【CBAM】CBAMにおける第三者保証の役割と重要性

CBAM(炭素国境調整メカニズム)では、排出量データの信頼性確保のために第三者保証(第三者による検証)が不可欠な要素となっています。

2026年1月1日より、CBAMは「本格適用期間(Definitive Period)」に突入し、EU輸入者に対しては、検証済みの排出量データを用いた申告が法的に義務付けられました。本記事では、CBAMにおいて必須となった第三者保証の具体的な役割、検証プロセスの実務、そして日本企業が直面する対応について解説します。

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目次

1.CBAMと排出量データの信頼性

ここではCBAMにおける排出量の正確性について記載していきます。

厳格性

CBAMは輸入品の炭素排出量に応じて課金を行う仕組みであるため、その根拠となるデータの正確性が制度の生命線です。2026年以降、デフォルト値(標準値)の使用は原則禁止され、工場ごとの実測データ(Primary Data)に基づく報告が必須となりました。この厳格なルール運用により、データの信頼性を担保しています。

第三者保証の導入

本格導入が始まった現在、輸入者が提出する年間排出量申告(CBAM宣言)には、認定された第三者検証機関による検証レポートの添付が義務付けられています。EU-ETSと同様に、独立した検証機関が「データに虚偽がないこと」を証明しなければ、CBAM証書の清算手続きが進まず、最悪の場合、輸入許可が下りないリスクも生じています。

2.第三者保証の役割

CBAMにおける第三者保証の役割について解説していきます。

データの正確性と公平性の担保

第三者保証の第一の役割は、提出された排出量データの正確性を客観的に証明することです。検証機関は、データの算定根拠(計測機器の校正記録や燃料請求書など)を詳細にチェックし、不正や誤謬がないかを確認します。これにより、炭素コストの負担が公平に行われる市場環境が維持されます。

コンプライアンスリスクの低減

検証済みのデータを使用することは、企業にとって最大の防御策です。検証機関のお墨付きを得たデータであれば、事後監査で「過少申告」を指摘され、追徴課金やペナルティを受けるリスクを大幅に低減できます。

炭素コスト戦略の最適化

正確な検証データを持つことは、コスト管理の面でも有利です。自社製品の正確な排出原単位(Embedded Emissions)が確定すれば、必要なCBAM証書の購入枚数を正確に予測でき、為替や炭素価格の変動リスクを織り込んだ財務計画を立てることが可能になります。

3.第三者保証のプロセスと国際基準

CBAMに対応する第三者検証のプロセスは、一般的なGHG排出量検証の手順に則って進められます。

検証プロセスの流れ

CBAM検証は、以下のステップで進められます。

  1. 検証契約: EU加盟国の認定機関(NAB)から認定を受けた検証機関を選定・契約。
  2. サイト訪問(オンサイト検証): 検証機関が日本国内の工場を訪問し、製造プロセスやデータ管理体制を実地確認。
  3. 検証レポート発行: 問題がなければ「検証意見書」が発行され、輸入者はこれをEU当局(CBAMレジストリ)へ登録。(※修正)

CBAMに精通した検証機関(Notified body)の活用

CBAMの検証を行うことができるのは、EU規則に基づき認定された検証機関に限られます。日本の検証機関であっても、EU基準の認定を取得している必要があります。検証機関のリソース不足が懸念される中、早期にパートナーを確保することが重要です。

4.国際基準との整合性とメリット

CBAMの検証スキームは、国際的な温室効果ガス算定・報告基準とも整合性が取られるよう設計されています。

GHGプロトコルとの整合性

CBAMの算定ルールは、EU-ETSの基準をベースにしつつ、GHGプロトコル等の国際基準とも一定の整合性が図られています。ただし、境界設定(システム境界)や、前駆体の扱いなど、CBAM独自の細則(Implementing Acts)が存在するため、単純なISO 14064準拠だけでは不十分なケースがあります。

ISO・IAF基準との整合性

CBAM検証は、ISO 14065(検証機関に対する要求事項)等の国際規格に基づき実施されます。したがって、すでにISO 14001やGX-ETS検証に対応している企業であれば、既存のデータ管理体制をベースに、CBAM固有の要件を追加する形で効率的に対応を進めることが可能です。

5.第三者保証で信頼性と競争力を両立

CBAMにおける第三者保証は、もはや「任意の加点要素」ではなく「市場参加への必須条件(License to Operate)」となりました。

適切な検証を受け、信頼性の高いデータを提供できる企業は、EU輸入者にとって「リスクのない取引先」として選好されます。第三者保証を単なるコストと捉えず、自社の製品品質の一部(データの品質)として戦略的に活用することで、脱炭素市場における競争優位を確立できるでしょう。

引用元

Carbon Border Adjustment Mechanism Proposal – 検証要件
EUR-Lex: CBAM Regulation Proposal

国際規格・基準:ISO 14064、ISO 14067、GHGプロトコル
ISO 14064 (GHG accounting and verification)
ISO 14067 (Carbon Footprint of Products)
GHG Protocol

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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