発電ベンチマーク検討ワーキンググループは、2025年に経済産業省が設置した検討会で、2026年度開始予定のGX推進法に基づく排出量取引制度(GX-ETS) における発電部門の排出枠配分方式を検討します。これまで第1回~第4回まで開催され、業界へのヒアリングや調査結果を踏まえ、石炭・ガス・石油の火力発電を燃料種別に分けたベンチマーク方式案が示されています。企業は自社の発電量とCO2排出量データを整理しつつ、燃料別ベンチマークの導入に向けた動きを注視する必要があります。


発電ベンチマーク 要約
発電ベンチマーク検討ワーキンググループでは、発電所のCO2排出原単位を燃料種別ごとに基準化する方式案を検討している。これまでの議論では、石炭・天然ガス・石油の火力発電それぞれに異なるベンチマークが提示され、再生可能エネルギーや原子力は排出源ではないため対象外となる見通しである。
発電ベンチマーク 結論
発電ベンチマーク検討WGでは、GX-ETSにおける発電部門の排出枠を燃料種別ベンチマークで配分する案が検討されています。具体的には、石炭・天然ガス・石油の火力発電をそれぞれ区分した排出原単位(CO2/MWh) を設定する方針が示されており、再生可能エネルギーや原子力は直接排出源ではないため配分対象外と見込まれています。企業にとっては、自社の発電ポートフォリオとベンチマーク水準を比較し、省エネ・燃料転換などで排出量を削減する対策が重要です。たとえば、効率向上や分散型エネルギー導入によって燃料の燃焼量を減らし、ベンチマーク達成に向けた準備を進めることが求められます。
発電ベンチマーク 背景
世界的にGX-ETS(成長促進型排出量取引制度)の導入が進む中、日本でも2025年5月に改正GX推進法が成立し、CO2排出量が直近3年平均で10万トン以上の大規模事業者を対象に2026年度から義務的な排出量取引制度が実施されることになりました。経済産業省は産業構造審議会の排出量取引制度小委員会で制度設計を検討しており、初期段階として製造業とは別に発電部門専用のワーキンググループを2025年8月に新設しました。このWGでは、発電部門に特有の業界状況を踏まえつつ、排出枠配分に適したベンチマーク方式を模索しています。
発電ベンチマーク 定義
発電ベンチマーク検討ワーキンググループとは、経済産業省が主導するGX-ETS準備の一環で、発電部門向けの排出枠配分ルールを具体化するために設置された専門委員会です。ここでいう「ベンチマーク」とは、発電量1MWh当たりのCO2排出量(排出原単位)を示し、業界全体で達成すべき標準値を示す指標です。一般的にメンバー企業ごとの排出枠は「基準活動量(直前3か年度平均の発電量)」にこのベンチマーク値を乗じて算定され、年々基準値を下げることで排出削減を促す仕組みです。ベンチマーク方式では、同業界内で上位X%の性能 (低い排出原単位)を参考に基準値が設定されるため、新技術導入の促進にもつながります。
発電ベンチマーク 変更点
今回のWG検討において、従来の枠組みから変わった主なポイントとしては、発電部門を個別に議論するためのグループが新設された点と、燃料種別ベンチマークの採用方向が明確になった点が挙げられます。第3回会合までの議論では、従来案にあった「火力全体の平均値」ではなく「燃料種別ごとのベンチマーク」とする案が提出・支持されました。これにより、石炭火力、ガス火力、石油火力でそれぞれ異なる排出原単位を基準とし、再生可能エネルギーや原子力発電は配分対象外となる方向が鮮明になりました。
発電ベンチマーク 基礎
GX-ETSでは、従来のグランドファザリング方式(過去実績基準)とは別に、ベンチマーク方式の配分が検討されています。ベンチマーク方式では、各企業の基準活動量(制度開始前の3か年度平均発電量)に業界共通の排出原単位を掛けて割当量を決定します。この排出原単位は同業界内で上位の企業群(X%以内)のレベルに設定され、年ごとに段階的に引き下げられます。例えばメンバー企業それぞれの2023~25年度の平均発電量と燃料別排出強度を用い、算定された初年度ベンチマーク×各年度の実績発電量で割当量が計算される想定です。また、GX-ETSの適用対象はCO₂直接排出量が10万トン以上の事業者と定められており、発電部門では電気事業法上の発電事業者が主な対象となります(ただしGX法により国や地方公共団体は除外)。
発電ベンチマーク 論点
| 論点 | 重要度 | 判断のポイント | よくある誤解 | SSPの推奨スタンス |
| 対象事業者範囲(境界) | 高 | 電気事業法上の発電事業者(送配電向け発電所を運営する事業者)であるか確認する。 | 国や地方自治体も対象と誤解しがち(実際はGX法で除外)。 | 発電事業者に限定し、国・地方は除外。自己消費のみの非公開供給は対象外と解釈。 |
| 対象電源 | 高 | 発電所での発電電力量とCO2排出量を対象とし、発電所内消費・自営線による自家使用分等は含めない。火力発電(石炭・天然ガス・石油)を対象とし、再エネ・原子力はCO2排出源ではないため除外する。 | 送電ロスまで含めると誤解される場合がある。再生可能エネルギーも何らかの配分対象と誤解される場合がある。 | 系統への供給量・排出量のみを基準とし、自営線等の電力は計算上除外する。火力発電を燃料別に区分してベンチマーク設定。非化石電源は配分対象外とし、別扱いとする。 |
| 副生燃料・混焼 | 中 | バイオマスや水素の混焼分は各燃料の排出原単位にどう反映するか検討する。発電量比等で配分する必要あり。 | バイオマス混焼分を無条件でゼロ排出と見なす誤解や、燃料切替で過大に減算される誤認。 | 混焼分の排出量も燃料別原単位に基づく配分に含めるルールを明確化。例えば発電量割合で各燃料のベースに加算。 |
| 割当計算式 | 高 | 割当量=基準活動量(直前3年平均発電量)×各燃料の排出原単位で計算する案が提示されている。 | 割当量が固定値と思われる誤解や、活動量の定義(販売量か発電量か)を混同すること。 | 各年度の発電電力量に燃料別ベンチマーク(排出原単位)を乗じて算出する方式を想定。基準活動量は直近3年平均として固定する。 |
発電ベンチマーク 比較
| 発電方式 | 現行の国内制度例 | WGで検討中のベンチマーク案 |
| 石炭火力 | 省エネ法で燃料別発電効率の目標設定 | 石炭火力に対応するCO2排出原単位ベンチマーク(燃料種別案) |
| 天然ガス火力 | 省エネ法で燃料別発電効率の目標設定 | 天然ガス(LNG) 火力に対応するCO2排出原単位ベンチマーク |
| 石油火力 | 省エネ法で燃料別発電効率の目標設定 | 石油系火力に対応するCO2排出原単位ベンチマーク |
| バイオマス混焼 | 省エネ法では石炭等火力に含めて効率目標を設定 | 石炭火力に混焼バイオマスの排出量を加味する方式を検討中 |
| 原子力発電 | 省エネ法の対象外(エネルギー消費対象外) | ベンチマーク配分の対象外 (CO₂直接排出なし) |
| 再生可能(風力・太陽光等) | 省エネ法の対象外(エネルギー消費対象外) | ベンチマーク配分の対象外 (CO₂直接排出なし) |
表中の例では、石炭・ガス・石油火力は現行省エネ法でも燃料種別ベンチマーク対象ですが、WG案ではさらにCO2排出強度ベンチマークを導入します。一方、原子力や太陽光・風力など非化石電源は現時点で配分対象外と見られています。
発電ベンチマーク 手順
1.制度対象の確認
自社のCO₂直接排出量が過去3年平均で10万トン以上かを確認する。該当する場合はGX-ETS適用対象となるため、以降の対応が必要です。
2.自社対象範囲の把握
自社が電気事業法上の発電事業者に該当するかを確認する。関連する発電施設や自家発電が対象に含まれるか(送配電向けか自己消費か)を明確化する。
3.データ整備
基準期間(例:2022~2024年度)の発電電力量とCO2排出量の実績データを正確に集計・検証する。第1回WG資料で示されたように、経産省から2025年9月頃に同データの提出要請があったため、社内データを速やかに準備しておく。
4.WG検討内容の把握
発電ベンチマークWGおよび排出量取引制度小委員会の説明資料や議事録を定期的に確認し、自社への影響を整理する。特に、燃料種別ベンチマークの具体案や対象範囲に関する議論内容を把握する。
5.対策の検討
WG案に基づいて自社の割当可能量を試算し、実際の排出量とのギャップを分析する。割当量が不足しないよう、設備効率向上や燃料転換、再エネ導入などの省エネ・脱炭素対策を検討する。
6.検証体制の整備
制度開始後に提出する排出量報告書の作成や第三者検証に備え、温室効果ガス排出量算定・記録の管理体制を整備する。GHGプロトコル等に基づいたデータ収集・算定手順を確立し、必要な帳票類を準備しておく。
発電ベンチマーク FAQ
Q1 発電ベンチマーク検討ワーキンググループとは何ですか
A1 WGは、2026年度から本格実施されるGX-ETSにおける発電部門向けの割当方式を検討する経産省の組織です。排出枠配分を燃料種別の性能基準 (ペンチマーク)で行う案が議論されており、現時点では石炭・天然ガス・石油の火力発電ごとに異なる排出原単位を設ける方針になっています。
Q2 ベンチマークによる割当方式とは何ですか
A2 ベンチマーク方式では、各企業の割当量を「基準活動量(例:過去3年平均発電量)」に業界共通の排出原単位(CO₂/MWh) を乗じて算定します。排出原単位は同業界内の上位X%の水準に設定され、毎年段階的に低減されるため、全体として排出量を徐々に削減する効果があります。
Q3 どのような事業者がWGの検討対象になりますか
A3 原則としてGX-ETSの適用対象は「直近3年平均CO₂直接排出量が10万トン以上」の事業者です。発電部門では電気事業法上の発電事業者が主な対象で、例えば送配電用に発電所を運営する事業者が想定されます。GX法の規定により、国や地方公共団体は義務対象から除かれます。
Q4 燃料種別ベンチマークとは何ですか
A4 燃料種別ベンチマークとは、石炭火力・ガス火力・石油火力など燃料ごとに異なる排出原単位を設定する方式です。第3回WGでは、火力発電を燃料の種類別に分けてベンチマークを設定する案が示され、賛同が得られました。これにより、従来の「火力全体平均」ではなく各燃料の特性に応じた割当が可能になります。
Q5 GX-ETSはいつから始まりますか
A5 GX-ETSは2026年度から本格運用されることが決まっています。当初は試行期間を経て2026年度に本格稼働し、2033年度以降は発電事業者向けに有償オークションも導入される予定です。2025年度中に制度設計が固められ、2026年4月から第一年度の取引が開始される見込みです。
Q6 企業は何をすればよいですか
A6 まず自社がGX-ETSの対象かどうか確認し (CO2排出量の閾値や発電事業者の該当有無)、当面は2022~24年度の発電量・排出量データを整備してください。その上で、WGの資料や今回の記事で示した論点を踏まえ、ベンチマーク適用後の割当量を試算し、省エネ・燃料転換策の検討を始める必要があります。制度開始前に第三者検証の準備も進めておきましょう。
発電ベンチマーク まとめ
発電ベンチマーク検討ワーキンググループでは、GX-ETSにおける発電部門の排出枠配分を燃料別ベンチマークで行う方策が議論されています。現時点では石炭・天然ガス・石油火力それぞれに異なるCO2排出単価を設定する案が示され、非化石電源は直接対象外となる見通しです。企業はこれに備え、基準年の発電・排出データを整備するとともに、燃料別の排出削減策(省エネ・燃料転換・再エネ導入など)を検討する必要があります。
参考リンク
- 経済産業省「発電ベンチマーク検討ワーキンググループ」 公式ページ
- 経済産業省(2025年8月)「発電ベンチマーク検討WGの設置について」(第1回WG資料)
- 経済産業省(2025年9月)「発電ペンチマーク検討WGにおける論点について」(第2回WG資料)
- 経済産業省(2025年10月)「発電ベンチマーク (案)について」(第3回WG資料)
- 経済産業省(2025年12月)「発電ベンチマークの具体的水準等について」(第4回WG資料)


