製品カーボンフットプリント(CFP)の検証は、組織単位のGHG算定の検証とは論点の重心が異なります。組織の算定が拠点ベースで積み上げるのに対し、CFPは製品ベースで按分するため、配分の考え方そのものが検証の中心になるためです。本記事では、株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズ(SSP)が実施したCFP検証案件において確認された誤りと論点を10の類型に整理します。


CFP検証の誤り 要約
CFP検証で指摘が集中するのは、アロケーション(配分)、原材料データの整合性、算定範囲の記録、規格の理解と組織算定との関係(規格の役割区分・組織GHGとの算定範囲の差・証憑の水準)の4領域です。なかでもアロケーションは、計算そのものが誤っていなくても、その配分方法が製品の実態を反映しているかという別の問いが残るため、論点になりやすい領域です。
アロケーション(配分)で確認される論点
単一の工場で複数の製品を製造している場合、工場全体の活動量を製品別に配分する必要があります。この配分がCFP検証の中心的な論点です。
論点1 配分の考え方と根拠資料が整備されていない
配分を適用する場合、採用したシナリオとその考え方を説明できる状態にあること、そして根拠資料が準備されていることが前提になります。配分の計算が実行されていても、なぜその配分方法を選んだのかが文書化されていないケースが確認されています。
配分の方法自体には幅があります。工場全体または生産ライン単位の活動量を取得したうえで生産量の体積比で配分する方法、使用量の大きいプロセスを個別に計測し、残る共通部分を全体で按分する二段階の方法などです。いずれも合理的な選択になり得ますが、選択の理由が説明できなければ妥当性を確認できません。
論点2 配分計算が数学的に相殺され製品間の差が出ない
興味深い現象として、異なる製品の1単位あたり活動量が、原材料以外の項目でほぼ同一の値になるケースが確認されています。
原因は配分の計算式にあります。「全体の活動量 × (対象製品の生産量 ÷ 全体の生産量)÷ 対象製品の生産量」という式では、分子と分母が相殺されるため、結果は全体の活動量を全体の生産量で割った値に収束します。差異は小数第6位から第7位でしか生じません。原材料だけは製品ごとの投入量が異なるため差が出ます。
この現象自体は計算ミスではありません。ただし、配分の結果が製品ごとの実態を反映しているとは限らないため、配分方法の適格性を別途確認する必要が生じます。
原材料データで確認される誤り
CFPは製品1単位あたりの数値を出すため、原材料の投入量が起点になります。ここでの単位や整合性の問題が、そのまま結果に伝播します。
論点3 原材料投入量の単位が混在している
原材料の投入量データで、単位が本・グラム・ダースなど混在し、重量への換算係数の根拠が不明確な例があります。機械が自動測定した値をシステムに記録している場合でも、単位欄の記載がそろっていないことがあります。
CFPは製品1単位あたりで表現されるため、単位の統一は結果の比較可能性に直結します。単位の前提と換算係数の根拠が記録されていない状態では、後から換算の妥当性を確認できません。
論点4 マテリアルバランスが合わない
原材料の投入量が、製品の重量と廃棄物の量の合計とおおむね一致するかというマテリアルバランスの確認は、算定から漏れている排出源を発見する手がかりになります。差が大きい場合、把握されていないアウトプットが存在する可能性があります。
ただしこの確認は、工場全体で配分計算を行っている場合には製品単位では機能しにくくなります。製品単位のバランスが工場全体のデータに依存するためで、実質的には組織単位の確認に近づきます。CFPのなかでどこまでこの確認が有効かは、算定の構造によって変わります。
算定範囲の記録で確認される誤り
CFPでは、何を含め何を除いたかの記録が算定結果と同等に重要になります。
論点5 除外の理由がカットオフ基準に記載されていない
製品に直接寄与しない用途のガスを除外している場合、その判断が手順書のカットオフ基準に記載されていないケースが確認されています。たとえば、設備の絶縁用として使用されているガスは、製品に直接使用されるものではないため除外の判断が成り立ちますが、使用の事実がある以上、除外した旨とその理由を記録する必要があります。
論点6 ライフサイクルフロー図がない
CFP検証の最初の重要な段階は算定範囲の妥当性確認であり、対象製品のライフサイクル全体を俯瞰できるフロー図が前提になります。フロー図に含まれるべき要素は、各プロセス段階(原材料調達・輸送・製造・流通・使用・廃棄等)の明示、バウンダリの内外の区分(カットオフした工程がある場合はその理由を含む)、主要なインプットとアウトプットの概略の3点です。
論点7 手順書に書くべき情報と書かなくてよい情報が逆転している
CFPの手順書に、活動量の詳細な数値が記載されている一方で、カットオフ基準に関わる情報が記載されていないことがあります。手順書の役割は算定方法論とカットオフ基準の説明であり、具体的な数値は算定シート側で管理されます。
製造工程における個別の機器や装置の情報も、基本的には手順書に必要ではありません。ただし、製品によって算定範囲に差がある場合(一方の製品には特定の設備が含まれ、他方には含まれない等)、その差異はカットオフに関わるため記載が必要になります。
規格の理解と組織算定との関係
論点8 算定規格と検証規格の役割が混同されている
ISO 14067は製品CFPの算定規格、ISO 14064-3は検証の規格という役割の区分があります。Scope1・2・3であってもCFPであっても、検証に用いる規格はISO 14064シリーズのうち妥当性確認と検証を扱うISO 14064-3です。
CFPの場合、「ISO 14067を参照して作成された自社の基準に基づく算定に対して、ISO 14064-3により保証手続を実施した」という整理になります。保証報告書に算定規格を記載する場合、記載の仕方によっては当該規格そのものに照らして保証したように読めるため、参照関係が正確に表現されているかが論点になります。
論点9 組織GHGとCFPで算定範囲が食い違う
同じ企業の同じ拠点であっても、組織GHGの算定範囲とCFPの算定範囲は一致しません。製品に直接寄与しない用途のガスがCFPでは除外される一方、組織GHGでは算定の対象になる、という構造があるためです。
確認されているのは、CFP側で除外したガスが、組織GHG側では単に算定漏れになっているというパターンです。こうしたガスの算定漏れ自体は珍しくありません。両者の算定範囲の差分が意図されたものかどうかは、それぞれの手順書を並べなければ判別できません。
論点10 証憑の水準が財務監査と同じだと想定されている
CFP検証において必要となる証憑の水準は、財務監査とは異なります。会計監査に相当する原本証憑が求められるわけではなく、データの追跡可能性が確保されていること、算定の根拠が第三者に説明・再現可能であることが基本の線になります。社内の管理表、集計資料、算定根拠資料のレベルで成立する領域です。
この認識が共有されていないと、事業者側が過度に重い証憑の準備に着手し、本来の論点であるアロケーションの整理に時間を割けなくなるという状況が生じます。証憑の量ではなく、算定の各段階がつながって説明できるかどうかが問われます。
CFP検証の誤り まとめ
CFP検証の論点は、組織GHGの検証とは重心が異なります。組織GHGが「漏れなく積み上がっているか」を問うのに対し、CFPは「配分が製品の実態を表しているか」を問うためです。配分は計算が正しくても、その方法が実態を反映していないという別種の問題を残します。
あわせて、算定範囲の記録がCFPでは結果と同等の重みを持ちます。何を含め、何をどの理由で除いたか。この記録がないと、算定結果の数値だけでは範囲の妥当性を判断できないためです。
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参考リンク
環境省 カーボンフットプリント ガイドライン・実践ガイド
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/cfp_calculation.html
環境省 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度 制度概要
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/about.html


