【カーボンフットプリント CFP】定義・概念の基本解説

気候変動問題への取り組みが世界的に加速する中、製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)を定量的に把握する手法として、カーボンフットプリント(CFP)が注目を集めています。企業としても、サステナビリティ戦略の一環としてCFPを活用することが重要になってきています。しかし、いざCFPに取り組もうとした際、「そもそもCFPとは何か」「ほかの環境指標とはどう違うのか」といった疑問が生じます。
本記事では、CFPの定義・概念を中心に、企業が理解すべき基本的なポイントを解説します。
CFPの由来や狙いを把握することで、企業としての取り組み方針を明確にします。

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目次

1. カーボンフットプリント(CFP)の定義と起源

引用:環境省 カーボンフットプリント ガイドライン

CFPの定義とライフサイクル排出量

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Product)とは、製品・サービスのライフサイクル全体(原材料の採掘・生産、製造、流通、使用、廃棄・リサイクル等)において排出される温室効果ガス(GHG)の総排出量をCO₂換算で数値化したものを指します。

単なる製造過程のみならず、サプライチェーンのあらゆる工程を対象とし、その合計を製品1単位あたりの排出量(例:1個あたり○kg-CO₂)などで表示します。
この「ライフサイクル排出量」の考え方は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法が基礎となっており、製品やサービスの環境負荷を体系的に評価するうえで重要な役割を果たします。

CFP概念の起源と世界的な普及

CFPの起源は、もともと個人や組織が直接排出する二酸化炭素量を示すカーボンフットプリント(Carbon Footprint)という概念が普及したことがきっかけです。そこから派生し、製品やサービスレベルでの排出量を可視化する「CFP(of Products)」が発展してきました。2000年代後半以降、欧米を中心に製品ごとの環境ラベルやCO₂表示に対する関心が高まり、イギリスのカーボントラストが食品・飲料などを対象にしたCFPラベリングを実施したことで、世界的に注目度が増しました。日本でも2009年頃から環境省と経産省が連携してCFPの制度試行を行うなど、官民を挙げた取り組みが始まっています。

2. CFPが果たす役割と目的

引用:環境省 カーボンフットプリント ガイドライン

製品レベルでの排出可視化と削減行動の促進

CFPの最大の目的は、製品のライフサイクルにおけるGHG排出量を「見える化」し、企業や消費者がその情報を踏まえて排出削減や環境負荷の低減に取り組めるようにすることです。
企業にとっては、どの工程が排出量の多くを占めているかを定量的に把握できるため、削減策をより効果的に講じることができます。また、消費者にとっては、CFP情報を活用して環境配慮型製品を選択するインセンティブが生まれます。こうした需要側の変化は、サプライチェーン全体の脱炭素化にもつながると期待されています。

企業ブランディングとリスクマネジメント

近年、多くの投資家や取引先が企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みに注目しており、環境負荷低減が評価指標の一つとなっています。CFPの情報は、企業がどの程度真剣に環境課題に向き合っているかをアピールするうえで効果的です。
さらに、今後導入が予測されるカーボンプライシングや、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)のような炭素関連の規制対応を考慮すると、製品単位の排出情報を把握しておくことは、コスト増リスクや市場競争力低下を回避するためのリスクマネジメントにもなります。

3. CFPを理解するうえで押さえておくべき概念

弊社にて作成

LCA(ライフサイクルアセスメント)との関係

CFPはLCAに基づき、CO₂排出量に特化して算定・表示する仕組みといえます。LCAでは、温室効果ガス以外の環境影響(大気汚染物質や水使用量など)も評価しますが、CFPではGHG排出量に焦点を当てる点が特徴です。とはいえ、算定プロセスはLCAと共通する部分が多く、CFP算定を行う場合はISO 14040/44といったLCA関連規格や、ISO 14067(製品のカーボンフットプリント算定規格)などを参照することが推奨されます。

Scope1,2,3との違い

企業の排出量を扱う際、Scope1(直接排出)、Scope2(間接排出)、Scope3(その他のサプライチェーン全体)といったGHGプロトコル上の分類が頻繁に用いられます。CFPは、製品単位でライフサイクル全体を評価するため、Scope1,2,3の概念を横断的にカバーします。特にScope3における「該当カテゴリの排出量を個別製品レベルで算定する」アプローチとしてCFPが役立ちます。
Scope1~3は企業全体の排出に注目する枠組みであるのに対し、CFPは製品ごとの排出量把握に特化している点が異なります。

4. CFPの国内外での動向

引用:カーボンフットプリント(CFP)制度試行事業について

日本における制度試行とガイドライン

日本では2009年から環境省・経済産業省主導で「カーボンフットプリント制度試行事業」が開始され、食品や日用品を中心にCFP表示の実験的な取り組みが行われました。その結果、企業・消費者双方の意識啓発には一定の効果があることが確認されましたが、コストやデータ収集の難しさなど課題も浮上しました。現在では、最新の国際規格(ISO 14067など)を踏まえた「カーボンフットプリントガイドライン」や「実践ガイド」を公開し、企業のCFP導入を後押ししています。また他社比較表示は原則不可となります。

欧州や米国での展開

欧州では、EUが製品環境フットプリント(PEF)の導入を推進しており、CFPもその重要な指標として位置付けられています。また、EU電池規則やCBAM(炭素国境調整措置)などにより、製品単位での排出情報開示が事実上求められる流れが始まっています。
一方、米国では連邦レベルでの統一的なCFP表示義務はありませんが、企業やNGOが独自のカーボンラベルを運用する動きが広がっており、州単位・企業単位での取り組みが活性化しています。今後、世界各地での規制強化や市場ニーズの高まりを踏まえ、CFP情報の国際的なやり取りが一層重要になると見込まれます。

5. CFPまとめ

本記事では、カーボンフットプリント(CFP)の定義や概念を中心に、その起源から目的、関連する環境評価手法や規格との関係まで概説しました。企業がCFPに取り組む意義は、単に環境配慮のアピールにとどまらず、GHG排出削減の具体的な方策立案、リスクマネジメント、さらには海外規制対応やブランドイメージ向上など多岐にわたります。
次の記事では、より詳細な計測手法や計算ツールについて解説していきます。CFPを実務レベルで導入する際には、ライフサイクル全体のデータ収集手順やソフトウェアの活用方法が不可欠です。ぜひ続けてお読みいただき、貴社におけるCFP活用の可能性を探ってみてください。

引用元

環境省:カーボンフットプリント制度試行事業

カーボンフットプリント(CFP)関連資料(環境省)

ISO 14067:2018 (Greenhouse gases — Carbon footprint of products — Requirements and guidelines for quantification)

ISO 14040:2006 (Environmental management — Life cycle assessment — Principles and framework)

ISO 14044:2006 (Environmental management — Life cycle assessment — Requirements and guidelines)

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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