【排出量取引】試行期間を解説ーGXリーグ第1フェーズについて

GXリーグ第1フェーズ(2023年度~2025年度)は、日本が独自に設計した排出量取引制度(GX-ETS)の導入初期段階であり、カーボンニュートラルに向けた企業の自主的な挑戦を促すための試行期間です。

2026年度から始まる「第2フェーズ」での本格稼働(義務化・有償オークション導入)を見据え、第1フェーズでは多くの企業が排出量の算定・報告や、自主目標の設定を通じた排出量取引のノウハウ蓄積に取り組んできました。本記事では、この重要な3年間の取り組みである第1フェーズの概要、特徴、そして次フェーズへの橋渡しとしての役割について解説します。

※令和7年7月2日に経済産業省 GXグループにて発表された「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」を反映した内容は下記記事となります。

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目次

1. 排出量取引制度ー第1フェーズの目的と概要

引用:GXを実現するための政策イニシアティブの具体化について

試行期間としての第1フェーズ

GXリーグ第1フェーズは、2050年カーボンニュートラル実現に向けた「経済社会システム全体の変革(GX)」を加速させるために設定された最初のステップです。

この期間は、企業が排出削減に「自主的に」取り組むことを前提としており、法的拘束力を伴わないソフトロー(Soft Law)として運用されました。具体的には、参加企業が自ら高い削減目標を掲げ(プレッジ)、その進捗を報告・レビューする仕組みを通じて、日本国内における排出量取引の土壌を育成することを主目的としています。

主な参加企業と要件

参加企業は、国内の直接排出量が10万トンCO2以上の大規模排出企業(特定排出者)が中心ですが、サプライチェーン脱炭素化を目指す中小企業の自主的な参画も見られます。各企業は基準年度を設定し、2030年度および2025年度(中間目標)の排出削減目標を定めることが参加要件とされています。

自主目標の設定とトランジション戦略

企業は第1フェーズにおいて、以下の要素を含む自主的な取り組みを行う必要があります。

  • 削減目標の設定: 日本のNDC(2030年度46%削減)や科学的根拠(SBT水準)と整合する削減目標を策定。
  • トランジション戦略: 脱炭素化に向けた長期的な投資計画や技術導入ロードマップを策定し、経営戦略として開示。

これらの要件を満たすことで、企業は第1フェーズの意義に沿った形で取り組みを進めます。

2. 排出量取引制度ー第1フェーズの構成要素

引用:環境経済室 課長補佐 荒井 次郎 GX-ETSの概要

プレッジ

企業は、排出削減目標を設定し、それをGXリーグに登録する必要があります。このプロセスは「プレッジ」と呼ばれ、企業の排出削減に向けた意思を明確にする重要なステップです。

登録内容
基準年度の設定、削減目標の詳細、トランジション戦略の概要

透明性の確保
登録された目標は公開され、ステークホルダーが進捗を確認できる仕組みが整備されています。

実績報告

プレッジに基づき、企業は定期的に排出量の実績を報告します。この報告には以下が含まれます

Scope1とScope2
直接排出(Scope1)およびエネルギー購入に伴う間接排出(Scope2)のデータ

削減努力の進捗
実際の削減量と計画との差異。

第三者検証
データの信頼性を確保するため、外部機関による検証を実施。

取引実施

第1フェーズでは、排出量取引が試験的に実施されています。この取引には以下の特徴があります

取引対象
Scope1の排出量

クレジットの種類
GXリーグ専用の超過削減枠や適格クレジット。

透明性
GXダッシュボードで取引内容が公開され、透明性が確保されています。

レビューとフィードバック

GXリーグ事務局は、第1フェーズの結果をレビューし、参加企業にフィードバックを提供します。このプロセスでは、以下が行われます

課題の特定
排出量算定方法や取引市場の改善点を明確化。

成功事例の共有
他企業にとって参考となるベストプラクティスの共有。

政策提言
第二フェーズへの移行に向けた提案を策定。

3. 排出量取引制度における排出量算定基準と範囲

第1フェーズでは、Scope1(企業活動に伴う直接排出)とScope2(購入した電力などの間接排出)が対象となります。

 Scope1・2の対象

第1フェーズでは、企業の自社排出(Scope1)とエネルギー起源の間接排出(Scope2)が算定・取引の対象となりました。特に電力消費に伴うScope2排出量の算定については、再エネ価値の扱い(マーケット基準)などのルール整備が進められました。

非エネルギー起源排出の扱い

製造プロセス(セメント製造時の化学反応など)から生じる「非エネルギー起源CO2」については、第1フェーズでは算定対象に含まれるものの、モニタリング手法の標準化が課題とされていました。これらは第2フェーズに向けて、より精緻な算定ガイドラインが整備されています。

第三者検証の役割

第1フェーズでは「限定的保証」を中心とした第三者検証が行われましたが、データの信頼性確保(MRV)の重要性が確認されました。

  • 検証の標準化: 検証機関ごとのバラつきを抑えるためのガイドライン策定。
  • 義務化への布石: 第2フェーズでは一定規模以上の事業者に対し、検証受審が法的義務となる方向で制度化が進んでいます。

4. 第1フェーズの終了と第2フェーズへの展望

第1フェーズの終了後、GXリーグは義務的な排出量取引市場への移行を計画しています。

第2フェーズへの準備

2025年度をもって第1フェーズは終了し、2026年度からは改正GX推進法に基づく「第2フェーズ」へ移行します。

GXリーグは、第1フェーズでの「自主的な試行」を経て、第2フェーズでは日本経済の脱炭素移行(GX)を牽引する「実働エンジン」となります。参加企業は、これまでの経験を活かし、炭素コストを経営に織り込んだ高度な「カーボン・マネジメント」を実行することで、国際的な競争力を高めていくことが期待されます。

GXリーグの将来像

GXリーグは、排出量取引を通じて日本全体のカーボンニュートラル達成に貢献することを目指しています。これにより、国内企業の競争力強化と新たなビジネス機会の創出が期待されています。また、第1フェーズの経験を基に、透明性や信頼性の高い市場運営が可能になるでしょう。

排出量取引制度まとめ

GXリーグ第1フェーズは、日本独自の排出量取引制度を立ち上げ、企業の実務能力を育成するための重要な「助走期間」です。

この期間に蓄積されたデータと経験は、2026年度からの本格稼働(第2フェーズ)における制度の信頼性を支える基盤となります。企業は、第1フェーズの総括を行い、来るべき義務化フェーズにおける競争優位を確立するための戦略的対応を進める必要があります。

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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