第三者保証とIAASB(国際監査・保証基準審議会)について解説

IAASB(International Auditing and Assurance Standards Board)は、国際的な監査および保証業務に関する基準を策定する機関であり、透明性の高い財務および非財務情報の提供を通じて公共の利益を促進することを目的としています。この機関は、財務情報の監査だけでなく、サステナビリティ情報やその他の保証業務を対象とする国際基準を開発し、信頼性の高い報告を実現するための枠組みを提供しています。

上記に加えて公益活動を監督する国際会計士連盟(IFAC)の支援を受けて運営されており、監査人や保証業務提供者が使用する基準を策定しています。IAASBが策定した基準は、世界中の規制当局や企業に採用され、国際的に一貫性のある報告と保証業務を支えています。

目次

1. IAASBの歴史

IAASBの起源は1977年に設立された国際会計士連盟(IFAC)に遡ります。当初、IFACは世界中の会計士や監査人を結びつけ、国際的に統一された会計および監査基準を策定するための枠組みを提供していました。その後、2001年にIAASBがIFACの専門部門として設立され、監査および保証基準の策定に特化した機関となりました。

設立当初、IAASBの主な活動は財務報告書の監査に適用される国際監査基準(ISA)の策定でした。これにより、異なる規制環境を持つ各国間で一貫性のある監査手法が可能になり、国際的な市場の信頼性の向上をもたらしたのです。

その後、2000年代以降の金融危機や、投資家が非財務情報を含むより包括的な企業情報を求める動きに対応する形で、IAASBは保証基準の適用範囲を拡大しました。2013年には非財務情報を対象とした「ISAE 3000」を改訂し、環境、社会、ガバナンス(ESG)情報の保証業務を含む広範な分野に対応し、現在では、ESG情報に特化した新たな基準「ISSA 5000」の策定に取り組み、保証業務の枠組みをさらに拡充しています。

2. IAASBの役割と目的

IAASBは、信頼性の高い監査および保証基準を策定し、以下の目的を達成するために活動しています。

・公共の利益の保護: 透明性の高い情報提供を通じて、市場参加者の信頼を確保
・一貫性のある国際基準の策定: 監査業務や保証業務における世界的な一貫性を促進
・市場信頼性の向上: 財務および非財務情報の正確性と透明性を保証

これにより、IAASBはグローバル市場の信頼性向上に寄与し、投資家やステークホルダーが適切な意思決定を行えるよう支援しています。

3. IAASBの主要活動と基準

IAASBは、監査業務と保証業務に関連する基準を策定することを主な活動としています。

・国際監査基準(ISA): 財務諸表監査に適用される基準
・国際保証業務基準(ISAE): 非財務情報を対象とした保証業務の基準
・国際品質管理基準(ISQM): 監査品質の向上を目的とした基準

これらの基準は、実務者に明確な指針を提供し、保証業務の質を確保しています。

引用:https://jicpa.or.jp/about/activity/activities/iaasb/basic/

4. IAASBと他の国際機関との連携

・IOSCO(証券監督者国際機構): 基準の実効性を高めるためのパートナー
・IESBA(国際会計倫理基準審議会): 倫理基準との整合性を確保
・ISSB(国際サステナビリティ基準審議会): サステナビリティ情報の基準との統一

これらの連携により、IAASBは基準の品質と適用範囲をさらに拡大しています。

5. IAASBが策定した基準の例

ここではISAシリーズとISAEを紹介します。

ISAシリーズ: 財務諸表監査を対象とした基準

ISA 700(監査報告書の形成)
ISA 315(リスクの特定と評価)

ISAシリーズ: 非財務系を対象とした基準

ISAE 3000: 財務以外の保証業務を対象とした汎用基準
ISAE 3410: 温室効果ガス排出量に関する保証業務の基準

これらの基準は、財務情報から非財務情報まで、幅広い対象をカバーし、実務者にとって不可欠な指針となっているのも事実です。

6. サステナビリティ保証におけるIAASBの進化

近年、サステナビリティ情報の重要性が高まる中、IAASBは新たな基準「ISSA 5000」の策定を進めています。この基準は、従来のISAE 3000ではカバーしきれなかったサステナビリティ情報に特化しています。

ISSA 5000

・サステナビリティ情報の保証: GHG排出量やESG情報を対象にした透明性の高い基準
・一貫性と信頼性: 国際的に統一された保証基準の提供
・将来的な基準統合: ISAE 3000を補完する形でISSA 5000が策定され、最終的には統合

7.第三者保証とIAASBまとめ

IAASBは、監査および保証業務における基準策定を通じて、透明性と信頼性の高い報告を実現することを目指しています。その歴史的な役割から、現在進行中のISSA 5000の策定に至るまで、IAASBはグローバル市場の信頼性向上に大きく貢献してきました。特に、サステナビリティ情報に特化した保証基準の策定は、持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みとなっています。

参考・引用
国際監査・保証基準の基礎知識
https://jicpa.or.jp/about/activity/activities/iaasb/basic

国際監査・保証基準審議会(IAASB)
https://jicpa.or.jp/specialized_field/translation/iaasb.html

国際監査・保証基準審議会( 国際監査・保証基準審議会(IAASB)における最近の取組について
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20100326/04.pdf

IAASB原文
https://www.iaasb.org/news-events/2023-08/iaasb-launches-public-consultation-landmark-proposed-global-sustainability-assurance-standard

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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