【GX-ETS】 副生燃料の別枠計算 使用側ルールと供給側控除を解説

GX-ETS第2フェーズでは、高炉ガスやコークス炉ガスなどの副生燃料は、ベンチマーク方式またはグランドファザリング方式の本体計算に加えて、別途の枠組みで排出目標量を算定する仕組みが設けられています。原則として副生燃料を「使用」する側がカウントしますが、高炉上工程・カーボンブラック製造業など目指すべき原単位が副生燃料全量自家消費前提で算定されている特定の事業活動からの外部供給時には、供給側で控除する特殊ルールがあります。本記事ではSSPの実務経験に基づき、副生燃料の別枠計算の正しい考え方と実務上の判断ポイントを整理します。

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目次

副生燃料別枠 要約

副生燃料とは、事業の過程において化学的変換等によって目的物を得る際に不可避的に発生する目的物以外の物質であって、燃料以外の用途に用いるために技術的・経済的困難を伴うものをいいます。GX-ETSにおいては、石油コークス(国内生産分)、コークス炉ガス、高炉ガス、発電用高炉ガス、転炉ガス、その他製造工程における副産物として発生した燃料が該当します。原則として副生燃料を使用する側が排出量を計上しますが、高炉上工程・カーボンブラック製造業のように目指すべき原単位が副生燃料全量バウンダリ内燃焼前提で算定されている事業活動から外部供給する場合には、供給側で控除する特殊ルールがあります。年0.3%の削減率を適用した別枠GF方式で排出目標量を算定します。

副生燃料別枠 背景

副生燃料を別枠で扱う背景には、目指すべき原単位の算定設計と、二重計上の回避という2つの要請があります。第1に、高炉上工程やカーボンブラック製造業のような事業活動では、副生燃料が全量バウンダリ内で燃焼することを前提に目指すべき原単位が算定されており、その前提が崩れる(外部供給する)場合には供給側で控除しないと整合性が取れません。第2に、副生燃料を外販した場合、使用先(受取側)でも当然その燃料の燃焼に伴う直接排出が発生するため、その分は使用側の排出として計上する必要があります。これにより排出責任が適切に分担され、二重計上を回避しつつ実態に即した排出管理が可能となります。

副生燃料別枠 定義

SSPは副生燃料の別枠計算を次のように定義しています。事業の過程で不可避的に発生する燃料以外の用途への利用が技術的・経済的に困難な副産物(コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス、石油コークス、その他副生油・副生ガス等)について、製品BM・燃料BM・GFのいずれの本体計算からも切り分けて、別枠で排出目標量を算定する仕組みです。算定は使用側が主体となり、高炉上工程・カーボンブラック製造業など特定の供給側事業活動では別途控除量を算定します。

副生燃料別枠 結論

SSPは副生燃料の別枠計算において3点を特に重要と考えています。第一に、副生燃料を「使用」する側が排出量を計上するのが原則であり、「発生元(供給側)がすべてカウントする」というよくある誤解を避けることです。第二に、高炉上工程・カーボンブラック製造業のように目指すべき原単位が副生燃料全量自家消費前提で算定されている事業活動では、外部供給時に供給側で控除する特殊ルールがある点を正確に理解することです。第三に、副生燃料が発生する事業者は、自家消費・他工程供給・外部供給の3区分で正確に把握する必要があります(特に高炉上工程・カーボンブラック製造業の場合は供給側控除の根拠データとして必須)。

副生燃料別枠 重要点

基準副生燃料起源排出量は、以下の①②の合計から③を減じた量について基準年度の各年度の平均として算定します。

①製品BM対象事業活動における副生燃料使用に係る量

算定式は「副生燃料使用量×(副生燃料の排出係数−業種平均排出係数×0.85)」
対象は洋紙、板紙、ソーダ、石油化学系基礎製品、石油精製、板ガラス、ガラスびん、セメント、石灰のエネルギー起源、電炉普通鋼上、電炉特殊鋼上、アルミ上、アルミ下、自動車、発電(沖縄以外・沖縄)の各事業活動。

②燃料BM対象事業活動およびGF対象事業活動における副生燃料使用に係る量

算定式は「副生燃料使用量×副生燃料の排出係数」
①に該当しないベンチマーク対象事業活動およびGF対象事業活動が対象。

③特定のBM対象事業活動からの副生燃料供給に係る量

算定式は「副生燃料供給量×副生燃料の排出係数」
高炉上工程・カーボンブラック製造業から他の工程や他者に供給した副生燃料が対象(供給側の排出目標量から控除する)。

「使用側が原則」の意味

①②に明示されているとおり、副生燃料を「使用」した側がカウントするのが基本原則です。例えば自社工場内で発生したコークス炉ガスを自社の他工程で消費する場合、消費した工程側の事業活動分類に応じて①または②の算定式を適用します。他社にコークス炉ガスを売却した場合は、売却先(受取側)が自社の事業活動の中で消費した分を計上する整理です。「発生元がすべてカウントし、受取側はカウントしない」というのは誤りで、実際は使用側が主体となります。

高炉上工程・カーボンブラックの特殊ルール

高炉上工程(銑鉄製造)およびカーボンブラック製造業の2つの事業活動については、目指すべき原単位が「副生燃料が全量バウンダリ内で燃焼している前提」で算定されています。このため、これらの事業活動で発生した副生燃料を他工程・他者に供給した場合、供給側の排出目標量から③の算定式「副生燃料供給量×副生燃料の排出係数」で求めた量を控除する必要があります。供給側で控除すると同時に、使用側でも当該副生燃料の使用に伴う排出を計上するため、結果として副生燃料の責任が適切に分担される設計です。

副生燃料別枠 比較

パターン該当事業活動算定式備考
① 製品BM使用主な製品BM(カーボンブラック・石灰・高炉上工程・道路貨物運送・内航海運・航空運送を除く)使用量×(排出係数−業種平均排出係数×0.85)業種平均との差分相当を加算
② 燃料BM・GF使用有機化学・ゴム製品・高炉下工程・電炉普通鋼下工程・電炉特殊鋼下工程の燃料BM、GF対象事業活動全般使用量×排出係数使用側で計上
③ 高炉上工程・カーボンブラック製造業からの供給高炉上工程、カーボンブラック製造業供給量×排出係数供給側の排出目標量から控除

副生燃料別枠 手順

  1. 自社事業活動内で副生燃料が発生するかを洗い出す(高炉ガス・コークス炉ガス・転炉ガス・石油コークス・その他副生油等)。
  2. 各副生燃料の使用先を「自社内自家消費」「自社他工程供給」「外部(他者)供給」の3区分で整理する。
  3. 副生燃料を使用する事業活動を特定し、その事業活動が①製品BM対象、②燃料BM・GF対象のどちらに該当するかを判定する。
  4. 該当する算定式(①または②)を用いて基準排出量の各年度の量を算定する。
  5. 高炉上工程・カーボンブラック製造業の事業活動を保有し、当該事業活動で発生した副生燃料を他工程・他者に供給している場合は、③の算定式で控除量を算定する。
  6. ①+②−③で基準副生燃料起源排出量(3年平均)を求める。
  7. 排出目標量=基準副生燃料起源排出量×(1−0.003×経過年数)で算定する。
  8. 登録確認機関の確認を受ける。

副生燃料別枠 FAQ

Q1 副生燃料はどのように定義されますか

事業の過程で化学的変換等によって目的物を得る際に不可避的に発生する目的物以外の物質であって、燃料以外の用途に用いるために技術的・経済的困難を伴うものを指します。具体的には石油コークス(国内生産分)、コークス炉ガス、高炉ガス、発電用高炉ガス、転炉ガス、その他製造工程における副産物として発生した燃料(FCCコーク、タール・ピッチ類、石油アスファルト、ナフサクラッカーにおける分解重油、その他有機化学製品製造工程における副生油、石油精製や有機化学製品製造における副生炭化水素ガス等)が該当します。なお、使用済み潤滑油や廃溶剤等のように、燃料以外の目的で使用したものを廃棄する際に燃料として利用する場合は、副生燃料ではなく廃棄物の燃料利用として扱われます。

Q2 副生燃料の排出は誰がカウントするのですか

原則として「使用」する側がカウントします。マニュアル2.4.4(2)の①②に明示されているとおり、副生燃料を消費した工程の事業活動分類に応じて算定式を適用し、使用側の基準排出量に含めます。ただし、高炉上工程・カーボンブラック製造業の2事業活動については、目指すべき原単位が副生燃料全量バウンダリ内燃焼前提で算定されているため、外部供給した場合は供給側で控除(③)し、使用側でも算定(①または②)する整理になります。

Q3 廃棄物を燃料として使った場合も別枠計算の対象ですか

対象ではありません。廃棄物の原燃料利用に伴う排出は制度上除外されており、別枠計算の対象にもなりません。副生燃料と廃棄物の原燃料利用は全く異なる概念として区別する必要があります。なお、使用済み潤滑油や廃溶剤等は副生燃料ではなく廃棄物として扱われます。

Q4 高炉上工程と他の事業活動を併存する場合の整理は

同一工場内に高炉上工程と高炉下工程が併存し、上工程で発生したコークス炉ガス・高炉ガス・転炉ガスを下工程で消費している場合、上工程からの供給量について③で控除し、下工程での使用量について②(高炉下工程は燃料BM)で加算します。マニュアルの例2では「高炉下工程ベンチマーク:80,000×0.09=7,200(使用側で加算)、高炉上工程ベンチマーク:100,000×0.09=9,000(供給側で控除)→基準副生燃料起源排出量=7,200−9,000=−1,800」のように負の値となるケースもあります(負の値も合計値に算入)。

Q5 業種平均排出係数の0.85倍とは何ですか

製品BM対象事業活動(①)で副生燃料を使用する場合の算定式は「副生燃料使用量×(副生燃料の排出係数−業種平均排出係数×0.85)」です。これは、製品BMの目指すべき原単位に業種平均的な燃料構成(=業種平均排出係数)の0.85倍相当が既に織り込まれているため、副生燃料を使用する場合はその差分相当を加算する設計です。業種平均排出係数はマニュアル2.4.4(2)①の表に業種ごとに規定されています(例:洋紙0.0417、板紙0.0731、ソーダ製造業0.0840 tCO2/GJ等)。

Q6 削減率が0.3%と低いのはなぜですか

副生燃料は製造の副産物として不可避的に発生するものであり、その発生自体を大幅に削減することは技術的に困難なためです。原材料起源排出と同じ考え方で低い削減率(年0.3%)が設定されています。一方、エネルギー起源排出は年1.7%の削減率が適用されます。

副生燃料別枠 まとめ

副生燃料の別枠計算は、製造プロセスから不可避的に発生する副産物の燃料利用について、適切な排出責任の分担を実現するための重要な仕組みです。基本原則は「使用側がカウント」であり、高炉上工程・カーボンブラック製造業のように目指すべき原単位が副生燃料全量自家消費前提で算定されている事業活動では、外部供給時に供給側で控除する特殊ルールが適用されます。3つの算定パターン(①製品BM使用、②燃料BM・GF使用、③特定BMからの供給控除)を正確に理解し、自家消費・他工程供給・外部供給の3区分で正確な計量と区分けを行うことが算定全体の正確性を確保する前提条件です。早期に登録確認機関との確認に向けた準備を進めることをSSPとして推奨します。

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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