内航海運業は、日本の物流インフラの中核を担う業種として、GX-ETS制度における新たな対象業種に加えられました。船舶の航行に伴う燃料消費量と、それに基づくCO2排出量の正確な把握が求められます。

内航海運 背景
船舶の航行に伴う主要排出源の管理
1 主機関における推進燃料の燃焼を管理します(A重油:約0.0193トンC/GJ、B・C重油:約0.0202トンC/GJ)。
2 燃料油納入証明書(BDN)の記録と船内在庫量の実査による物量バランス閉鎖を実施します。
3 補機関、発電機、船内ボイラーの燃料消費もScope 1として計上します。
各船舶ごとの運航ログの詳細な記録と統計的分析により、操船効率の改善機会を抽出し、燃料消費効率が低い航海区間の特定や船速調整などの改善施策を実装することが可能です。
港湾施設と付帯設備の包括的な排出源管理
内航海運事業者のScope 1排出は、以下の港湾設備も含みます。
移動燃焼設備:搬器リフト、コンテナハンドリング用クレーン、フォークリフト、トラックなど。
付帯設備:冷蔵コンテナの温度制御装置(TRU)、港湾高圧設備のSF6ガス漏えい、船上の廃棄物焼却炉。
係留中の補機関や冷凍装置の運転に伴う排出量は相当な規模であり、港湾施設での給油・給電記録など関連データの整理が不可欠です。
内航海運 重要点
メタンスリップ管理と温暖化ポテンシャルの評価
LNG燃料船における「メタンスリップ」は、メタンの一部が不完全燃焼により大気に放出される現象です。
スリップ率:一般的に燃料エネルギー量の0.06パーセントから0.15パーセント程度。
温暖化インパクト:メタンのGWPは265であり、少量のスリップでもCO2換算で無視できない影響を持ちます。
LNG燃料導入時には、エンジンメーカーの資料や実運用データに基づき、メタンスリップ係数を明示的に算定式に組み込み、定期的に見直す仕組みが必須です。
IMO規制と温対法の報告境界の統合管理
1 IMOのMARPOL Annex VI規制と日本の温対法・GX-ETS制度の報告要件を整理します。
2 航海の定義や計算方法の差異を理解し、双方を満たすデータ体系を構築します。
3 フロン排出抑制法に基づくHFC漏えいの3年間記録保持要件に対応します。
統合的なデータ管理システムの構築により、複数の報告要件を効率的に満たすことが可能となります。
内航海運 まとめ
内航海運業のCO2排出量管理には、船舶主機関の燃料消費量の正確な把握、港湾施設の補機設備の包括的なカバレッジ、LNG船のメタンスリップ対応など、複数の重要課題が存在します。月次での物量バランス確認を定常業務化し、国際規制との並行対応を視野に入れたデータ管理体系を構築することが推奨されます。継続的な改善により、企業の競争力強化に向けた着実な一歩となります。
参考情報
・国土交通省「内航海運の環境対策」
・環境省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」
・IMO「MARPOL Annex VI」


