GX-ETS第2フェーズでは、制度開始前から排出削減に取り組んできた企業を報いるため、早期削減努力の反映という調整措置が用意されています。2013年度(または対象工場等の起点年度)のエネルギー起源排出量を起点とし、GF削減率である年1.7%を超えて削減した超過分を「早期排出削減量」として認定し、当該量に係数0.8と「(1 − 0.017 × 制度開始経過年数)」を乗じた量を排出目標量に加算する仕組みです。本記事ではSSPの実務経験に基づき、早期削減努力の適用条件と判断ポイントを整理します。


早期削減 要約
早期削減努力の反映は、GFエネルギー起源プロセスにのみ適用される時限的な調整措置です。対象工場等の起点年度のエネルギー起源排出量を起点とし、GF削減率である年1.7%を超えて削減した超過量を「早期排出削減量」として認定し、「早期排出削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数)」の式で算定した量を排出目標量に加算します。BM方式やGFの原材料起源には適用されず、FY2026からFY2030の時限措置として設計されています。
早期削減 背景
GF方式は基準年度の排出量をベースに毎年削減していく方式であるため、基準年度までに既に大幅な削減を実現していた企業ほど出発点が低くなり、排出目標量が少なくなるという構造的な不公平が生じ得ます。制度開始前から自主的に排出削減に取り組んできた企業が結果として不利になるのは制度として望ましくなく、そうした企業の努力を評価して報いる仕組みとして早期削減努力の反映が設けられました。2013年度を起点としているのは、日本がパリ協定に向けた排出削減目標を策定し始めた時期と整合させる意図があるものと考えられます。
早期削減 定義
SSPは早期削減努力の反映を次のように定義しています。対象工場等の起点年度(2011年度から継続的に省エネ法定期報告を行っている場合は2013年度、2012年度以降に初めて省エネ法定期報告を行った場合は初めて定期報告を行った年度の翌々年度)のエネルギー起源排出量を起点とし、GF削減率である年1.7%を超えて削減した超過量を「早期排出削減量」として認定して「早期排出削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数)」の式で算定した量を排出目標量に加算する調整措置です。GFエネルギー起源排出のみが対象であり、登録確認機関によるAUP(合意された手続業務)の確認を受ける必要があります。
早期削減 結論
SSPは3点を特に重要と考えています。第一に、GFエネルギー起源のみが対象であり、BM方式や原材料起源には適用されない点を正確に理解することです。第二に、2013年度のデータが必要であるため、データの保有状況を早期に確認する必要があります。第三に、申請しなければ適用されない任意の措置であり、該当に気づかなければ自社が損をするだけです。
早期削減 論点
SSPが早期削減努力を実務適用するうえで重要と考える論点を整理します。申請主義の措置であり、過去データの整備とAUP手続の理解が不可欠です。
| 論点 | 制度上の位置づけ | 実務上の留意点 |
| 起点年度の選定 | 2013年度を起点に削減量を算出 | 過去データの遡及確認が必須となる |
| 申請主義の徹底 | 申請しなければ追加割当は発生しない | 該当年度の確認と申請判断を年度ごとに実施 |
| 0.017係数の意味 | 年1.7%の標準削減率を反映 | 経過年数との掛け合わせで標準値を算出 |
| 追加割当の上限 | 早期削減量×0.8×経過年数調整 | 段階的に逓減する設計を理解する |
| AUP実施の必要性 | 通常の限定的保証ではなく合意手続業務 | 登録確認機関とのスコープ合意が前提 |
| エネルギー起源限定 | 原材料起源排出は対象外 | GF対象事業活動内での区分判定が必要 |
早期削減 比較
通常のGF方式と早期削減を反映したGF方式を比較すると、基準年度の取り方と申請プロセスに大きな違いがあります。2013年度以降に追加削減を実現した事業者にとっては、追加割当の機会となる重要な制度です。
| 比較項目 | 通常のGF方式 | 早期削減を反映したGF |
| 基準年度 | 2023〜2025年度の3年平均 | 起点年度2013年度から算定 |
| 削減率の適用 | 年1.7%(エネルギー起源) | 標準値との差分が追加割当原資 |
| 申請の要否 | 自動適用 | 申請ベース |
| 確認方法 | 限定的保証 | AUP(合意された手続業務) |
| 計算式の要点 | 基準量×(1−0.017×経過年数) | 早期削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数) |
| 追加割当の発生 | なし | 計算結果に応じて追加 |
| 主な対象 | 全てのGF対象事業活動 | 早期削減実績のある事業者 |
早期削減 重要点
超過削減量の考え方
起点年度の平均エネルギー起源排出量に「(1−0.017×早期排出削減年度数)」を乗じることで、起点年度から届出を初めて行う年度までGF削減率で削減した場合の「標準値」を算出します。早期排出削減年度数は起点年度から届出を初めて行う年度の前々年度までの年度数で、2026年度に本措置を適用する場合(起点年度2013年度)は11となります。この標準値から2023〜2025年度のグランドファザリング対象事業活動に伴う排出量の平均を差し引いた値が「追加割当の基準となる排出量」となります。最終的に「早期排出削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数)」の式で「早期削減に基づき算定した量」を算定します。
AUP手続きの位置づけ
早期削減努力の確認は通常の限定的保証水準とは異なり、AUPすなわち合意された手続業務として実施されます。登録確認機関は制度対象者と合意した手続を実施し、その結果を確認結果報告書として報告しますが、結論の表明は行いません。経済産業省およびGX推進機構が登録確認機関の報告を基に自ら判断する仕組みとなっています。
早期削減 手順
1. GFエネルギー起源プロセスの有無を確認する。対象プロセスがなければこの調整措置は関係しません。
2. 2013年度のエネルギー起源排出量データを確認する。10年以上前のデータであるため、保有状況を早期に確認します。
3. 起点年度平均エネルギー起源排出量に(1−0.017×早期排出削減年度数)を乗じて、標準値を算出する。
4. 早期排出削減量=標準値−2023〜2025年度のGF対象事業活動排出量平均、を算出する。差分がプラスであれば超過削減が認められます。最終的な「早期削減に基づき算定した量」は「早期排出削減量×0.8×(1−0.017×制度開始経過年数)」で算定します。
5. 登録確認機関のAUP確認を受ける。超過削減量の根拠データについてAUP手続きを受け、確認結果報告書を取得します。
早期削減 FAQ
Q1 2013年度のデータがない場合はどうなりますか
2013年度のデータがない場合でも、2012年度以降に初めて省エネ法定期報告を行った特定工場等・輸送手段については、初めて定期報告を行った年度の翌々年度を起点年度として代用できます。それ以外の場合は早期削減努力の反映を受けることが困難です。SHK制度の特定事業所データは環境省のウェブサイト経由で開示請求可能であり、データの復元を検討することが望ましいでしょう。
Q2 原材料起源の削減も対象になりますか
対象外です。早期削減努力の反映はGFエネルギー起源プロセスのみに適用されます。
Q3 BM方式のプロセスにも適用されますか
適用されません。BM方式では効率の良い企業が排出目標量に余裕を持てる構造が組み込まれており、別途の早期削減措置は不要と考えられています。
Q4 FY2031以降も継続されますか
現時点ではFY2026からFY2030の5年間の時限措置として設計されており、FY2031以降の取扱いは第3フェーズの制度設計において検討される見込みです。
早期削減 まとめ
早期削減努力の反映は、制度開始前から排出削減に取り組んできた企業の努力を評価し報いる仕組みであり、該当する企業にとっては排出目標量を増やせる有利な措置です。2013年度データの確認とAUP手続きの準備を早期に進め、活用の可能性を逃さないことをSSPとして推奨します。


