【GX-ETS】 早期削減量のAUP 合意された手続を解説

GX-ETSの早期排出削減量に対する確認は、通常の限定的保証とは異なるAUPすなわち合意された手続業務として実施されます。登録確認機関は結論を表明せず、合意した手続の実施結果のみを報告する形式です。本記事ではSSPの実務経験に基づき、AUPの仕組みと通常の確認業務との違いを整理します。

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目次

AUP 要約

AUP(Agreed-Upon Procedures)は、GX-ETSにおいて早期排出削減量の確認に適用される手続形式です。限定的保証や合理的保証とは根本的に異なり、登録確認機関は自ら結論を表明しません。代わりに、制度対象者と合意した手続を実施し、その実施結果のみを報告します。想定利用者である経済産業省やGX推進機構が結果を受け取り、自ら判断を行う仕組みとなっています。ISO 14064-3やISRS 4400等の国際基準に基づいて実施されます。

AUP 背景

早期排出削減量は、GX-ETS第2フェーズの開始に先立ち制度対象者が自主的に削減した排出量を制度上の枠組みで認定する仕組みです。この削減量は通常の排出目標量や排出実績量とは性質が異なり、過去の排出データに基づく算定となるため、同じ限定的保証の枠組みでは対応が困難な面があります。

こうした事情を踏まえ、早期排出削減量の確認にはAUPが採用されました。AUPは国際的にも温室効果ガス関連の業務で広く用いられている手続形式であり、手続内容を当事者間で柔軟に設計できる点が特徴です。

注目すべきは、AUPにおいて登録確認機関が保証の結論を表明しない点にあります。このため想定利用者には高い専門知識と判断能力が求められ、経済産業省とGX推進機構がその役割を担うことになっています。

AUP 定義

SSPではAUPを次のように定義しています。

AUP(Agreed-Upon Procedures、合意された手続業務)とは、登録確認機関が制度対象者との合意に基づき特定の手続を実施し、事実の発見事項のみを報告する業務形式を指します。確認機関は保証の結論を表明せず、手続の結果から何らかの判断を導くことは想定利用者の責任となります。

AUPは保証業務ではないという点が本質的な特徴です。限定的保証では「虚偽表示が認められなかった」という結論を表明するのに対し、AUPでは「合意した手続を実施した結果、以下の事実が発見された」という形式で報告が行われるにとどまります。

AUP 結論

AUPについて企業が理解すべき重要なポイントは以下のとおりです。

第一に、AUPは保証業務ではないため、確認結果報告書に保証の結論が含まれない点を認識する必要があります。報告書には手続の内容と実施結果のみが記載され、排出削減量の適正性についての意見は表明されません。

第二に、手続の内容は制度対象者と登録確認機関の間で事前に合意される必要があり、その合意内容が報告書に明確に記述されます。手続の範囲が曖昧な場合、報告書の有用性が低下する恐れがあるため、合意の段階から慎重な検討が求められるでしょう。

第三に、AUPの結果を受けて判断を行うのは想定利用者であるという点を理解しておくべきです。制度対象者としては手続に必要な情報と書類を正確に提供し、合意した手続が円滑に実施される環境を整えることが最善の対応策となります。

AUP 論点

AUPに関する主要な論点を以下に整理しました。

論点カテゴリどの領域で重要度判断のポイント
結論を表明しない業務の性質AUPの根本原則保証業務ではなく事実の発見事項のみを報告する点を理解する
手続の合意プロセス業務設計契約・計画段階手続の内容を明確に記述し制度対象者と確認機関が合意する
想定利用者の判断利用者責任結果の活用経済産業省とGX推進機構が結果に基づき自ら判断を行う
適用基準国際基準業務の準拠枠組みISO 14064-3またはISRS 4400等に基づいて実施される
確認結果報告書の記載報告書形式報告書の構成手続の内容と実施結果および発見事項が記載される

AUP 比較

限定的保証とAUPの違いを体系的に比較します。

比較項目限定的保証AUP(合意された手続)
業務の性質保証業務保証業務ではない
結論の有無消極的形式の結論を表明結論を表明しない
手続の決定確認機関が専門的判断で決定制度対象者と確認機関が合意で決定
報告の内容確認の結論と根拠手続の内容と事実の発見事項のみ
判断の主体登録確認機関想定利用者(経産省・GX推進機構)
GX-ETSでの適用対象排出目標量・排出実績量早期排出削減量

AUP 重要点

AUPの実務上特に重要な2つのテーマについて解説します。

手続の合意方法

AUPにおいて手続の内容は、制度対象者と登録確認機関の間で業務の開始前に明確に合意される必要があります。合意すべき事項には、実施する手続の具体的な内容、対象とするデータの範囲、サンプリングの方法、報告書における発見事項の記述方法などが含まれます。

手続の記述は具体的かつ客観的であることが求められ、曖昧な表現は避けるべきです。たとえば「排出データを検討する」ではなく「特定の事業所における2024年度の燃料購買伝票と排出量計算シートを突合する」といった水準の具体性が必要となります。

また、想定利用者の要望も手続設計に反映されるのが一般的な進め方です。経済産業省やGX推進機構が確認したい項目を事前に把握し、それに対応する手続を設計することで報告書の有用性が高まるでしょう。

確認結果報告書の位置づけ

AUPの確認結果報告書は、限定的保証の確認報告書とは根本的に性質が異なります。保証の結論が含まれないため、報告書を受け取った想定利用者が自ら判断を行う必要があるのです。

確認結果報告書には、合意された手続の内容、各手続の実施結果、発見された事実が客観的に記載されます。登録確認機関が主観的な評価や推奨事項を記載することは原則として行われません。

制度対象者としては、確認結果報告書が想定利用者の判断材料となることを意識し、手続の実施に必要な情報を正確かつ網羅的に提供することが重要です。報告書における発見事項が少ないほど、早期排出削減量の認定に有利に働く可能性が高いと考えられます。

AUP 手順

AUPの業務は概ね以下のステップで進行します。

ステップ1 業務の受嘱と手続の合意

登録確認機関が業務を受嘱し、制度対象者との間で実施する手続の内容を具体的に合意します。想定利用者の確認事項も考慮したうえで手続を設計する流れとなります。

ステップ2 必要書類と情報の収集

合意された手続の実施に必要なデータ、書類、証憑を制度対象者から収集します。早期排出削減量に係る過去の排出データや算定根拠が中心となるでしょう。

ステップ3 合意された手続の実施

合意内容に沿って手続を実施し、発見された事実を記録します。手続は合意された範囲に厳密に限定され、追加的な手続は原則として行われません。

ステップ4 発見事項の整理

手続を通じて発見された事実を客観的に整理します。発見事項は事実に基づく記述にとどめ、判断や推奨は含めないのがAUPの原則です。

ステップ5 確認結果報告書の作成と交付

合意された手続の内容、実施結果、発見事項を確認結果報告書としてとりまとめ、制度対象者と想定利用者に交付します。

AUP FAQ

Q1 AUPと限定的保証はどちらが信頼性が高いですか

両者は業務の性質が異なるため単純な比較はできません。限定的保証は確認機関が結論を表明する保証業務であるのに対し、AUPは手続の結果のみを報告する業務です。信頼性の判断は想定利用者が行うという点でAUPは異なるアプローチを取っています。

Q2 早期排出削減量以外にもAUPが適用される場合はありますか

現時点のGX-ETSでは、AUPの適用は早期排出削減量に限定されています。排出目標量と排出実績量については限定的保証が適用されるため、AUPの対象とはなりません。

Q3 AUPの手続内容はどの程度詳細に合意する必要がありますか

手続は第三者が読んでも同一の作業を再現できる水準の具体性が求められます。対象データの範囲、サンプル数、突合方法、閲覧する証憑の種類など、可能な限り具体的に記述することが望ましいでしょう。

Q4 想定利用者は誰ですか

GX-ETSにおけるAUPの想定利用者は、経済産業省およびGX推進機構です。これらの機関がAUPの確認結果報告書を受領し、早期排出削減量の認定に関する判断を行います。

Q5 AUPの費用は限定的保証と比べてどうですか

手続の範囲が合意された内容に限定されるため、一般的には限定的保証よりも低コストで実施できるケースが多いと考えられます。ただし合意する手続の範囲と深さによって費用は変動するため、一概には言えない面もあるでしょう。

AUP 全体像

AUPは、GX-ETSの早期排出削減量に特化した確認手続として位置づけられています。限定的保証とは異なり保証の結論を伴わない業務形式であるため、制度の枠組みの中で独自の役割を果たしていると理解するのが適切です。

制度対象者にとっては、AUPの手続に必要な過去の排出データと算定根拠を正確に保管・整備しておくことが最も重要な準備事項となります。合意段階での手続設計に主体的に関与し、想定利用者にとって有用な報告書が作成されるよう協力することが望まれます。

早期排出削減量の制度上の価値を最大限に活用するためにも、AUPの仕組みを正しく理解し、確認プロセスに適切に対応していくことが求められるでしょう。

AUP まとめ

GX-ETSのAUPは、早期排出削減量の確認に適用される合意された手続業務であり、通常の限定的保証とは根本的に異なる性質を持っています。登録確認機関は結論を表明せず、手続の実施結果のみを報告するため、判断は想定利用者に委ねられます。

制度対象者としては、手続の合意段階から主体的に関与し、必要な書類とデータを正確に提供することが円滑な確認プロセスの鍵となります。AUPの特性を正しく理解したうえで、早期排出削減量の認定に向けた準備を計画的に進めていくことが重要です。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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