【GX-ETS】 第2フェーズとは 制度の全体像を解説

GX-ETS第2フェーズは2026年4月1日に本格始動する、日本初の義務的排出量取引制度です。CO2直接排出量の3年平均が10万t以上の事業者が対象となり、排出枠の割当て、取引、償却にわたる一連の義務が課されることになります。本記事ではSSPの実務経験に基づき、制度の骨格と対象企業が押さえるべき要点を整理します。

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目次

GX-ETS第2フェーズ 要約

GX-ETS第2フェーズは2026年度から2030年度までの5年間を対象とする義務的キャップアンドトレード制度です。GX推進法に基づき、CO2直接排出量の3年度平均が10万t以上の事業者には届出、排出枠の保有、償却といった義務が課されます。排出枠が不足すれば負担金が発生し、虚偽届出には50万円以下の罰金が科される仕組みとなっています。

GX-ETS第2フェーズ 背景

日本は2050年カーボンニュートラルの実現に向けてGX推進法を制定しました。同法に基づくGX-ETSは、2023年度に始まった第1フェーズでは企業の自主参加によるGXリーグとして運営されてきましたが、自主参加方式では排出削減のインセンティブが限定的であり、制度の実効性に課題を残していました。

こうした背景を受け、第2フェーズでは法的義務を伴う制度へと大きく舵を切ります。対象企業は排出枠の範囲内でCO2を排出することが求められ、不足分については市場で調達するか負担金を支払わなければなりません。欧州のEU-ETSに匹敵する本格的なキャップアンドトレード制度が、日本の産業セクターにおいて初めて導入されることになります。

企業のサステナビリティ推進室にとって、温対法やエネルギーの使用の合理化に関する法律に基づく報告義務に加え、新たな制度対応が不可避となりました。排出目標量の算定、登録確認機関による第三者確認、ERMSを通じた届出という一連のプロセスは、従来の報告業務とは質的に異なる実務負荷をもたらすものであり、早期の体制整備が急務といえます。

GX-ETS第2フェーズ 定義

SSPはGX-ETS第2フェーズを次のように定義しています。GX推進法に基づき、CO2直接排出量の3年度平均が10万t以上の事業者に対して排出枠を無償で割り当て、毎年度の排出実績量に相当する排出枠の保有を義務づける制度であり、排出枠は市場取引が可能で、不足時には負担金の納付が求められます。

第1フェーズとの最大の違いは、自主参加から法的義務への転換にあります。GX推進法第34条に基づく届出義務、排出枠の償却義務、そして違反時の罰則規定が新たに設けられており、制度の拘束力は根本的に強化されました。

GX-ETS第2フェーズ 基礎

制度を正しく理解するうえで欠かせない基礎概念を整理します。

排出枠とは

CO2を1t排出する権利を1単位として政府が割り当てるものを指します。制度対象者は毎年度、自社の排出実績量と同量の排出枠を保有しなければなりません。

排出目標量とは

ベンチマーク方式またはグランドファザリング方式で算出した各プロセスの合計値にあたります。前者は国が定める排出原単位の目標値に基準活動量を掛けて算出する方式であり、後者は基準年度の排出量から毎年一定率を削減して算出する方式となっています。

排出目標量等合計量は、この排出目標量に勘案事項による調整量を加えた最終値を意味し、排出枠の割当ての基礎となる数値です。制度対象者は毎年9月30日までにこの値を届け出る必要があります。

排出実績量とは

割当年度に実際に排出したCO2の量からクレジットの無効化量を控除し、移転量を加算して算出されます。翌年度の9月30日までに報告する義務が課されています。

ERMSはEmission Reporting and Management Systemの略称で、届出や報告に用いる専用のオンラインシステムです。排出枠の管理もこのシステム上で一元的に行われます。

GX-ETS第2フェーズ 結論

GX-ETS第2フェーズへの対応は、2026年度に制度対象となる企業にとって最優先の制度対応課題となります。SSPは以下の3点を特に重要と考えています。

第一に、制度対象か否かの判定は企業自身の責任で行わなければなりません。経済産業省が対象企業を特定して通知する仕組みは設けられておらず、直近3年度のCO2直接排出量の平均が10万t以上であれば、届出義務が自動的に発生します。

第二に、2026年度は初年度の特例スケジュールが適用される点に注意が必要です。排出目標量等合計量の届出は2027年9月30日まで猶予される一方、年度平均排出量の届出と移行計画の提出は2026年9月30日が期限となっています。2027年度以降は2年度分の手続きが同時並行で進むため、早期の体制構築が不可欠です。

第三に、登録確認機関による第三者確認が義務化されている点を見落としてはなりません。排出目標量と排出実績量の双方について確認を受ける必要があり、確認機関との契約は早い段階から進めておくべきです。

GX-ETS第2フェーズ 論点

論点

論点どの領域で詳述するか実務での重要度判断のポイント
制度対象者の自己判定対象者判定経産省からの通知はなく、自社で3年平均を算定し判断する
BM方式とGF方式の適用区分今後公開予定
(2026年3月31日時点)
20の特定事業活動に該当すればBM、それ以外はGF。企業が選択するものではない
登録確認機関の選定と契約確認業務2026年1月から登録開始。早期に契約しなければ期限に間に合わないリスクがある
初年度の特例スケジュールスケジュール排出目標量の届出は1年猶予されるが、基礎届出と移行計画は猶予なし
排出枠の市場取引排出枠取引GX推進機構が開設する市場で取引が可能。上限価格制度も整備されている
共同届出制度の活用共同届出密接関係者と共同で義務履行が可能だが、要件は厳格に定められている
調整措置の適用判定今後公開予定
(2026年3月31日時点)
活動量変動、リーケージ、R&D投資による排出枠追加の実益がある
移行計画の公表移行計画投資計画やR&D情報が公表されるため、経営層の関与が欠かせない

GX-ETS第2フェーズ 比較

比較項目第1フェーズ GXリーグ第2フェーズ GX-ETS
法的根拠GXリーグ基本構想に基づく自主参加GX推進法に基づく法的義務
対象者自主的に参加を表明した企業CO2直接排出量の3年度平均10万t以上の事業者
排出枠の性格自主的な目標管理法的義務を伴う排出枠
不足時の措置なし未償却相当負担金の納付義務
罰則なし虚偽届出等に50万円以下の罰金
排出目標量の算定企業が自主設定BM方式またはGF方式で国の基準に基づき算定
第三者確認GXリーグ事務局が承認登録確認機関が限定的保証水準で確認
報告システムGXリーグ事務局への報告ERMSによる電子届出
実測値の承認GXリーグ事務局への事前申請が必要事前申請不要。報告時に登録確認機関が確認
対象ガスCO2のみCO2のみ
取引市場限定的な運用GX推進機構が開設する排出枠取引市場

GX-ETS第2フェーズ ナビゲーション

制度対象者の判定方法に関心がある方は、10万tの閾値判定や3年度平均排出量の算定方法、合併時の取扱いなどを整理した記事をご活用ください。

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GX-ETS第2フェーズ 手順

1. 制度対象者に該当するか判定する。自社のCO2直接排出量について直近3年度の平均を算出し、10万t以上であれば制度対象者に該当します。経済産業省からの通知は行われないため、各事業者が自ら判定しなければなりません。

2. ERMSのアカウントを開設する。GビズIDアカウントを取得したうえでERMSにアカウント登録を行い、法人等保有口座を開設します。2026年6月1日から開設が可能となっています。

3. 工場等の情報を登録する。自社が保有するすべての工場等の情報をERMSに登録します。割当方式や所在地、省エネ法の指定工場番号などが登録項目にあたります。

4. 排出目標量を算定する。各プロセスがベンチマーク方式とグランドファザリング方式のどちらに該当するかを判定し、それぞれの計算方法に従って排出目標量を算出します。あわせて調整措置の該当有無も確認が必要です。

5. 登録確認機関と契約し確認を受ける。排出目標量について登録確認機関の確認を受けます。確認機関の選定と契約は早い段階で進めておくことが重要であり、一覧は経済産業省のウェブサイトで公開される予定です。

6. 届出と移行計画を提出する。ERMSを通じて年度平均排出量および排出目標量等合計量を届け出るとともに、移行計画を経済産業大臣と事業所管大臣に提出します。通常の届出期限は9月30日です。

7. 排出枠の割当てを受ける。届出が適切と認められた場合、11月末に経済産業大臣から排出枠が割り当てられます。割当量は届出た排出目標量等合計量に基づいて決定されます。

8. 排出実績量を報告し保有義務を履行する。割当年度の翌年度9月30日までに排出実績量を報告したうえで、翌年度1月31日までに保有義務量分の排出枠を確保しなければなりません。不足する場合は市場での調達、または上限価格による清算で対応することが可能です。

GX-ETS第2フェーズ FAQ

Q1 自社が制度対象者かどうかは誰が判断するのですか

経済産業省からの通知や指定は一切行われません。各事業者が自ら直近3年度のCO2直接排出量の平均を算出し、10万t以上であれば制度対象者に該当します。なお、この判定は毎年度行う必要があり、平均が10万tを下回った年度は対象外となります。

Q2 2026年度の届出期限はいつですか

2026年度は制度開始初年度の特例が適用され、排出目標量等合計量の届出期限は2027年9月30日まで延長されます。ただし事業者の基礎情報と年度平均排出量の届出は2026年9月30日が期限であり、移行計画の提出も同日までに完了しなければなりません。

Q3 排出枠が不足した場合どうなりますか

保有義務量分の排出枠が不足した場合、不足分に上限価格の1.1倍を乗じた額を未償却相当負担金として納付する義務が生じます。ただしその前段階として、排出枠取引市場での調達や上限価格での清算といった選択肢が用意されています。

Q4 温対法の報告を既に行っていればGX-ETSの報告は不要ですか

GX-ETSと温対法は別制度であり、双方に個別の報告義務が存在します。GX-ETSの対象はCO2のみで間接排出を含まないうえ、割当区分ごとの報告が求められるなど、温対法とは報告体系が大きく異なっています。温対法の報告をもってGX-ETSの義務を果たしたことにはなりません。

Q5 登録確認機関とは何ですか

登録確認機関は、経済産業大臣の登録を受けた第三者機関であり、制度対象者が算定した排出目標量と排出実績量の適切性を確認する役割を担っています。確認は限定的保証の水準で実施されます。登録申請は2026年1月5日から開始されており、順次登録が進んでいます。

Q6 GXリーグに参加していなかった企業も対象になりますか

第2フェーズは法的義務に基づく制度であるため、GXリーグへの参加有無にかかわらず、CO2直接排出量の年度平均が10万t以上の事業者はすべて対象となります。自主参加という選択肢は設けられていません。

Q7 子会社やグループ会社はどう扱われますか

判定は事業者単位で行われ、子会社や関連会社はそれぞれ別事業者として個別に判定されます。ただし、一定の要件を満たす密接関係者との共同届出制度が用意されており、親会社が密接関係者と一体的にGX関連投資を行っている場合に活用が可能です。

GX-ETS第2フェーズ まとめ

GX-ETS第2フェーズは、日本の産業セクターに初めて法的義務を伴う排出量取引の枠組みを導入する画期的な制度転換です。制度対象者は自ら判定を行い、排出目標量の算定、登録確認機関による確認、ERMSを通じた届出、排出枠の保有義務履行といった一連のプロセスに対応しなければなりません。

2026年度は初年度特例により排出目標量の届出が1年猶予されるものの、基礎届出と移行計画の期限は2026年9月30日のままです。2027年度以降は2年度分の手続きが並行して走ることになるため、体制整備と登録確認機関との早期契約がSSPとして最も強く推奨する対応事項となります。

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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