【GX-ETS】 モニタリングパターンの選び方 A-1 A-2 Bを解説

GX-ETS第2フェーズの排出量算定では、活動量の把握方法としてA-1、A-2、B、A+Bの4つのモニタリングパターンが用意されています。パターンの選択は排出量の正確性を左右する重要な判断であり、割当区分ごとのモニタリング設計という新たな要件にも対応しなければなりません。本記事ではSSPの実務経験に基づき、各パターンの特徴と選択の判断基準を整理します。

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目次

モニタリング 要約

GX-ETSのモニタリングパターンは、購買量のみで把握するA-1、購買量と在庫量で把握するA-2、自社計量器で実測するB、AとBを組み合わせるA+Bの4種類が定められています。いずれのパターンを選択するかは排出源の特性に応じた判断が求められ、一度選択したパターンは不必要に変更しないことが一貫性の原則として重要となります。割当区分ごとのモニタリングポイント設計が本制度で最も実務的に重要な新規要素です。

モニタリング 背景

温対法やSHK制度における排出量算定でもモニタリングの概念は存在しますが、GX-ETSでは割当区分ごとに排出量を区分して報告するという要件が加わるため、モニタリングの重要性が格段に高まっています。従来は工場全体の燃料購買量を把握すれば報告が可能でしたが、GX-ETSではBM方式の対象プロセスとGF方式の対象プロセスそれぞれについて排出量を分けて報告しなければなりません。

このため、1つの燃料タンクから複数のプロセスに燃料が供給されるようなケースでは、サブメーターの設置や合理的な按分方法の検討が必要になります。モニタリング体制の設計は算定作業の前提条件であり、制度対応の初期段階で着手すべき作業といえます。

望ましいモニタリング精度としてTier制が導入されている点も新たな要素です。燃料の種別と使用規模に応じてTier1からTier3の精度区分が設定されており、大規模な使用量ほど高いTierが求められる仕組みとなっています。

モニタリング 定義

SSPはGX-ETSにおけるモニタリングを次のように定義しています。制度対象者が排出量の算定に必要な活動量データを継続的に取得するための体制と手法の総体であり、購買量ベースのパターンAと実測ベースのパターンBを基本として、排出源の特性に応じた適切な方法を選択し、割当区分ごとに管理する仕組みです。

モニタリングポイントとは、活動量データを取得する計測地点を指し、取引用メーター、サブメーター、購買伝票の取得点などが該当します。

モニタリング 結論

SSPはモニタリングにおいて、次の3点を特に重要と考えています。

第一に、割当区分ごとにモニタリングポイントを設計することが最優先課題です。プロセスごとに排出量を把握できない体制では、正確な報告は不可能となります。

第二に、パターンの選択は排出源の実態に合わせて行い、一度選択したら不必要に変更しないことが重要です。在庫変動が大きい燃料にはA-2を、1つのタンクから複数プロセスに供給する場合にはBまたはA+Bを選択するのが合理的な判断となります。

第三に、Tier制は一律にTier3を求めるものではない点を正しく理解する必要があります。燃料種別と使用規模に応じた適切なTierを満たしていれば十分であり、過度な精度追求は不要です。

モニタリング 論点

論点実務での重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
割当区分ごとのモニタリング設計プロセスごとに排出量を把握できる体制が必要工場全体の合計値で報告できるという誤解制度対応の初期段階でモニタリングポイントを設計する
A-1とA-2の使い分け在庫変動が大きい場合はA-2。年度をまたぐタンク在庫がある場合はA-2が必須A-1とA-2に優劣があるという誤解在庫変動の実態に合わせて選択する
パターンBが必要なケース1つのタンクから複数プロセスに供給する場合はBで按分が必要購買量だけで全て対応できるという誤解サブメーターの設置や按分方法を事前に検討する
Tier制の精度要求燃料種別と使用規模でTier要求が決まる。大規模ほど高Tier全ての排出源にTier3が必要という誤解自社の燃料種別と使用量を確認し該当するTierを把握する
期ズレの扱い検針日が月末でない場合、4月1日以降の直近検針日から12ヶ月分厳密に4月1日から3月31日でなければならないという誤解一貫性を保ちつつ実務的に対応可能な方法を選択する
按分方法の合理性稼働時間や生産量等で按分。合理的根拠が必要任意の比率で按分してよいという誤解按分の根拠を文書化し登録確認機関の確認に備える
パターンの変更不必要な変更は一貫性の原則に反する毎年最適なパターンに変更すべきという誤解正当な理由がない限りパターンを維持する

モニタリング 比較

比較項目A-1 購買量のみA-2 購買量+在庫B 実測A+B 組合せ
活動量の把握方法購買伝票購買伝票と在庫量自社計量器購買量をベースに計量器で按分
精度把握の要否不要不要必要Bの部分は必要
適する場面在庫変動が小さい燃料在庫変動が大きい燃料プロセス別把握が必要な場合購買量は把握できるがプロセス別按分が必要な場合
典型的な排出源都市ガス、電力大型タンクの重油複数プロセスへ供給するライン1つのタンクから複数工程に供給
計量器の要否不要在庫量の計量が必要必須按分用のサブメーターが必要
実務的な負荷最も低いA-1よりやや高い計量器の管理が必要AとBの両方を管理
年度またぎの在庫反映されない反映される計量器で直接把握按分で反映

モニタリング 重要点

割当区分ごとのモニタリングポイント設計

本制度で最も実務的に重要な新規要素は、割当区分ごとにモニタリングポイントを設計する必要がある点です。具体的には3つのアプローチが考えられます。

第一の方法は、割当区分ごとに専用メーターを設置するものです。最も正確ですが、設備投資が必要になる場合があります。

第二の方法は、1つのメーターで複数の割当区分をカバーし、稼働時間や生産量などの合理的な指標で按分するものです。按分の根拠を文書化し、登録確認機関の確認に耐えうる合理性を確保しなければなりません。

第三の方法は、メインメーターとサブメーターの差異調整を行うものです。取引用メーターの値を基準とし、サブメーターの計測値との差異を調整して各割当区分の使用量を確定させます。

Tier制の実務的な理解

Tier制は全ての排出源に最高精度を求めるものではなく、燃料の種別と使用規模に応じた段階的な精度区分を設けた仕組みとなっています。固体燃料であれば燃料種別と使用規模に応じた望ましいモニタリング精度(Tier区分)は以下の通りです。

燃料種別使用規模望ましいTier
固体燃料(一般炭・コークス等)1,000t以上Tier3
100t以上 1,000t未満Tier2
100t未満Tier1
液体燃料(A重油・灯油・軽油・ガソリン等)5,000kl以上Tier3
500kl以上 5,000kl未満Tier2
500kl未満Tier1
気体燃料・気化状態(天然ガス・石油系炭化水素ガス等)2,500千m³以上Tier3
250千m³以上 2,500千m³未満Tier2
250千m³未満Tier1
気体燃料・液化状態(LPG・LNG等)5,000t以上Tier3
500t以上 5,000t未満Tier2
500t未満Tier1
都市ガス区分なしTier1
原材料起源区分なしTier1

パターンAの購買量に基づく方法と、特定計量器による計量は精度把握が不要とされています。Tier制はパターンBの自社計量器を使用する場合に特に関係が深い仕組みであり、最大公差がTier3で2.0%、Tier2で3.5%、Tier1で5.0%と定められています。

モニタリング 手順

1. 自社の排出源を割当区分ごとに整理する。BM方式とGF方式の各プロセスについて、どの排出源がどの割当区分に属するかを明確にします。

2. 各排出源に適したモニタリングパターンを選択する。在庫変動の有無、プロセス別把握の必要性、既存計量器の有無などを考慮して判断します。

3. モニタリングポイントを設計する。専用メーター、按分、差異調整のいずれかの方法で、割当区分ごとの活動量を把握できる体制を構築します。

4. 按分方法を使う場合は根拠を文書化する。按分に用いる指標や計算方法を文書にまとめ、登録確認機関の確認に備えます。

5. Tier要求を確認し精度管理体制を整備する。自社の燃料種別と使用規模に基づいて該当するTierを確認し、必要な精度管理を実施します。

6. 年度を通じてモニタリングを実施し記録を保持する。データの収集、品質チェック、記録の保管を計画的に行い、透明性の原則を確保します。

モニタリング FAQ

Q1 A-1とA-2はどちらが優れていますか

優劣はありません。在庫変動が小さく年度をまたぐ在庫がほとんどない場合はA-1で十分であり、大型タンクで在庫が年度をまたぐケースではA-2を用いるべきです。重要なのは排出源の実態に合った選択を行うことです。

Q2 全ての排出源にTier3が求められますか

求められません。Tier要求は燃料種別と使用規模に応じて段階的に設定されており、少量の排出源にはTier1で足りる場合もあります。都市ガスや原材料起源排出は規模区分なくTier1が適用されます。

Q3 検針日が月末でない場合はどう対応しますか

4月1日以降の直近の検針日から12ヶ月分のデータで算定することが認められています。概ね算定期間に相当する使用量であれば、厳密な期ずれ補正は不要です。ただし年度によって扱いを変えず一貫性を保つことが条件となります。

Q4 按分方法はどのように決めればよいですか

稼働時間、生産量、燃料消費パターンなどの合理的な指標に基づいて決定します。重要なのは按分の根拠を文書化し、登録確認機関が確認できる状態にしておくことです。任意の比率で按分することは認められません。

Q5 モニタリングパターンは毎年変更できますか

技術的には変更可能ですが、一貫性の原則から不必要な変更は避けるべきです。設備の変更や計量器の追加など正当な理由がある場合に限り、変更を検討することが望ましい対応となります。

モニタリング 全体像

GX-ETS排出量算定の全体像については、5つの原則と報告手順を包括的に解説した記事をご覧ください。

モニタリング まとめ

モニタリングパターンの適切な選択と割当区分ごとのモニタリング設計は、GX-ETSの排出量算定における最も実務的に重要な要素です。A-1、A-2、B、A+Bの各パターンにはそれぞれ適した場面があり、排出源の実態に合わせた選択が求められます。

Tier制は段階的な精度管理の仕組みであり、全排出源にTier3を求めるものではありません。モニタリング体制の設計は制度対応の初期段階で着手すべき作業であり、按分方法の文書化と登録確認機関との早期の連携をSSPとして推奨します。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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