EcoVadis(エコバディス)は、企業のサステナビリティ活動を評価する世界的なプラットフォームです。その評価結果はサプライチェーン管理やESG投資にも活用され、取引先との信頼構築やリスク管理に役立ちます。多くのグローバル企業がEcoVadisを採用しており、持続可能な経営を推進する上で重要な役割を果たしています。


1.EcoVadisの概要とグローバルな役割
EcoVadisは2007年にフランスで設立され、世界175カ国以上・15万社超の企業を対象にCSR・ESGパフォーマンスの評価サービスを提供しています。特にグローバル企業のバイヤー(購買側)によってサプライヤー評価に利用されており、現在では世界で1,200社以上の調達企業がEcoVadisを活用しています。評価対象には上場・非上場企業を問わず中小企業も多く含まれ、サプライチェーン全体での持続可能性向上を目的とした「共同プラットフォーム」として機能しています。EcoVadisのビジョンは「サステナビリティが経営の意思決定に影響を与える社会」を実現することであり、その使命は信頼性が高く世界的に認められたサステナビリティ評価を提供することです。この評価によって企業は自社の環境・社会への取り組みを客観視し、リスク低減と継続的な改善に繋げることが可能です。またバイヤー企業側にとっては、多数のサプライヤーを一元的な基準で比較・監視できるため、サプライチェーン全体のESGリスク管理が効率的に行えます。
2.評価対象となるサステナビリティ項目
EcoVadisは企業のサステナビリティを4つのテーマ(環境・労働と人権・倫理・持続可能な資材調達)に基づき評価します。この4テーマの下に計21項目の評価指標が設定されており、例えば環境分野では「エネルギー消費と温室効果ガス排出」「水資源管理」「廃棄物管理」「生物多様性保護」等が含まれます。労働と人権では「労働安全衛生」「労働条件」「人権尊重(児童労働禁止・多様性推進など)」が評価対象です。倫理分野では「腐敗行為の防止」「独占禁止の遵守」「データの適正管理」といった企業行動倫理が問われ、持続可能な資材調達では「サプライヤーの環境・社会面での取り組み」が評価されます。
各企業には業種・規模・所在地に応じてカスタマイズされた質問票が提供され、上記4テーマに沿って自社の方針・取り組み・実績について回答します。EcoVadisの評価フレームワークでは、企業のサステナビリティマネジメントを「方針(Policies)」「実施対策(Actions)」「結果(Results)」の3つの観点から捉え、さらに「認証取得状況」「取組範囲の広がり」「情報開示状況」「外部からの評判(360°ウォッチ)」等の指標を組み合わせて総合的に評価します。これにより企業の強みと弱みが明確化され、具体的な改善領域の特定が可能となっています。

3.EcoVadis導入のビジネス的利点
EcoVadisを導入・活用することで、企業には多くのビジネス上のメリットが期待できます。まず、取引先や投資家からの信頼性向上です。第三者機関であるEcoVadisによる高評価は、自社の環境・社会への取り組みが適切であることの証明となり、ステークホルダーへの説明責任を果たす材料となります。特にサプライヤー企業にとっては、EcoVadisのスコアカードを通じて自社のCSRパフォーマンスを可視化・共有できるため、グローバル取引における信用力強化や、新規ビジネス獲得の機会創出につながります。
サプライチェーン上のリスク管理
またバイヤー企業側のメリットとして、サプライチェーン上のリスク管理が挙げられます。EcoVadis評価をサプライヤーに求めることで、各取引先の労働環境や環境対策などを統一基準で把握でき、問題の早期発見・是正が容易になります。評価結果の透明性向上により、取引先との関係も強固になり得ます。さらに、EcoVadisの評価項目はISO 26000やGRIスタンダードなど国際基準に準拠しているため、高スコア取得は各種ESG格付けや規制対応においても有利に働きます。例えば欧州では、企業がサプライヤーにEcoVadis評価取得を義務付けるケースもあり、今後こうした要求は増えると予想されています。従って、自社が早期にEcoVadis対応を進めておくことは、グローバル競争力の強化や将来的な法規制対応への先手にもなるのです。
加えて、EcoVadisは単なる評価に留まらず改善のための指針も提供します。スコアカードには各テーマごとの得点に加え強み・改善点が記載され、次の評価に向けて企業が取り組むべき課題が明確になります。このフィードバックを社内で共有し改善サイクルを回すことで、継続的なパフォーマンス向上と企業価値向上に結び付けることができます。


4.高評価企業の取り組みと実例
実際にEcoVadisで高スコアを獲得している企業は、総じて高度なサステナビリティ戦略を実践しています。日本企業では、花王グループの花王チミグラフが環境・労働人権・倫理・調達の全分野で卓越した取り組みを評価され、2023年にプラチナ(最高位:上位1%)メダルを獲得しました。またパナソニックはEcoVadis評価を受審しており、2023年評価では総合スコア68点を獲得して全企業中上位10%に入る高評価を得ています。これらの企業は、カーボンニュートラル目標の推進や人権デューデリジェンスの徹底、社内倫理規程の厳格な運用など、各テーマで先進的な施策を講じている点が共通しています。その結果、社外からの評価・表彰(例えば「世界で最も倫理的な企業」選出やCDPのAリスト入り等)も含め、総合的なCSR評価が高い水準にあります。
海外企業例
海外の例では、消費財大手のユニリーバ(Unilever)がEcoVadisをサプライヤー管理に活用していることが知られています。ユニリーバは自社の責任ある調達方針の下、取引先に対してEcoVadis評価への協力を求め、得られた評価データをもとにサプライヤーの環境・社会パフォーマンス改善を支援しています。同社の調達担当役員は「EcoVadisはパートナー企業の改善領域を可視化し、サプライチェーン全体で持続可能性向上を進める助けとなっている」と述べており、実際ユニリーバは多数のサプライヤーのスコア向上に寄与した功績でEcoVadisより表彰も受けました。このように、高評価を得る企業ほどEcoVadisを戦略的に位置付け、社内外のステークホルダーと協働してサステナビリティ向上に取り組んでいると言えます。
