本基準は前付のエグゼクティブサマリーと基準体系の概説に続き、第1章から第6章の規範部分、用語集、付録Aで構成されます。文書の構造に沿って各章の要点を解説します。要求事項はCNZS-C1からC46までの基準として整理され、各基準には適用カテゴリーと評価段階が明記されます。

前付 エグゼクティブサマリーと基準体系
前付では基準全体の革新点と、SBTi基準体系における本基準の位置付けが示されます。本基準はコーポレートネットゼロ基準を基盤とし、金融機関ネットゼロ基準とセクター基準群が補完するモジュール構造です。実務上は、適用すべきセクター基準の有無を最初に確認する必要があります。化石燃料の探査、採掘、生産に直接関与する企業は、セクター手法が確定するまで目標を検証できない点に注意が必要です。
第1章 ネットゼロガバナンス
第1章は経営層の説明責任と移行計画を扱います。求められるのは、取締役会など最高ガバナンス機関による目標の承認と実施の監督、ガバナンス体制の報告、そして目標実施の行動、時間軸、前提条件、依存関係を記述した移行計画の策定と少なくとも5年ごとの見直しです。移行計画は最高ガバナンス機関の正式承認と企業戦略への統合が要件となるため、サステナビリティ部門単独では完結しません。カテゴリーA企業は目標検証完了後15か月以内に移行計画を開示する必要があります。
第2章 目標基準年評価
第2章は目標設定の土台となるデータ要件を定めます。求められるのは、GHGプロトコル基準に整合した組織境界と運用境界の設定、直近年を原則とする目標基準年の選択、京都議定書対象7ガスを網羅したインベントリの作成、付録Aに基づく排出集約活動(EIA)の特定と定量化、そしてカテゴリーA企業については最低限定的保証の取得です。保証範囲はスコープ1、2、3の排出量に加え、低炭素電力の算定値や重要なEIAの排出量まで及びます。いずれかのスコープで5%以上の変動が生じる場合、基準年の再計算とSBTiへの提出が必要です。
第3章 目標設定
第3章はスコープ別の目標設定方式を規定します。スコープ1は絶対量削減、セクター原単位削減、資産移行の3方式から選択し、原単位方式と資産移行方式を選んだ場合は長期目標の設定が必須です。スコープ2は低炭素電力(LCE)の比率引き上げ目標と絶対量削減目標のいずれかまたは両方を設定します。LCEには再生可能エネルギーに加え原子力と炭素回収貯留付き発電が含まれます。スコープ3は5%以上を占める重要カテゴリーを対象に3方式から選択し、販売製品の使用に伴うカテゴリー11については、いずれの方式も合理的に適用できない場合に他カテゴリーでの同量対応または例外申請という代替経路が用意されました。
第4章 目標実施
第4章はV2.0の中核的な新設部分です。活動レベルでの直接削減を最優先し、それが尽くされた場合にアクティビティプールレベルの行動を、構造的制約がある場合に限りセクターレベルの行動を選択するという実施ヒエラルキーの遵守が求められます。行動と市場メカニズムには活動の同一性、システムの関連性、保守的な定量化、検証可能性、12か月以内の時間的整合、固有の帰属、二重計上防止という最低統合性基準が適用されます。電力については地理的マッチングが要求され、市場メカニズムは運転開始またはリパワリング(設備更新)から15年以内の発電設備に限定されます。年間消費電力量が10 GWh以上のアクティビティプールを持つ企業には時間単位マッチング比率の報告が求められ、2030年まで50%以上、2035年まで75%以上、2035年以降90%以上の閾値を満たす企業は任意の認定対象となります。
第5章 進捗の報告と評価
第5章は年次の進捗報告とサイクル終了時の評価を規定します。求められるのは、目標別の年次報告、進捗を阻害した障壁とその対応策の報告、サイクル終了時における目標年インベントリの作成と基準年からの変化の評価です。カテゴリーA企業は進捗評価の根拠データに最低限定的保証を取得します。物理的インベントリの変化のみが排出削減クレームの根拠となり、アクティビティプールやセクターレベルの行動はシステム貢献クレームとして区別されます。次の目標は前目標期間終了の24か月前から終了後12か月までの間に検証へ提出します。
第6章 継続的排出責任
第6章はOERの3つの局面を規定します。第一は任意認定プログラムで、継続排出量の1%以上をカバーするEngaged、スコープ1と2の100%を含む全体の10%以上をカバーするAdvanced、全継続排出をカバーするLeadershipの3レベルがあり、検証済み緩和成果の支援または1 t CO2e当たり20米ドルまたは80米ドルの拠出予算により貢献を提供します。第二は2035年以降の責任要件であり、継続排出の1%から開始してネットゼロ年までに100%へ線形に引き上げる炭素除去の支援が求められます。第三はネットゼロ到達時の残余排出の中和です。OERに使用した緩和成果は目標実施やインベントリの相殺に使えず、厳格な分離会計が求められます。
付録A 排出集約活動(EIA)
付録Aは、企業が特定すべきEIAをNACEコードとともに一覧化しています。セメント、鉄鋼、アルミニウム、アンモニア、基礎化学品、プラスチック、農林業コモディティといった素材群、陸運、鉄道、海運、航空の輸送群、販売燃料の燃焼やエネルギー消費製品などの販売製品群で構成されます。素材群はクレードルトゥゲート、輸送群はウェルトゥホイール、販売製品群は使用段階という排出境界が定義されます。スコープ3の5%以上を占めるEIAは重要EIAとして個別の報告と脱炭素計画の対象となります。
参考文献
Corporate-Net-Zero-Standard-version-2
https://files.sciencebasedtargets.org/production/files/Corporate-Net-Zero-Standard-version-2.pdf



