GX-ETS第2フェーズでは、制度開始後に新設された工場やプロセス、閉鎖された施設、さらには災害や保安検査による操業停止に対応するための調整措置が設けられています。基準年度データが存在しない新設分の追加や、もはや稼働していない設備分のゼロ化といった実態への適合を図る仕組みです。本記事ではSSPの実務経験に基づき、新設・廃止・災害時の調整方法を整理します。


新設廃止調整 要約
新設・廃止・災害時の調整は、基準年度データだけでは捉えきれない構造的な変化に対応するための措置です。新たに操業を開始したプロセスは新設の翌年度の届出で事後調整され、新設があった年度の活動量に目指すべき排出原単位を乗じた量(GF対象は新設後の排出実績量)を加算します。閉鎖したプロセスは廃止年度の割当量を廃止後日数で日割り計算した量を翌年度の排出目標量から控除します。災害や保安検査による操業停止があった場合は公的記録に基づく調整が可能です。いずれもBM対象、GF対象を問わず全プロセスに適用されます。
新設廃止調整 背景
基準活動量や基準排出量は2023年度から2025年度の3年平均で固定されていますが、事業活動は静的なものではなく、新工場の建設や既存設備の廃止は日常的に起こり得るものです。M&Aによる事業の取得や分社化に伴う事業構造の変化もあり得ます。基準年度にデータが存在しない新設プロセスや、もはや稼働していない廃止プロセスをそのまま放置すると、排出目標量と実態が大きく乖離してしまいます。
新設廃止調整 定義
SSPはこの調整措置を次のように定義しています。制度開始後に新たに操業を開始した工場やプロセスについて新設日以降の日数で日割り計算した排出目標量を加算し、閉鎖した工場やプロセスについて廃止後の日数で日割り計算した割当量を翌年度の排出目標量から控除し、災害や保安検査による操業停止について公的記録に基づき排出目標量を調整する仕組みです。BM対象、GF対象を問わず全プロセスに適用されます。
新設廃止調整 結論
SSPは3点を特に重要と考えています。第一に、新設は操業開始した年度の届出で反映し、廃止は閉鎖した翌年度からゼロにする点でタイミングを正確に把握する必要があります。第二に、BM対象の新設であればBM方式で、GF対象の新設であれば操業開始後の排出量を基準として設定します。第三に、組織再編に伴う構造変化では基準活動量や基準排出量の引継ぎルールが適用されるため、合併等マニュアルの手続きとの連携が求められます。
新設廃止調整 論点
SSPが新設・廃止・災害時の調整を実務適用するうえで重要と考える論点を整理します。期中変動への対応となるため、迅速な判断と申請手続が求められます。
| 論点 | 制度上の位置づけ | 実務上の留意点 |
| 新設の判定 | 操業開始後の排出データを基準として採用 | 開業時点と基準データ取得タイミングの管理が必要 |
| 廃止の手続 | 廃止年度以降は対象外として処理 | 廃止届の提出時期と残存プロセス再算定の確認 |
| 災害時の対応 | 災害発生時の特例措置として申請可 | 被災事実の証跡確保と申請の迅速性が鍵 |
| 組織再編との関係 | 合併・分割は別途マニュアル参照 | 排出目標量の引継ぎ方法を事前確認 |
| BM/GF区分別の扱い | 適用方式によって基準データの取り方が異なる | プロセスごとに適切な算定方式を選択 |
| 期中調整の頻度 | 必要に応じて期中に発動 | モニタリング体制の整備が前提となる |
新設廃止調整 比較
新設・廃止・災害時の3つの調整措置を比較すると、発動条件と基準データの扱い、申請の要否が異なります。事業特性に応じてどの調整措置が必要となるかを事前に把握しておくことが重要です。
| 比較項目 | 新設 | 廃止 | 災害時 |
| 発動条件 | 新規プロセスの操業開始 | プロセスの廃止決定 | 災害発生の事実 |
| 適用時期 | 操業開始年度から | 廃止年度以降 | 災害発生後 |
| 基準データの扱い | 操業開始後の実績を採用 | 廃止前実績で打切り | 通常基準に減免措置を適用 |
| 対応プロセス | 操業実績を基準排出量に設定 | 残存プロセスの再算定 | 被災プロセスの目標緩和 |
| 申請の要否 | 原則自動適用 | 原則自動適用 | 申請ベース |
| 必要書類 | 設備新設の証拠書類 | 廃止届および関連証拠 | 被災・復旧記録 |
| 主な留意点 | 初期実績の精度管理 | 廃止タイミングの確定 | 申請期限の遵守 |
新設廃止調整 重要点
新設プロセスの排出目標量の設定方法
新設プロセスがBM方式の対象となる特定事業活動に該当する場合は、該当するBMの目指すべき排出原単位と新設プロセスの活動量に基づいて排出目標量を算出します。GF方式の対象となる場合は操業開始後の排出実績を基準排出量として設定し、GFの削減率を適用します。いずれの場合も基準年度にデータが存在しないため、操業開始後の実績データが基準の代わりとなります。
組織再編に伴う構造変化への対応
合併、吸収分割、事業譲渡といった組織再編が発生した場合は、単なる新設や廃止とは異なる手続きが求められます。消滅会社や分割される事業部門の基準活動量や基準排出量をどのように引き継ぐかは、合併等に関するマニュアルで詳細に定められています。組織再編の予定がある企業は、排出目標量への影響を事前にシミュレーションしておくことが望ましいでしょう。
新設廃止調整 手順
1. 当年度に新設または廃止されたプロセスの有無を確認する。
2. 新設の場合は該当するBMまたはGFの方式を特定する。
3. 新設プロセスの排出目標量を算出し全体に加算する。
4. 廃止の場合は該当事業活動の廃止年度の割当量を「廃止日から3月31日までの日数÷年間総日数」で日割り計算し、翌年度の排出目標量から控除する。
5. 災害や保安検査による影響がある場合は公的記録を準備し調整を申請する。
新設廃止調整 FAQ
Q1 新設工場の排出目標量はいつから反映されますか
操業を開始した年度の届出で反映されます。操業開始前の年度には反映されません。
Q2 廃止した工場の排出目標量は即座にゼロになりますか
廃止年度における当該事業活動に係る割当量について、廃止後の日数で日割り計算した量を、廃止した翌年度(届出年度)の排出目標量から控除します。具体的には「控除量=廃止年度の割当量×(廃止日から当該年度3月31日までの日数÷年間総日数)」となります。
Q3 災害時の調整には何が必要ですか
罹災証明書、特定非常災害指定政令、激甚災害指定政令、災害救助法適用の公示等の公的な根拠書類が必要となります(マニュアル2.6.2(3)。証憑類の例示は2.4.3(3)を参照)。自己申告のみでは調整は認められません。また、高圧ガス保安法第35条第1項に規定する特定施設として保安検査(開放検査に限る)を実施した場合は、定常運転に復帰した月以前の5か月間を検査期間とみなして月割り計算を行う特例措置が別途用意されています。
Q4 M&Aの場合は通常の新設・廃止と同じ扱いですか
異なります。組織再編に特有の基準活動量や基準排出量の引継ぎルールが適用されるため、合併等に関する手続きを確認する必要があります。
新設廃止調整 全体像
GX-ETS排出目標量の調整措置の全体像については、5つの措置を包括的に解説した記事をご覧ください。
新設廃止調整 まとめ
新設・廃止・災害時の調整は、事業構造の変化に排出目標量を適合させるための基本的な措置です。新設は操業開始年度に新設日以降の日割り換算で加算、廃止は廃止年度の割当量を廃止後日数で日割り計算して翌年度に控除という形になります。タイミングを正確に把握し、M&Aを含む組織再編がある場合は特有の引継ぎルールを確認することが重要です。変化のある年度は登録確認機関への確認事項も増えるため、早めの準備をSSPとして推奨します。


