高炉一貫製鉄所は、コークス炉から焼結機、高炉、転炉に至る一連の製鉄プロセスを有する国内最大級のCO2排出源です。鉄鋼業は日本の産業部門におけるCO2排出の約4割を占めており、GX-ETS制度の中核対象セクターに位置づけられています。

高炉一貫製鉄所 背景
各工程における排出源の概要
高炉一貫製鉄所の排出源を各工程ごとに管理します。
1 コークス炉:石炭乾留時の燃焼排出と、副産物(タール、ガス)回収時の化学反応による排出。
2 焼結機:燃料燃焼排出と、鉄鉱石中の含有水分の脱水反応に伴う排出。
3 高炉:コークスの燃焼および鉄鉱石の還元反応(Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2)に伴う排出。
4 転炉:銑鉄の酸化精錬に伴う排出、およびスクラップ鉄のプロセス排出。
これら各工程の排出源を一覧化し、期間ごとに集計するシステムの構築が重要です。
副生ガスの特性と管理の重要性
各プロセスから発生する副生ガス(BFG、COG、BOF Gas)の性状管理を以下の通り実施します。
1 各ガス種について月次の発生量および利用先を記録します。
2 発生量、内部利用量、外部売却量を厳密に追跡します。
3 標準状態(SATP:25℃、1気圧)への換算を確実に実施します。
これにより「原料由来」と「エネルギー由来」の炭素の配分が可能となり、マスバランスベースの厳密な管理が実現します。
高炉一貫製鉄所 重要点
副生ガスの二重計上防止
マスバランスベースの厳密な炭素配分管理により、二重計上を防止します。
1 全社マスバランス表を作成し、各工程の投入量・出力量を記録します。
2 高炉へのコークス投入量(原料)から副生ガス発生量を差し引き、銑鉄等の産出物量と整合するか確認します。
3 副生ガスの発生量から利用量を差し引き、備蓄量増減を記録します。
4 会計期末に全ての投入・出力のバランスを確認し、不一致があれば原因を調査します。
売却される副生ガスについては、その炭素量を「排出」から控除する仕組みを活用します。
石灰石・ドロマイトの管理
製鋼工程のフラックスとして使用される原料の区分を徹底します。
石灰石(CaCO3):0.440 tCO2/t のプロセスCO2が発生。
ドロマイト(CaMg(CO3)2):0.471 tCO2/t のプロセスCO2が発生。
生石灰(CaO):既焼成のため温対法対象外(OUT OF SCOPE)。
供給元からの分析報告書を厳密に確認し、CaCO3としての石灰石か既焼成のCaOかを明確に判定します。
フレアと非定常排出の記録管理
非定常状態(ESD、PSV作動等)での排出を以下の手順で管理します。
1 全社の流程図を作成し、フレアスタックの位置と全ての配管経路(P&ID)を完全にマッピングします。
2 ESD作動時および圧力制御時のフレア流量ログを収集し、持続時間等から年間排出量を推計します。
3 メタン(CH4)排出について、コークス生産量とプロセスガス成分分析データを組み合わせ、年間排出量を算定します。
非定常排出は総排出量の数%~10%程度を占める可能性があるため、専用の追跡システムによる整理が重要です。
高炉一貫製鉄所 まとめ
高炉一貫製鉄所のGHG管理において、副生ガスの二重計上防止と非定常状態におけるフレア・CH4排出の正確な記録が、最優先課題として位置付けられます。原料由来と燃料由来の炭素を物理的に分離できない複雑性を認識し、マスバランスベースの厳密な管理体制を構築することが、信頼性のあるGX-ETS報告の必須要件です。詳細な技術文書のダウンロードを強く推奨いたします。
参考情報
・日本鉄鋼連盟「低炭素社会実行計画」
・環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」
・経済産業省「GX-ETS制度設計資料」


