明確ではありません。意見書案は、これを法令で明確にする必要があるとしています。また、保証対象外のサステナビリティ情報は、その他の記載内容として通読・検討の対象になる点に留意が必要とされています。

限定的保証の水準

保証水準は限定的保証です。ワーキング・グループ報告では、合理的保証への移行の検討は行わないことが適当とされました。限定的保証では、保証業務リスクの水準が合理的保証より高く設定され、重要な虚偽の表示があると信じさせる事項が認められたかどうかを結論として報告します。

適用スケジュール

保証の義務化は、SSBJ基準の適用義務化の翌年から始まります。意見書案は、2028年3月決算から時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業に保証が義務付けられることを踏まえ、基準等が2027年3月末までに策定されることが望まれるとしています。

時価総額SSBJ基準の適用義務化第三者保証の義務化
3兆円以上2027年3月期2028年3月期
1兆円以上3兆円未満2028年3月期2029年3月期
5千億円以上1兆円未満2029年3月期2030年3月期

時価総額は、前期末から遡った過去5事業年度の末日の時価総額の平均で判定します。5千億円未満の企業への適用は今後検討とされています。

誤解されやすい点

案の段階のため、読み違えやすい点を2つ挙げます。

意見書案は要求事項を定めない

意見書案は、保証業務実施者が遵守すべきなのは今後策定される基準等であり、意見書自体は新たに要求事項を定めるものではないと明記しています。意見書案の記載をそのまま企業や保証業務実施者の義務と読むのは正確ではありません。2026年11月3日時点で、部会のページには基準本体の案は掲載されていません。

合理的保証への移行は予定されていない

海外の議論から、将来は合理的保証に移行すると考える方もいるかもしれません。国内制度については、ワーキング・グループ報告が移行の検討は行わないことが適当としています。一方、保証範囲は3年目以降の扱いが今後検討とされており、範囲の拡大は決まっていません。

企業が今から確認すべきこと

保証基準の確定を待たずに進められる準備もあります。保証の対象が当面Scope1・2とガバナンス・リスク管理に限られることを前提にすると、次の点を早めに確認しておくと移行が円滑になると考えられます。

確認事項内容
適用時期自社の時価総額区分から、開示と保証の初年度を確定する
データの裏付けScope1・2の活動量と排出係数を、根拠資料までたどれる状態にする
内部統制集計手順と承認の記録を整え、作成責任が経営者にあることを前提に体制を見直す
保証業務実施者の選定登録制度の開始後に登録状況を確認し、財務諸表監査人との連携の方法も含めて検討する
制度の続報意見書の確定、基準本体の案、内閣府令の内容を確認する

サステナビリティ保証基準 まとめ

第3回サステナビリティ情報保証部会で示された意見書案は、国際基準と原則同等の国内基準を、金融庁が日本公認会計士協会の実務指針をもとに策定する方向を示しました。監査法人以外も登録要件を満たせば保証業務実施者になれる前提で、当面の保証はScope1・2、ガバナンス、リスク管理の限定的保証です。

意見書の確定時期や意見募集の有無、基準本体と登録要件の詳細はまだ公表されていないため、確定版の公表後に改めて確認が必要です。SSPでは、Scope1・2排出量の第三者検証についてのご相談をお受けしています。

参考リンク

金融庁 企業会計審議会第3回サステナビリティ情報保証部会 議事次第 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20261029.html

金融庁 サステナビリティ情報の保証業務に関する基準等の設定について 意見書案 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20261029/01.pdf

金融庁 企業会計審議会 サステナビリティ情報保証部会 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/hoshou/hoshou_index.html

金融庁 第2回サステナビリティ情報保証部会 事務局説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20260703/01.pdf

金融庁 第1回サステナビリティ情報保証部会 事務局説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20260525/02.pdf

金融庁 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ報告 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20260108/01.pdf

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この記事を書いた人

SSP編集部は、非財務情報の第三者保証を専門とする株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズの実務者チームです。公認会計士やISO審査・サステナビリティ開示の実務経験を持つ専門職員で構成され、ISO 14064-3・ISAE 3000・ISSA 5000等の国際基準に基づくGHG排出量(Scope1・2・3)の検証・保証や、GX-ETS(排出量取引制度)の登録確認機関としての確認業務に従事しています。SSBJ・CDP・SBTなど最新の制度動向を一次情報にあたって追い、算定・開示の現場実務に即した、正確でわかりやすい解説をお届けします。

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