ISO14064およびISO14065は、温室効果ガス(GHG)の排出量を測定、報告、検証するための国際規格として、気候変動対策の信頼性と透明性を高める役割を果たしています。ISO 14064は、組織およびプロジェクトレベルでのGHG排出量の管理方法を定め、ISO 14065は、それらを検証する第三者機関の能力基準を提供します。本記事では、それぞれの規格の詳細な内容とその相互関係について解説し、実際の適用事例や期待される効果を紹介します。
![](https://susstap.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/d86aae1f77a596fc73447eafefe2766e-5-1024x365.png)
1.ISO14064の概要
ISO 14064は、温室効果ガス(GHG)の算定、報告、検証を行うための一連の国際規格です。
この規格は、気候変動への対応を目指す組織やプロジェクトに透明性と一貫性をもたらします。
ISO 14064は以下の3つの部分で構成されます。
ISO 14064-1: 組織レベルのGHG排出量および吸収量の算定・報告。
ISO 14064-2: プロジェクトレベルでの排出削減量の評価と報告。
ISO 14064-3: GHG主張の妥当性確認および検証。
2.ISO14064-1 組織レベルのGHG排出量および吸収量の算定・報告
組織全体でのGHG排出量と吸収量の測定および報告を行うための枠組みを提供します。
組織境界の設定:
組織全体、または特定の施設単位で排出管理の範囲を定義します。支配基準(運用管理基準)または出資比率基準を用いて算定対象を明確化します。
排出源の識別と分類
排出源をScope1(直接排出)、Scope2(間接排出)、Scope3(その他の間接排出)に分類。Scope3はさらに15のカテゴリに細分化され、サプライチェーン全体を対象とします。
データ収集と算定方法
活動データ(例: 燃料消費量、電力使用量)を収集し、国際的に承認された排出係数を使用して排出量を算出します。
報告要件
排出量データ、基準年、算定方法、削減目標などを含む詳細な報告書を作成し、ステークホルダーへの透明な情報開示を行います。
引用:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-verification/brief_info/mat_2010.pdf
3.ISO14064-2 プロジェクトレベルでの排出削減量の評価と報告
特定のプロジェクトにおけるGHG削減量や吸収増加量を測定し、その効果を評価するための基準を規定しています。
ベースラインシナリオの設定
プロジェクト未実施の場合の排出量(ベースライン)を基準とし、削減効果を評価します。
削減量の算定
再生可能エネルギープロジェクトやエネルギー効率化プロジェクトの削減効果をデータに基づいて算出します。
モニタリング計画
データ収集、検証方法を明確化し、改善プロセスを支援します。
報告と検証
第三者保証機関によるデータ妥当性確認を受け、報告内容の信頼性を確保します。
引用:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-verification/brief_info/mat_2010.pdf
4.ISO14064-3 GHG主張の妥当性確認および検証
組織やプロジェクトが報告するGHGデータの正確性と信頼性を独立した第三者が検証するための基準です。
検証の範囲と目的の明確化
検証対象(例: 排出量全体、削減プロジェクト)と目的を定義します。
リスク評価とサンプリング
データ不正確性のリスクを評価し、リスクに応じたデータサンプリングを実施します。
検証報告書の作成
検証結果を文書化し、透明性を確保します。
5.ISO14065の概要
ISO 14065は、GHGの妥当性確認および検証を行う第三者機関の能力基準を提供します。この規格は、ISO 14064シリーズの実行において重要な補完的役割を果たします。
適用範囲
ISO 14064-1およびISO 14064-2に基づくGHG主張の妥当性確認および検証に関連します。
原則
公平性、透明性、力量を重視し、信頼性の高い検証を保証します。
要求事項
ガバナンス構造の整備、専門知識を持つ人材の確保、適切な検証プロセスの策定が求められます。
引用:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-verification/brief_info/mat_2010.pdf
6.ISO14064とISO14065の相互関係
ISO 14064は、組織やプロジェクトがGHG排出削減や吸収増加を報告するための基準を提供します。
一方でISO 14065は、それらの主張を第三者が評価し、信頼性を確保するための基準としても機能する為、これらの相互補完的関係により、気候変動対策の一貫性と信頼性が確立されています。
7.ISO14064の適用事例と期待される効果
製造業
工場でのエネルギー使用量削減をISO 14064-1に基づき算定。
再生可能エネルギープロジェクト
太陽光発電の削減効果をISO 14064-2を活用して算出。
サプライチェーン管理
Scope3排出量の評価とサプライヤー協力による削減推進など。
8.ISO14064まとめ
ISO 14064およびISO 14065は、気候変動対応を目指す企業や組織にとって不可欠な規格です。これらの規格を適切に活用することで、GHG排出量の透明な管理、効率的な削減、そして持続可能性の実現が可能となります。
![](http://susstap.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/e5913f744a7f5d890cad29cb07da1c0c-300x169.jpg)
![](https://susstap.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/Scope123-4-1024x367.jpg)