SSBJ基準はIFRS S1・S2を踏襲しながら、日本の法制度や実務に合わせ構成・用語を調整した“日本版”基準です。適用基準・一般基準・気候関連基準の三本立てでIFRS要求をほぼ反映しつつ、一部追加オプションや独自基準の可能性を含みます。企業グループ単位での報告や有価証券報告書への統合を想定し、多様な意見を反映することで負担と比較可能性を両立させています。SSBJ基準とIFRSの違いや特徴について解説します 。

1.SSBJ基準の基本構成
SSBJ基準は、その構成においていくつか特徴的な工夫がされています。まず基準の体系として、前述のように「適用基準」「一般基準」「気候関連基準」の3つが策定されています。適用基準はサステナビリティ開示全般に適用される包括的な要求事項を定め、一般基準はサステナビリティ関連のリスク・機会に関する具体的な開示項目を定めています。気候関連基準は気候変動という特定テーマに関する詳細な開示要求事項を示すものです。これはIFRS S1を2分割し、さらにIFRS S2を加えた形で、日本版の基準群を分かりやすく構成したものといえます。
また、SSBJ基準では用語や表現が日本の実務になじみやすいように調整されています。例えば、IFRS基準の英文をそのまま翻訳するのではなく、日本の法令・制度用語に合わせた言い換えや、読解を助ける注記の追加などが行われています。こうした工夫により、グローバル基準の内容を保持しつつ、日本企業が理解・適用しやすい基準書となるよう配慮されています。
2.IFRS S1・S2との整合性と相違点
整合性の面では、SSBJ基準はIFRS S1「一般的要求事項」とIFRS S2「気候関連開示」の要求を原則すべて反映しており、その意味では大きな相違はありません。これは国際的な比較可能性を重視する方針によるもので、IFRSで求められる開示は日本企業にも同様に求められると考えてよいでしょう。一方で相違点は3つあります。
基準の構成方法
IFRSでは「一般的要求事項(S1)」と「気候関連開示(S2)」をそれぞれ単一の基準として定めていますが、日本版ではS1を二分割し、「一般基準」と「サステナビリティ開示基準」の2つに分けています。一方で、「気候関連開示基準」はIFRS S2と整合しており、開示内容に違いはありません。この構成の違いは、あくまで形式的なものであり、開示の実質的な要求には影響を与えません。
いくつかの任意的な追加取扱いの存在
SSBJ基準ではISSB基準にない独自の選択適用項目がごく一部で検討されています。例えば比較情報の扱いや開示様式など技術的な部分で、ISSB基準より柔軟な取扱いを認める可能性があります(こうした場合でも、ISSB基準に準拠しないことにはならないとの立場です)。
将来の追加基準の余地
IFRSでは気候以外のテーマ別基準がまだ無い一方、欧州など他の枠組みでは多様なESGテーマを網羅する基準が登場しています。SSBJは必要に応じてISSB基準にない項目を追加する可能性もありますが、この場合でも既存のISSB基準から大きく逸脱しない範囲(企業がISSB基準に基づく開示を準備する過程で取得する情報で対応できる事項)に限定される可能性が高いです。
総じて、SSBJ基準とIFRS S1・S2は内容的に高い整合性を保ちながら、一部国内事情への配慮がなされた“IFRS基準の日本版”と言えます。
3.日本独自の基準としての特徴
SSBJ基準は国際基準をベースとしつつ日本独自の要素も持っています。その特徴の一つが日本の法制度との親和性です。SSBJ基準は金融商品取引法に基づく有価証券報告書での開示を前提として策定されており、日本のディスクロージャー制度に組み込まれる形で運用されます。
例えば、報告主体は連結財務諸表と同一範囲(企業グループ単位)であることや、報告タイミングは年度決算と同時であることなど、開示形式に関する規定は日本の開示実務を踏まえて明文化されています。また、日本企業に多い「統合報告書」との関係では、統合報告書で任意開示してきたESG情報が今後は有価証券報告書に移行・統合されることになるため、SSBJ基準は事実上統合報告書の標準化を進める役割も果たします。さらに、日本独自の特徴としてステークホルダーの関与が挙げられます。
SSBJは設立当初から産官学の専門家や企業実務家を交えた諮問会議を持ち、多様な意見を取り入れて基準開発を進めてきました。これにより、日本の企業文化や産業構造に即した議論が行われ、例えば過度に開示負担が大きくならないよう配慮するなど実務的な観点が反映されやすくなっています。一方で、国際的な比較可能性を損なわないことも強く意識されており、「日本独自」の色合いは必要最小限に留められています。
要するに、SSBJ基準は日本市場のニーズと国際調和とのバランスを追求した基準であり、日本企業にとって実践的でありながらグローバルにも通用する情報開示を実現するための枠組みと言えるでしょう。
引用元
IFRS財団(ISSB)
https://www.ifrs.org/groups/international-sustainability-standards-board/
IFRS S1・S2 最終基準の概要
https://www.ifrs.org/

