2026年のCDPでは、企業の温室効果ガス排出量に対する第三者保証(独立した機関によるデータ検証)が一層重視されています。本記事では、CDPにおける第三者保証の意義と重要性、2026年の質問書で求められる具体的な要件、そしてCDPスコアを向上させるために企業が第三者保証をどのように活用できるかを解説します。第三者保証を受けることで得られるメリットや、Scope 1、2、3排出量の検証プロセスについても、実務的な観点から具体的に紹介します。


1. CDPにおける第三者保証の意義と重要性
第三者保証によるデータの信頼性向上
第三者保証とは、企業が開示する温室効果ガス(GHG)排出量などのデータを、データ提供者でも利用者でもない独立した専門機関が検証し、その正確性や網羅性を保証するプロセスです。独立性と専門性を備えた第三者による客観的な評価によって、排出量データの信頼性と透明性が飛躍的に高まります。
環境報告のグッドプラクティスとしての位置付け
CDP自身も環境報告のグッドプラクティスとして第三者検証や保証の実施を強く推奨しており、質問書でデータの検証状況を確認することで企業に正確な報告を促しています。つまり、第三者保証は単なる任意の取り組みではなく、信頼性の高い気候情報開示には欠かせないステップと位置付けられているのです。
ステークホルダーからの評価向上
独立機関による検証を経たデータは、投資家や取引先などステークホルダーからの信頼性評価を大きく高めます。正確に検証済みのデータ開示は企業の気候対応における透明性を示す最善の手法であり、企業のレピュテーション強化やリスク管理向上にも資する重要な取り組みです。
2. 2026年CDPにおける第三者保証の要件
スコアリングにおける必須条件と評価の仕組み
CDP質問書では以前からGHG排出量の第三者検証状況が問われてきましたが、2026年においてもその重要性は引き続き高いままです。スコア獲得の前提となる必須条件(Essential Criteria)については、ごく一部の微調整に留まり、大きな変更はない見込みとされています 。
GHG排出量の検証状況を問う設問や評価ウェイトは維持されており、はい(実施済み)と回答して検証の詳細を報告することでポイントが付与されます。逆に未実施の場合、それ以上の詳細設問が表示されず、加点機会を失う仕組みになっています。
リーダーシップレベル獲得への影響
CDPのスコアリングでは、排出量の第三者検証自体が独立した評価項目として扱われています。とりわけリーダーシップレベル(最高評価AまたはA-)を目指すには、第三者保証の実施が前提条件となります。検証を受けていない企業は、他の設問で高得点を取ってもスコアがB(マネジメントレベル)止まりとなり、A-以上には到達しません。
求められる検証範囲の目安
CDPの評価基準では、少なくともScope 1およびScope 2排出量の100%が第三者検証されていることがリーダーシップポイントの条件となっています。加えて、Scope 3排出量についても主要なカテゴリで70%以上が検証済みである場合に高評価が与えられます。最高評価のAリストを得るには、Scope 1・2が100%第三者保証済みであり、かつ少なくとも1つの主要Scope 3カテゴリで70%以上検証済みであることが必要条件です。これらを満たさない企業はA評価にはなり得ないため、保証の範囲はスコアを左右する決定的な要素となります。
3. 第三者保証を活用したCDPスコア向上策
排出量データの保証範囲の拡大
第三者保証の取得は、CDP上の評価点を高めるだけでなく、自社の環境経営を高度化する機会となります。スコアアップのためには、まず自社で管理可能なScope 1・2データについて確実に100%の第三者保証を取得し、基本的な加点を確保することが先決です。
次に、サプライチェーン由来のScope 3排出量についても、カテゴリーの重要度に応じて検証を検討します。特に排出量が多いカテゴリで70%以上をカバーする検証を実施できれば、CDPで追加ポイントを得られます。優先度の高い領域から順次保証範囲を拡大していくのが効果的です。
検証基準の遵守と保証レベルの向上
CDPはISO 14064-3やISAE 3000など、国際的に認められた基準に基づく検証を有効とみなしています。第三者保証を依頼する際は、これら公認基準に沿った手続きで検証を行う必要があります。
また、保証には限定的保証や合理的保証といったレベルの違いがあります。CDP質問書では検証の有無だけでなく保証水準も報告させる仕組みになっており、合理的保証のような高い水準の取得は追加の加点要素となるため、可能な範囲でレベルの引き上げを検討しましょう。
検証声明の戦略的活用
検証プロセス完了後に発行される保証報告書(検証書)は、排出量データに対する客観的な証拠として社内外に公開できます。CDP提出時だけでなく、自社のサステナビリティ報告書等でも保証取得の事実を明示することで、気候情報開示に対する真摯な姿勢をアピールし、企業価値の向上に繋げることが可能です。
4. 第三者保証の取得プロセスと実務
検証計画の立案と事前分析
まず、企業と検証機関が協議し、検証の範囲(対象とする排出源や対象年度、Scope 1・2・3の含め方)、適用する基準、保証レベル、およびスケジュールを決定します。検証人は事前に提供された排出量算定に関する資料を分析し、データに矛盾や抜け漏れがないか、算定方法が妥当かを予備評価します。
現場検証とデータ修正のプロセス
続いて、検証人が担当者へのインタビューや現地訪問を実施し、データの裏付け証拠を確認します。電力会社の請求書や燃料購入記録などのエビデンスを抽出し、報告値と照合します。
検証過程で誤りが見つかった場合、検証人は企業に指摘し修正を促します。最終的に残存する不確実性が許容範囲内であると判断されれば、検証作業が終了します。このプロセスには一定の時間が必要なため、CDPの提出期限から逆算して早めに準備を開始することが重要です。
保証声明書の発行と信頼性の担保
検証完了後、検証結果をまとめた保証声明書が発行されます。報告書には対象とした排出量の範囲や適用基準、検証意見などが記載されます。厳格なプロセスを経て発行された声明は、自社の排出量算定が正確に行われていることを裏付け、企業の開示情報に対する信頼性を一段と高める役割を果たします。
5. まとめ
第三者保証は、CDPスコアの向上と信頼性の高い情報開示の双方において、企業にもたらす価値が大きい取り組みです。2026年のCDPでも引き続き重視されるポイントであり、高評価を目指す企業は積極的に導入を検討すべきでしょう。戦略的に第三者保証を活用し、環境情報開示の質を高めることが、持続的なレピュテーション強化に寄与します。
引用
https://www.cdp.net/ja/disclosure-2026


