【GX-ETS】 発電ベンチマーク 燃種別加重平均と非化石混焼補正を解説

GX-ETS第2フェーズの発電ベンチマークは、燃種別の目指すべき排出原単位と全火力平均の目指すべき排出原単位を加重平均して排出目標量を算出する方式です。対象となるのは発電事業者の小売電気事業等の用に供する電力(所内消費含む)であり、加重比率αは年度ごとに変化し、2026年度0%・2029年度20%・2030年度40%へと段階的に引き上げられます。本記事ではSSPの実務経験に基づき、発電BMの仕組み、非化石燃料混焼の補正係数、加重比率αの変化がもたらす実務上の影響を整理します。

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目次

発電ベンチマーク 要約

発電ベンチマークは、全火力平均の目指すべき排出原単位にαを掛けた値と、燃種別(石炭・LNG・石油等)の目指すべき排出原単位に(1−α)を掛けた値を合算して発電BM水準を算出し、これに基準活動量(非化石燃料混焼比率を補正した発電電力量)を掛けて排出目標量を求める方式です。αは2026年度0%・2027年度0%・2028年度0%・2029年度20%・2030年度40%と段階的に引き上げられ、石炭火力とLNG火力の排出目標量の差が徐々に縮小していく設計です。発電BM対象は発電事業者が小売電気事業等の用に供する発電電力量で、所内消費含む(発受電月報の「自家消費」欄計上分は除外)。沖縄島と沖縄以外で別系統の目指すべき原単位が定められ、合計8算定式(沖縄以外4+沖縄4)となっています。

発電ベンチマーク 背景

発電事業はCO2排出量が極めて大きいセクターであり、使用する燃料の種類によって排出原単位が大きく異なります。石炭火力はLNG火力の約2倍のCO2を排出するため、全ての発電所に同一のBM値を適用すると石炭火力に過度な負担がかかる一方、燃種別に完全に分けてしまうと燃料転換のインセンティブが働きません。こうした課題を踏まえ、発電BMでは燃種別BM値と全火力平均BM値を加重平均する折衷的な仕組みが採用されました。初年度(2026年度)は燃種別100%からスタートし、2029年度に全火力平均20%、2030年度に40%と徐々に全火力平均の比率を高めていくことで、段階的に燃料転換のインセンティブを強化していく設計です。

発電ベンチマーク 定義

SSPは発電ベンチマークを次のように定義しています。全火力平均の目指すべき排出原単位と燃種別(石炭・LNG・石油等)の目指すべき排出原単位を、年度ごとに変化する比率αで加重平均して発電BM水準を算出し、これに基準活動量(非化石燃料混焼比率を補正した発電電力量)を掛けて排出目標量を求める方式です。比率αは2026〜2028年度0%、2029年度20%、2030年度40%と段階的に引き上げられます。対象は発電事業者の小売電気事業・一般送配電事業・配電事業・特定送配電事業の用に供する発電電力量で、所内消費分も含めて算定対象に含めますが、発受電月報の「自家消費」欄計上分・特定供給による自己託送分は対象外です。

発電ベンチマーク 結論

SSPは発電BMの適用にあたって3点を特に重要と考えています。第一に、発電BMの対象範囲を正確に理解することです。「売電分のみ」という単純化は不正確で、正しくは「小売電気事業等の用に供する発電電力量(所内消費含む)」であり、自家消費(発受電月報の「自家消費」欄)と特定供給による自己託送は対象外、それ以外(所内消費)は対象に含めるのが正確な整理です。第二に、比率αの年度推移を中期的な視点で理解することです。2026年度0%、2029年度20%、2030年度40%という段階的引き上げにより、石炭火力の排出目標量は2029年度以降減少していきます。第三に、非化石燃料混焼補正の式を正確に適用することです。2026年4月8日改訂で補正係数②の式が修正されており、正しくは「1+{1÷(1−非化石燃料混焼比率)}×0.2」です。

発電ベンチマーク 比較

割当年度α(全火力比率)燃種別比率(1-α)
2026年度0%100%
2027年度0%100%
2028年度0%100%
2029年度20%80%
2030年度40%60%

発電ベンチマーク 重要点

比率αの変化がもたらす実務上の影響

比率αは「全火力平均のBM値をどれだけ混ぜるか」を示す比率であり、αが上がるほど石炭火力とLNG火力の排出目標量の差が縮まっていきます。2026〜2028年度のα=0%では石炭火力は石炭のBM値で、LNG火力はLNGのBM値で評価されるため、燃種間の差がそのまま反映されます。2029年度にα=20%、2030年度にα=40%となると、石炭火力の排出目標量は減少し、LNG火力の排出目標量はわずかに増加する方向に動きます。石炭火力の比率が高い発電事業者にとっては、2029年度以降に排出枠の余裕が縮小していくことを意味します。設備投資計画や燃料調達計画を策定するうえで、このαの変化を織り込んだシミュレーションが欠かせません。

非化石燃料混焼補正の正しい式(2026年4月8日改訂版)

活動量の算出では非化石燃料混焼比率の補正係数が重要です。補正係数は以下の2式のうち小さい方を採用します(2026年4月8日改訂版)。

① 1÷(1−非化石燃料混焼比率)
② 1+{1÷(1−非化石燃料混焼比率)}×0.2

非化石燃料混焼比率は、投入した非化石燃料の熱量を全燃料の熱量で除して算出し、いずれも高位発熱量を用います。なお、2026年3月30日公表時点の旧式②は「1+(1−非化石燃料混焼比率)×0.2」でしたが、2026年4月8日改訂で上記のとおり修正されました。一つの発電設備で複数燃料を混焼し、複数の算定式が適用される場合は、全ての燃料種について本補正を行います。

発電BM対象範囲(所内消費を含む)

発電BMの対象は、小売電気事業、一般送配電事業、配電事業または特定送配電事業の用に供するための発電電力量で、所内消費分も含めて算定対象に含めます。一方、以下は活動量に含めません。

  • 非化石燃料による発電電力量(化石燃料と混焼している場合は按分して除く)
  • 発受電月報の「自家消費」欄に計上する発電電力量(自己の消費に供する電力量・特定供給等の自己託送に該当する電力量)

発電端電力量から所内電力量を差し引いたものが送電端ですが、所内電力量は発電BMの対象に含めるのに対し、自家消費(事業所の他の用途で消費する電力量)は対象外です。両者を混同しないことが重要です。

沖縄島と沖縄以外の2系統

発電BMは沖縄以外と沖縄島の2系統で別の目指すべき原単位が設定されており、合計8算定式(沖縄以外4+沖縄4)となっています。沖縄島では石炭・LNG・石油等の目指すべき原単位が2026〜2028年度まで同値で据え置かれ、2029年度以降に石炭が漸減・LNGと石油等の挙動が変化する設計です。全火力の沖縄島は2026〜2030年度まで0.0007137 tCO2/kWhで固定です。事業者内に沖縄以外と沖縄島の両方の発電所がある場合は、別々に算定して合算します。

発電ベンチマーク 手順

  1. 自社の発電設備を特定し、発電事業者該当性を確認する。
  2. 発受電月報に基づき、対象となる発電電力量(小売電気事業等の用に供する分、所内消費含む)と対象外の自家消費分を区分する。
  3. 各発電設備の主燃料を前年度の熱量実績で確定する(非化石燃料・副生燃料を除いた燃料のうち熱量最大)。
  4. 沖縄以外と沖縄島の区別を含めて算定単位を固める。
  5. 2023〜2025年度の3年平均の発電電力量(非化石燃料混焼比率を補正したもの)を算出する。
  6. 副生燃料による発電は全火力区分で算定し、別途副生燃料起源排出量を算定する。
  7. 燃種別BM値と全火力平均BM値を、年度ごとのα(2026〜2028=0%、2029=20%、2030=40%)で加重平均してBM水準を算出する。
  8. 排出目標量=目指すべき原単位×基準活動量を算定する。
  9. 登録確認機関の確認を受ける。

発電ベンチマーク FAQ

Q1 比率αは2030年度に何%になりますか

2030年度のαは40%です。年度別のαは2026年度0%、2027年度0%、2028年度0%、2029年度20%、2030年度40%です。これにより全火力平均水準への収束が段階的に進みます。なお2026年3月30日公表時点の事前資料では2030年度α=20%とされていた可能性がありますが、最新マニュアルでは40%が正しい値です。

Q2 発電BMの対象は「売電分のみ」ですか

「売電分のみ」という表現は不正確です。正しくは「小売電気事業、一般送配電事業、配電事業または特定送配電事業の用に供するための発電電力量(所内消費含む)」が対象で、発受電月報の「自家消費」欄に計上する電力量(自己消費・特定供給による自己託送)は対象外です。所内消費分は発電BMの対象に含めるのに対し、自家消費(事業所の他の用途で消費する電力量)は対象外という区別が重要です。

Q3 非化石燃料を混焼している場合の補正は

補正係数は2つの式のうち小さい方を採用します。① 1÷(1−非化石燃料混焼比率)、② 1+{1÷(1−非化石燃料混焼比率)}×0.2。非化石燃料混焼比率は、投入した非化石燃料の熱量を全燃料の熱量で除して算出し、高位発熱量を用います。2026年4月8日改訂で②の式が修正されているため、旧式(1+(1−混焼比率)×0.2)を使用しないよう注意してください。

Q4 自家発電で全量を所内消費している場合は発電BMの対象ですか

所内消費(発電所の所内電力としての消費)は発電BMの対象に含まれます。一方、発電所以外の場所で自家消費する場合(事業所内の他工場で使う等の自家消費・自己託送)は対象外で、工場のBMまたはGFに含めて計算します。発電事業者該当性の判定(出力1000kW以上、託送契約上の同時最大受電電力5割超、年間逆潮流量5割超など)も合わせて確認する必要があります。

Q5 副生燃料による発電はどう算定しますか

副生燃料による発電は、主燃料区分に関わらず「全火力」の算定式で排出目標量を算定したうえで、別途副生燃料起源排出量を加算します。副生燃料とは、他者や自社の他工程から供給された副生燃料に限ります。詳細は届出・排出目標量等算定マニュアル第Ⅱ部2.3.2「(3)副生燃料起源排出量」を参照してください。

Q6 沖縄島と沖縄以外の両方を保有する場合は

事業者単位で排出目標量を算定しますが、目指すべき原単位は沖縄以外と沖縄島で別の値を用いるため、両系統の発電所について別々に算定し、合算する運用となります。沖縄島の全火力は2026〜2030年度まで0.0007137 tCO2/kWhで固定、石炭・LNG・石油等は2026〜2028年度据え置きで2029年度以降に変動という独自の設計です。

発電ベンチマーク まとめ

発電ベンチマークは、燃種別BM値と全火力平均BM値の加重平均という独自の仕組みを持つ算定方式であり、燃料転換のインセンティブを段階的に強化する政策意図が組み込まれています。比率αは2026〜2028年度0%、2029年度20%、2030年度40%へと変化していくため、石炭火力の比率が高い事業者は中期的な対応計画の策定が不可欠となります。対象は発電事業者の小売電気事業等の用に供する発電電力量(所内消費含む)で、自家消費・自己託送は対象外です。非化石燃料混焼補正の式は2026年4月8日改訂で更新されており、正しい式「1+{1÷(1−非化石燃料混焼比率)}×0.2」を使用することが重要です。

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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