【カーボンフットプリント CFP】総合ガイド

企業の気候変動対策の一環として、近年カーボンフットプリント(CFP)の算定に取り組む企業が増加しています。特に2025年以降、EUの製品規制(電池規則等)やデジタルプロダクトパスポート(DPP)の実装により、CFPは任意の情報開示から「市場アクセスの必須条件」へと役割を変えつつあります。

CFPとは、製品やサービスのライフサイクル全体(原材料の調達から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルまで)で排出される温室効果ガス(GHG)排出量を二酸化炭素換算で数値化し、製品などに表示する仕組みを指します。本記事では、CFPの基礎知識から最新の規制動向、算定ツール、そして企業が享受できるメリットまでを網羅的に解説します。

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目次

CFPが注目される背景と重要性

地球温暖化対策として2050年までにカーボンニュートラル(GHG排出実質ゼロ)の達成が世界的な目標となる中、製品ごとの排出量を把握するCFPへの注目が高まっています。

ネットゼロ社会を実現するためには、単一企業だけでなくサプライチェーン全体でGHG排出削減に取り組む必要があり、製品ごとのCFPを算定・表示することは、脱炭素・低炭素な製品(グリーン製品)が選択される市場を創出する基盤となります。実際、グローバルな調達要件としてCFPデータの提供が求められるケースが急増しており、データを持たない製品は市場から排除されるリスクすら生じています。

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CFP算定とライフサイクルアセスメント(LCA)

CFPは製品・サービスのライフサイクル全体を対象としているため、その算定にはライフサイクルアセスメント(LCA)の手法が用いられます。国際規格であるISO 14067やGHGプロトコル(Product Standard)に基づき、原材料の採掘から廃棄に至る各段階でのGHG排出量を合算します。

この「見える化」された情報を活用することで、企業はホットスポット(排出の多い工程)を特定し、原材料の変更や製造プロセスの改善といった具体的な削減アクションに繋げることができます。

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公的ガイドラインと算定ツール

日本においては、経済産業省・環境省が共同で「カーボンフットプリントガイドライン」および「CFP実践ガイド」を策定し、企業の実務を支援しています。また、サプライチェーン全体でのデータ共有を促進するため、企業間のデータ連携基盤(ウラノス・エコシステム等)の社会実装が進められています。

算定ツールとしては、産業連関表ベースの簡易ツールから、SimaProやGaBiといった専門LCAソフト、さらにはクラウド型の炭素管理プラットフォーム(SaaS)まで多様な選択肢があります。算定結果の信頼性を高めるためには、第三者による検証(保証)を受けることが推奨されており、特に海外規制対応においては検証報告書が必須となります。

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各国の動向と CFP の今後

CFPの取り組みは日本国内に留まらず、海外でも急速に制度化が進んでいます。

欧州(EU)の動向

  • エコデザイン規則(ESPR): ほぼ全ての製品に対し、環境性能(CFP含む)を示す「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」の付与を義務付ける規則が施行されています。
  • 電池規則: 2025年からEV用バッテリー等のCFP宣言が義務化され、上限値(閾値)を超える製品はEU域内で販売できなくなります。
  • CBAM(炭素国境調整措置): 鉄鋼やアルミニウム等の輸入製品に対し、原産国での排出量報告と、EU-ETS価格との差額調整(課金)が本格運用されています。

これらの動きに対応するため、日本企業も国際基準に準拠したCFP算定と、データ連携基盤を通じた情報共有が不可欠となっています。

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企業にとってのメリットと留意点

メリット

  • 市場競争力の維持・強化: 規制対応はもちろん、環境意識の高い顧(BtoB/BtoC)からの選好度を高められます。
  • コスト削減の機会発見: エネルギー多消費工程を特定し改善することで、製造コストの削減にも直結します。
  • 資金調達の円滑化: サステナブルファイナンスの要件として、製品の環境性能証明が有利に働きます。(※修正)

留意点
ライフサイクル全体のデータ収集には、サプライヤー(Scope3上流)からの一次データ提供が鍵となります。自社だけで完結できないため、サプライヤーとのエンゲージメントや、共通のデータ交換ルール(Catena-X等)への準拠が必要となります。また、算定結果が「グリーンウォッシュ」と見なされないよう、第三者検証による客観性の担保が重要です。

まとめ

本記事では、カーボンフットプリント(CFP)の概要から、すでに始まっている国際的な規制対応までを総合的に解説しました。

2026年現在、CFPは任意の取り組みから「ビジネスの免許証(License to Operate)」へと進化しました。企業はこれを単なるコストと捉えず、サプライチェーン全体を巻き込んだデータ連携と脱炭素化を推進し、新たな競争優位を築くための戦略的ツールとして活用することが求められます。

引用元

環境省・経済産業省
「カーボンフットプリントガイドライン」(第1部・第2部) / 「CFP実践ガイド」
グリーンバリューチェーンプラットフォーム(環境省・経産省)

フランス政府公式サイト
https://www.gouvernement.fr/

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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