【GX-ETS】 クレジット活用 J-CreditとJCMの条件を解説

GX-ETS第2フェーズでは、排出実績量の算定においてJ-CreditとJCMクレジットを活用することが認められています。ただし使用できるクレジットの種類や上限には厳格な制限があり、ボランタリークレジットは使用が認められていません。本記事ではSSPの実務経験に基づき、クレジット活用の条件と実務上の判断ポイントを整理します。

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目次

クレジット活用 要約

GX-ETSで使用可能なクレジットは、J-Credit(省エネルギー由来、再生可能エネルギー由来、森林経営由来)と、JCMクレジットに限定されています。使用上限は実排出量の10%であり、Gold Standard、Verraなどのボランタリークレジットは使用が認められていません。なお、森林経営由来(森林の整備及び保全により吸収された温室効果ガスの吸収量として認証されたもの)及びバイオ炭の農地施用由来(土壌に貯留された温室効果ガスの貯留量として認証されたもの) のJ-Creditを第三者に移転した場合は、排出実績量への加算対象にならないという特別な取扱いがあります。クレジットの無効化量は排出実績量から控除され、保有義務量の軽減に直接寄与します。

クレジット活用 背景

排出量取引制度におけるクレジットの活用は、排出削減の柔軟性を確保するための重要な仕組みです。自社の排出削減だけでは排出枠を確保しきれない場合に、他者の排出削減努力をクレジットとして取得し活用することで、経済的な効率性を高めることができます。

しかしクレジットの無制限な活用は、制度対象者自身の排出削減努力を弱めるリスクを伴います。このためGX-ETSでは使用できるクレジットの種類を厳格に限定し、使用量にも上限を設けることで、自社の排出削減努力と外部クレジットの活用のバランスを図っています。

制度で認められるクレジットが国内の制度的裏付けを持つJ-CreditとJCMクレジットに限定されている点も、環境十全性を重視した設計といえます。市場で流通する多様なボランタリークレジットは品質のばらつきが指摘されており、制度の信頼性を確保する観点から除外されています。

クレジット活用 定義

SSPはGX-ETSにおけるクレジット活用を次のように定義しています。制度対象者が排出実績量の算定において、J-CreditまたはJCMクレジットの無効化量を実排出量から控除することにより、報告する排出実績量を軽減する仕組みです。使用上限は実排出量の10%と定められています。

排出実績量の計算式は、算定した排出量からクレジットの無効化量を控除し、J-Creditの第三者への移転量を加算して確定されます。

クレジット活用 結論

SSPはクレジット活用において、次の3点を特に重要と考えています。

第一に、使用可能なクレジットの種類を正確に把握することが前提となります。J-Creditの省エネルギー由来、再生可能エネルギー由来、および森林経営由来が対象です。ボランタリークレジットは一切使用できません。なお、森林経営由来のJ-Creditは移転時の加算対象外となる特別な取扱いがある点にも留意が必要です。

第二に、10%の使用上限は実排出量に対する比率であり、排出目標量に対する比率ではない点に注意が必要です。実排出量が確定した時点で使用可能量の上限も確定します。

第三に、クレジットの活用は排出枠の市場調達とは別の手段である点を理解しておくべきです。排出枠の不足を補う方法としては排出枠の市場調達が基本であり、クレジットは排出実績量そのものを軽減する手段として位置づけられます。

クレジット活用 論点

論点実務での重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
使用可能なクレジットの種類J-Credit省エネ由来、再エネ由来、森林経営由来、及びJCMクレジットボランタリークレジットも使えるという誤解対象クレジットの種類を明確に限定して管理する
10%の使用上限実排出量の10%が上限。排出目標量ではない排出枠の10%まで使えるという誤解実排出量の確定後に使用可能量を算定する
森林経営由来J-Creditの移転時の特別取扱い森林経営由来J-Creditは使用可能だが、移転時に排出実績量への加算対象外となる森林管理由来は使用不可という誤解森林経営由来J-Creditの無効化と移転の違いを正確に把握する
クレジットと排出枠の違いクレジットは実績量を控除。排出枠は保有義務を充足両者は同じものという誤解それぞれの機能と活用場面を区別する
J-Creditの移転量の扱い第三者への移転量は排出実績量に加算される移転しても影響がないという誤解J-Creditの移転が排出実績量に与える影響を把握する
クレジットの取得時期報告前に無効化手続きを完了する必要がある報告後でも遡及適用できるという誤解早めにクレジットの取得と無効化手続きを進める

クレジット活用 比較

比較項目J-CreditJCMクレジット
発行主体日本政府日本政府と相手国政府の共同
排出削減の場所日本国内海外の相手国
使用可能な種類省エネルギー由来、再生可能エネルギー由来、森林経営由来。クレジット種別ER・ERL・FMが対象JCMクレジット全般
使用上限実排出量の10%に含まれる実排出量の10%に含まれる
取得方法J-Credit制度を通じて取得または市場購入JCMプロジェクトを通じて取得
特徴国内の排出削減プロジェクトに基づく途上国での排出削減に貢献しつつ自社の実績を軽減

クレジット活用 重要点

使用可能なクレジットと使用不可なクレジットの整理

GX-ETSで使用できるクレジットは厳格に限定されています。使用可能なのはJ-Creditのうち省エネルギー由来、再生可能エネルギー由来、森林経営由来の3種類(クレジット種別:ER・ERL・FM)、およびJCMクレジットです。
使用が認められていないクレジットには、Gold StandardやVerra等のボランタリークレジット、非認証クレジット、海外排出権が含まれます。既にこれらのクレジットを保有している企業であっても、GX-ETSの排出実績量の控除には使用できない点を理解しておく必要があります。なお、森林経営由来のJ-Creditには特別な取扱いがあり、自ら創出した森林経営由来J-Creditを第三者に移転した場合でも排出実績量への加算対象にはなりません。

クレジットの活用戦略と排出枠調達との関係

クレジットの活用と排出枠の市場調達は、いずれも排出枠の不足に対応する手段ですが、その機能は異なっています。クレジットは排出実績量そのものを控除する手段であり、控除後の排出実績量が保有義務量の基礎となります。一方、排出枠の市場調達は保有義務量を満たすために排出枠を追加取得する手段です。

両者を組み合わせて最適な対応を図ることも可能です。たとえば排出実績量が排出目標量を5%上回ると見込まれる場合、クレジットで実績量を控除したうえで、残りの不足分を市場調達で補うという戦略が考えられます。クレジットの市場価格と排出枠の市場価格を比較し、経済的に有利な手段を選択することが合理的な対応となります。

クレジット活用 手順

1. 自社の排出実績量の見通しを把握する。割当年度の排出状況を継続的にモニタリングし、排出目標量との過不足を早期に見積もります。

2. クレジット活用の必要性を判断する。排出枠の不足が見込まれる場合、クレジットの活用を排出枠の市場調達と合わせて検討します。

3.使用可能なクレジットの種類と量を確認する。J-Creditの省エネ由来・再エネ由来・森林経営由来(クレジット種別:ER・ERL・FM)、およびJCMクレジットが対象であり、実排出量の10%が上限となります。

4. クレジットを取得する。J-Credit制度またはJCMプロジェクトを通じてクレジットを取得します。市場購入も選択肢に含まれます。

5. 無効化手続きを完了する。報告前にクレジットの無効化手続きを行い、排出実績量から控除できる状態を確保します。

6. 排出実績量にクレジットの控除を反映して報告する。無効化量を控除し、J-Creditの移転量を加算した排出実績量を確定のうえ報告します。

クレジット活用 FAQ

Q1 ボランタリークレジットはなぜ使えないのですか

ボランタリークレジットは国際的に品質のばらつきが指摘されており、排出削減の環境十全性が制度的に担保されていないためです。GX-ETSでは制度的裏付けのあるJ-CreditとJCMクレジットのみに限定することで信頼性を確保しています。

Q2 森林経営由来のJ-Creditには特別な取扱いがあると聞きましたが、どのような内容ですか

森林経営由来のJ-Credit(クレジット種別:FM)はGX-ETSにおいて使用可能です。他のJ-Creditと同様に無効化量を実排出量から控除できます。加えて、自ら創出した森林経営由来J-Creditを第三者に移転した場合、排出実績量への加算対象にならないという特別な取扱いがあります。これは省エネ由来・再エネ由来のJ-Creditにはない優遇措置です。根拠は排出量算定・報告マニュアル第Ⅱ部第3章に記載されています。

Q3 クレジットの使用上限10%は何に対する比率ですか

実排出量に対する比率です。排出目標量や排出枠の割当量ではありません。実排出量が確定した後に使用可能量の上限が確定する仕組みとなっています。

Q4 クレジットを使えば排出枠の購入は不要になりますか

クレジットだけで不足を全て補えるとは限りません。使用上限が10%であるため、それを超える不足分については排出枠の市場調達や上限価格での清算が必要となります。

Q5 J-Creditの移転量が排出実績量に加算されるとはどういう意味ですか

J-Creditの認証を受けた排出削減量を第三者に移転した場合、その分だけ排出実績量が増加する仕組みとなっています。J-Creditを保有しつつ自社で無効化する場合は控除となりますが、他者に移転すると加算される点に注意が必要です。

クレジット活用 全体像

GX-ETS排出量算定の全体像については、5つの原則と報告手順を包括的に解説した記事をご覧ください。

クレジット活用 まとめ

GX-ETSにおけるクレジットの活用は、排出実績量を直接控除できる有効な手段ですが、使用可能なクレジットの種類と10%の使用上限という制約を正確に理解したうえで戦略的に活用する必要があります。

J-Creditの省エネ由来・再エネ由来・森林経営由来およびJCMクレジットが対象であり、ボランタリークレジットは使用不可です。森林経営由来J-Creditには移転時の加算免除という特別な取扱いがある点にも留意してください。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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