セメント製造業は、石灰石の熱分解に伴う大量のプロセスCO2を排出する業種として、GX-ETS制度における主要対象業種に位置づけられています。セメント生産量1トン当たりの排出原単位は産業全体で最も高い水準にあり、削減機会の特定と管理体制の構築が経営上の重要課題となっています。

セメント製造業 背景
クリンカ製造におけるプロセスCO2排出の管理
ロータリーキルンでの石灰石熱分解に伴うCO2は、燃料燃焼とは独立した「プロセス排出」です。
標準係数:クリンカ1トン当たり約0.515トンのCO2(不可避的排出)。
原料による変動:ドロマイト系原料使用時はMgCO3分解分が加算(約0.471トンCO2/トン)。
生産量の把握:キルン冷却機からの投入量を日々記録し、在庫変動を考慮した月次生産量を確定させることが精度の鍵となります。ロードや化学分析による品質確認も並行して実施します。
燃焼排出と代替燃料活用における課題と対応
1 代替燃料の適用:廃プラスチック、廃タイヤ、RPFなどの燃料ごとに異なる排出係数を正確に適用します。
2 分類管理:RPFなどのサプライヤー表記が統一されていない資材について、受入時の正確な分類ルールを設けます。
3 ベンチマーク検証:キルン熱消費基準(3,739 MJ/トン)と自社の効率水準を定期的に検証します。
4 実績データベースの構築:代替燃料の品質や含水率の季節変動に対応するため、定期的なサンプリング分析を実施します。
セメント製造業 重要点
クリンカ生産量の正確な把握と在庫管理システム
生産プロセスの途中で生じる在庫変動を正確に管理する必要があります。
1 在庫計測:クリンカサイロの月初・月末在庫を計測し、当月の生産量を逆算します。
2 差分分析:クーラー出口計測値とサイロ投入量の差分(ロスや嵩密度変動由来)を精査し、物量バランスを確認します。
3 係数の監視:化学分析によるCaO、MgO含有率の測定を定期的に実施し、プロセスCO2係数の妥当性を検証します。
4 複数手法の相互検証:目視計測や重量測定などの手法を組み合わせ、自動計測システムにより日々のデータを監視します。
都市ガス係数と副原料の適切な管理体制
都市ガスの係数管理:国家標準値ではなく、供給事業者ごとの最新係数を取得し、システムに反映させます。
係数選択の優先順位:(1)サプライヤー提供値、(2)直近検証報告書、(3)標準係数 の順で適用します。
バイオマス・廃棄物区分:副原料や助燃剤について、バイオマス由来とプラスチック由来を適切に区分し、サプライヤー証明書に基づき管理します。
サプライヤー監査:提供データの信頼性を確保するため、定期的な評価と監査を実施します。
セメント製造業 手順
GX-ETS本格稼働への準備と継続的改善
GX-ETS制度への適合と競争力強化のため、以下の手順で体制を整備します。
1 記録管理の基盤構築:クリンカ生産量の日々の記録管理と、計測記録の法定期間保存を徹底します。
2 月次の物量バランス確認:生産量、燃料使用量、在庫変動の整合性を毎月検証するプロセスを定着させます。
3 外部環境への対応:国際的な排出規制の強化を注視し、排出量管理の高度化と削減技術の導入を組み合わせます。
4 先進的施策の検討:管理体制の基礎を固めた上で、代替原料の活用拡大や最新のプロセス改善技術への投資を検討します。
参考情報
・セメント協会「環境報告書」
・環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」
・経済産業省「GX-ETS制度概要」


