【SSBJ】サステナビリティ情報の保証とは?SSBJが定めるルール


サステナビリティ情報の信頼性確保の重要性が高まり、企業の開示データに第三者保証を付与する動きが加速しています。特にISSA 5000が国際的な保証基準として整備され、日本でもSSBJ基準と連携し、財務情報同等の信頼性が求められています。企業は内部統制とデータ管理を強化し、段階的な保証取得を進める必要があります。今後、限定的保証から合理的保証へと発展し、法制度として義務化される可能性もあります。SSBJ基準が定めるルールについて解説します。

目次

1.サステナビリティ情報の信頼性向上の必要性

近年、企業のサステナビリティ情報に対する第三者保証の重要性が急速に高まっています。投資家をはじめとするステークホルダーは、財務情報だけでなく気候変動や人権など非財務情報についても信頼性の高いデータ開示を求めるようになりました。実際、世界的な開示フレームワークであるTCFD提言に基づく報告や、CDPなどの評価制度でも、GHG排出量などのデータが第三者に検証されているかが問われるようになっています​。日本企業でも時価総額上位の企業を中心に、既にサステナビリティ情報に保証を付与して開示する割合が高まっているとの調査もあります​。

こうした背景から、サステナビリティ情報の信頼性確保は喫緊の課題となっており、財務諸表の監査と同様に専門家による保証を付ける動きが主流化しつつあります。サステナビリティ情報の第三者保証を実施することで、企業の開示する温室効果ガス排出量や非財務KPIが適切に測定・報告されていることを裏付け、いわゆる「グリーンウォッシュ」への懸念を払拭する効果が期待できます。信頼性を備えたサステナビリティ情報は、投資家の意思決定や企業価値評価において重要なインプットとなるため、今や保証は不可欠な要素となりつつあるのです。

2.ISSA 5000とSSBJ基準の関係

ISSA 5000(国際サステナビリティ保証基準 5000)は、サステナビリティ情報の保証に関する国際的な新基準です。これは国際監査・保証基準審議会(IAASB)が策定したもので、正式名称を「サステナビリティ保証業務の一般的要求事項」といい、企業が開示するあらゆるサステナビリティ情報の保証業務に適用される包括的基準です​。

従来、非財務情報の保証にはISAE 3000(汎用的な保証基準)やISAE 3410(GHG排出量保証基準)など複数の基準が使われてきましたが、ISSA 5000はそれらを統合し一本化することで、保証業務の明確な枠組みを提供しようとしています​。2024年に最終承認され、2025年以降本格運用が開始される予定であり​、各国の公認会計士協会等が順次この基準に基づく実務指針を整備していく見込みです。日本においても、日本公認会計士協会(JICPA)がISSA 5000の内容を踏まえた監査・保証基準の整備を進めています。SSBJ基準そのものは情報の「開示基準」であり保証の詳細な手続き規定ではありませんが、SSBJ基準で求められる開示には財務情報と同等の保証が必要と位置付けられています。

つまり、SSBJ基準に従って開示されるサステナビリティ情報は、財務諸表監査と同様に信頼性が確保されるべきものと捉えられており、その保証の実務を支えるのがISSA 5000等の保証基準なのです。金融審議会の議論でも、サステナビリティ情報の保証を法制度として義務化する方向で検討が進められており、ISSA 5000の策定完了はタイムリーに日本の保証制度にも反映されるでしょう。将来的には、各企業がSSBJ基準に沿って開示した情報について、公認会計士・監査法人がISSA 5000に準拠した手続を実施し、限定的保証や合理的保証を付与するのが一般的なプロセスになると考えられます​。

3.企業が取り組むべき保証体制のポイント

企業がサステナビリティ情報の保証に対応するにあたっては、内部統制とデータ管理体制の整備が鍵となります。SSBJ基準の下では財務情報同様に厳格な保証が求められるため、サステナビリティ情報の収集・集計プロセスについても監査対応可能な水準の正確性・完全性を確保しなければなりません​。具体的には、温室効果ガス排出量や多様性に関する指標等について、社内で明確な算定手順書を定め、入力データの承認フローやシステム管理を徹底する必要があります​。

加えて、データの追跡可能性(トレーサビリティ)を確保し、監査人が検証できるエビデンスを蓄積することも重要です。さらに、第三者保証を受ける主体として、どの範囲を保証対象とするかも検討ポイントです。日本の制度案では、サステナビリティ開示義務化の初期段階においては保証範囲を絞り、まずは温室効果ガス排出量(Scope1・2)やガバナンス・リスク管理に限定的保証を付与し、数年後を目途に範囲拡大や合理的保証への移行を検討する段取りが示されています​。企業側としては、このスケジュールを見据えて段階的に保証体制を強化していく必要があります。

例えば初年度・第二年度はGHG排出量等の保証取得に注力し、データ品質を向上させることで、将来的にScope3やその他のESG情報まで保証範囲が広がっても対応できる基盤を作っておくことが求められます。また、保証業務を担う監査法人との連携も重要です。財務監査と同じ監査法人に依頼するケースが多くなると予想されるため、財務報告と非財務報告のサイクルを統合し、スケジュール調整や作業計画を事前に共有することが望まれます。

最後に、罰則規定にも留意が必要です。現在検討中の制度では、虚偽のサステナビリティ情報開示に対する罰則適用も議論されており​、いい加減な情報開示は法的リスクにも繋がりかねません。内部統制の高度化と第三者保証の受入れを通じて、企業はサステナビリティ情報の信頼性を高め、ステークホルダーからの信頼確保とレピュテーション向上に努めることが重要です。

引用

IAASB(国際監査・保証基準審議会)公式サイト
https://www.iaasb.org

ISSA 5000 解説(IAASB)
https://www.iaasb.org/publications/international-standard-sustainability-assurance-5000-general-requirements-sustainability-assurance

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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