【GX-ETS】 GX-ETSと温対法の7つの違い 実務への影響を解説

GX-ETS第2フェーズと温対法は、いずれもCO2排出量の算定と報告に関わる制度ですが、対象ガス、報告単位、裾切り値の有無など7つの重要な相違点があります。温対法で培った算定の知見は活用できる一方、GX-ETS固有のルールを見落とすと制度違反や排出量の過大過少につながります。本記事ではSSPの実務経験に基づき、7つの違いとその実務への影響を整理します。

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目次

温対法との違い 要約

GX-ETSと温対法には7つの主要な相違点があります。対象ガスがCO2のみである点、間接排出が対象外である点、他者への供給電力を控除できない点、裾切り値がない点、割当区分ごとの報告が求められる点、原材料起源排出の範囲が敷地外にも及ぶ点、小数点処理方法が異なる点です。これらの違いは排出量の算定値に直接影響するため、制度ごとの正確な理解が不可欠となります。

温対法との違い 背景

多くの制度対象者は、温対法やエネルギーの使用の合理化に関する法律に基づく排出量の報告を既に行っています。そのため、GX-ETSの排出量算定においても温対法の報告値を転用できると考えがちですが、両制度の算定ルールには看過できない相違点が存在します。

温対法は温室効果ガスの排出実態を把握するための制度であり、7種類のガスを対象として間接排出も含めた包括的な報告を求めています。一方GX-ETSは排出枠の取引と償却を通じてCO2の削減を促す制度であり、直接排出のCO2のみを対象としています。制度の目的が異なるため、算定の前提条件も必然的に異なるという点を理解することが出発点となります。

温対法との違い 定義

SSPはGX-ETSと温対法の違いを、排出量の算定結果に影響を与える7つの相違点として定義しています。これらの相違点は制度の目的や設計思想の違いに起因しており、どちらか一方の制度に合わせて簡略化することはできません。両制度の報告義務は独立して存在し、それぞれ個別に対応しなければなりません。

温対法との違い 結論

SSPはこれら7つの違いへの対応において、次の3点を特に重要と考えています。

第一に、温対法の報告値をGX-ETSにそのまま転用できないという前提で算定体制を設計することです。データの収集段階から両制度の要件を並行して満たせる仕組みを構築することが効率的な対応につながります。

第二に、割当区分ごとの報告という新たな要件に早期に対応することが不可欠です。温対法の工場単位の報告体制では対応できないため、モニタリングポイントの再設計が必要となります。

第三に、裾切り値がないことの実務的な影響を軽視してはなりません。温対法では簡易計算が許容されていた小規模排出源についても、GX-ETSでは毎年算定が求められます。

温対法との違い 論点

論点実務での重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
対象ガスの範囲GX-ETSはCO2のみ。温対法は7種類温対法のデータからCO2分だけ抽出すればよいという誤解算定ルール自体が異なるため抽出だけでは不十分
間接排出の扱いGX-ETSは間接排出を含まない。温対法は含むGX-ETSでも電力使用量を報告するという誤解直接排出のみを算定対象とする
他者への供給電力の控除GX-ETSでは控除できない。温対法では控除可能自家発電の売電分は控除できるという誤解売電分の排出も含めて算定する
裾切り値の有無GX-ETSには裾切り値がない。温対法にはある小規模排出源は省略できるという誤解全ての排出源を毎年算定する
報告単位の違いGX-ETSは割当区分ごと。温対法は事業者単位工場全体の合計で報告できるという誤解割当区分ごとのモニタリング体制を構築する
原材料起源排出の範囲GX-ETSは敷地外も対象。温対法は敷地内のみ温対法と同じ範囲でよいという誤解敷地外の原材料起源排出を含めて把握する
小数点処理の違い温対法は排出活動ごとにtCO2の小数点以下を四捨五入して整数とし、それを合算する同じ処理方法でよいという誤解制度ごとの端数処理ルールを正確に適用する

温対法との違い 比較

比較項目温対法GX-ETS第2フェーズ
対象ガスCO2を含む7種類の温室効果ガスCO2のみ
間接排出対象に含む対象外
他者への供給電力控除可能控除できない
裾切り値あり。15kL未満かつ排出の1%未満は簡易計算可なし。少量でも毎年算定が必要
報告単位事業者単位事業者単位に加え割当区分単位
原材料起源の範囲工場等内のみ工場等の内外を問わず対象
小数点処理事業者単位で四捨五入割当区分単位で切り捨てたうえで合計
制度の目的排出実態の把握と公表排出枠の取引と償却によるCO2削減の促進

温対法との違い 重要点

他者への供給電力を控除できないことの影響

温対法やエネルギーの使用の合理化に関する法律では、自家発電設備から他者に供給した電力に相当する排出量を控除することが可能でした。しかしGX-ETSではこの控除が認められていません。

自家発電設備を持ち売電を行っている企業にとって、この違いは排出実績量を温対法よりも大きくする要因となります。排出枠の過不足に直結するため、排出枠の調達計画を策定する際にはこの差異を織り込んでおかなければなりません。

なお、自家発電の売電分については別途発電ベンチマークの対象となる場合があり、排出目標量の算定においても考慮が必要です。売電分の排出が控除できないという制約と、発電BMによる排出目標量の割当てという両面から対応を検討する必要があります。

割当区分ごとの報告がもたらす実務的な変化

温対法では工場単位でまとめた排出量を報告すれば足りましたが、GX-ETSではBM方式やGF方式のプロセスごとに分けた報告が求められます。この変化は単なる集計方法の変更にとどまらず、モニタリング体制そのものの再設計を必要とします。

たとえば1つのボイラーからBM対象の製造ラインとGF対象のユーティリティ設備に蒸気を供給しているケースでは、蒸気の使用量をプロセスごとに把握する仕組みが必要です。サブメーターの設置や稼働時間による按分など、合理的な方法を検討し文書化しておくことが登録確認機関の確認を受けるうえでの前提条件となります。

温対法との違い 手順

1. 温対法の報告体制を棚卸しする。現在の報告で使用しているデータ収集方法、算定方法、報告フローを整理し、GX-ETSとの差異を把握します。

2. 7つの相違点について自社への影響を評価する。特に割当区分ごとの報告、裾切り値なし、供給電力の非控除の3点は影響が大きいため優先的に対応を検討します。

3. GX-ETS用のモニタリング体制を設計する。温対法の体制をベースにしつつ、割当区分ごとの把握が可能な体制に拡張します。

4. 両制度のデータ収集を効率化する仕組みを構築する。可能な限り1回のデータ収集で両制度の要件を満たせる設計を目指します。

5. 原材料起源排出の範囲を見直す。温対法で対象外であった敷地外の排出源をGX-ETS用に追加します。

6. 登録確認機関の確認を受ける。温対法との差異が正しく反映されているか、確認機関の視点で検証を受けます。

温対法との違い FAQ

Q1 温対法の報告書をGX-ETSにも使えますか

使えません。両制度は報告様式、算定ルール、報告先が異なるため、それぞれ個別に対応する必要があります。ただしデータ収集の段階では共通化できる部分も多く、効率的な運用は可能です。

Q2 GX-ETSの方が排出量が大きくなりますか

一概にはいえませんが、他者への供給電力を控除できない点は排出実績量を増加させる方向に作用します。一方で間接排出を含まない点やCO2のみが対象である点は算定値を減少させる方向に作用するため、自社の排出構成によって異なります。

Q3 裾切り値がないということは全てのオフィスの排出も算定するのですか

制度対象者が保有する工場等には事務所やテナントビルも含まれるため、これらの燃料使用に伴う排出も算定対象となります。ただし極めて少量で合理的なモニタリングが困難な排出源については推計が認められる場合があります。

Q4 両制度の報告期限は同じですか

異なります。温対法の報告期限は制度の定めによりますが、GX-ETSの排出実績量の報告期限は割当年度の翌年度9月30日です。両者のスケジュールを把握し、計画的に作業を進めることが重要です。

Q5 GX-ETSに対応するために温対法の報告体制を変える必要はありますか

温対法の報告体制自体を変更する必要はありません。GX-ETS用の算定体制を別途構築するか、温対法の体制を拡張してGX-ETSの要件も満たせるように設計するかのいずれかの方法で対応することになります。

温対法との違い 全体像

GX-ETS排出量算定の全体像については、5つの原則と報告手順を包括的に解説した記事をご覧ください。

温対法との違い まとめ

GX-ETSと温対法の7つの違いは、いずれも排出量の算定結果に直接影響する実務上重要な相違点です。温対法の報告に慣れている企業ほど両制度の違いを軽視しやすい傾向がありますが、割当区分ごとの報告、裾切り値の不存在、他者供給電力の非控除といった変更は算定体制の根本的な見直しを迫るものです。

両制度の報告義務を効率的に並行して履行するためには、データ収集の共通化と算定体制の拡張を早期に検討することが重要です。温対法との差異が正しく反映されているかを登録確認機関に確認してもらうことを、SSPとして推奨します。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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