カーボンフットプリントとは? CFPの定義・概念を解説

気候変動問題への取り組みが世界的に加速する中、製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)を定量的に把握する手法として、カーボンフットプリント(CFP)が注目を集めています。企業としても、サステナビリティ戦略の一環としてCFPを活用することが重要になってきています。

しかし、いざCFPに取り組もうとした際、「そもそもCFPとは何か」「ほかの環境指標とはどう違うのか」といった疑問が生じます。特に2025年以降、欧州のエコデザイン規則(ESPR)やバッテリー規則においてCFPの開示が義務化されるなど、CFPは「任意の環境ラベル」から「市場アクセスの必須要件」へと役割を変えつつあります。

本記事では、CFPの定義・概念を中心に、企業が理解すべき基本的なポイントを解説します。

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目次

1. カーボンフットプリント(CFP)の定義と起源

引用:環境省 カーボンフットプリント ガイドライン

CFPの定義とライフサイクル排出量

カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Product)とは、製品・サービスのライフサイクル全体(原材料の採掘・生産、製造、流通、使用、廃棄・リサイクル等)において排出される温室効果ガス(GHG)の総排出量をCO₂換算で数値化したものを指します。

単なる製造過程(Gate-to-Gate)のみならず、サプライチェーンのあらゆる工程を対象とし、その合計を製品1単位あたりの排出量(例:1個あたり○kg-CO₂e)などで表示します。この「ライフサイクル排出量」の考え方は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法が基礎となっており、国際規格ISO 14067によって算定ルールが規定されています。

CFP概念の起源と世界的な普及

CFPの起源は、もともと個人や組織が直接排出する二酸化炭素量を示す概念が普及したことがきっかけです。そこから派生し、製品レベルでの排出量を可視化する「CFP」が発展してきました。当初は英国のCarbon Trustなどによる自主的なラベリングが中心でしたが、現在では欧州委員会による法規制(PEF/ESPR)や、グローバル企業間の調達要件として、世界的に標準化が進んでいます。

2. CFPが果たす役割と目的

引用:環境省 カーボンフットプリント ガイドライン

製品レベルでの排出可視化と削減行動の促進

CFPの最大の目的は、製品のライフサイクルにおけるGHG排出量を「見える化」し、ホットスポット(排出の多い工程)を特定することです。これにより、企業は「材料の変更」や「製造プロセスの省エネ化」など、最も効果的な削減策をピンポイントで講じることができます。

また、消費者や顧客企業にとっては、CFP情報が製品選定の重要な判断基準となります。低炭素な製品が選ばれる市場メカニズムを作ることで、サプライチェーン全体の脱炭素化を牽引する狙いがあります。

企業ブランディングとリスクマネジメント

近年、多くの投資家や取引先が企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みに注目しており、環境負荷低減が評価指標の一つとなっています。CFPの情報は、企業がどの程度真剣に環境課題に向き合っているかをアピールするうえで効果的です。
さらに、今後導入が予測されるカーボンプライシングや、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)のような炭素関連の規制対応を考慮すると、製品単位の排出情報を把握しておくことは、コスト増リスクや市場競争力低下を回避するためのリスクマネジメントにもなります。

3. CFPを理解するうえで押さえておくべき概念

弊社にて作成

LCA(ライフサイクルアセスメント)との関係

CFPは、LCA(ISO 14040/14044)の手法を用いて、評価対象を「気候変動(GHG排出)」という単一の環境影響領域に絞ったものです。LCAは水資源や資源枯渇なども評価しますが、CFPは最も緊急性の高い気候変動対策に特化している点が特徴です。実務上は、CFP算定のために収集したデータを活用して、完全なLCAへと発展させることも可能です。

Scope1,2,3との違い

  • Scope1, 2, 3: 「組織(企業全体)」の年間排出量を評価する枠組み。
  • CFP: 「製品1単位」のライフサイクル排出量を評価する枠組み。

両者は相互補完関係にあります。特にScope3(カテゴリ1:購入した製品・サービス)の算定において、サプライヤーから提供される実測ベースのCFPデータを積み上げることで、組織全体の排出量算定の精度を劇的に向上させることができます。

4. CFPの国内外での動向

引用:カーボンフットプリント(CFP)制度試行事業について

日本における制度試行とガイドライン

日本では、経済産業省と環境省が連携して「カーボンフットプリント・ガイドライン」を整備し、素材・小売・自動車など業界別の算定ルール策定を支援しています。また、GXリーグにおけるルール形成や、データ連携基盤(ウラノス・エコシステム)の実証など、企業間でCFPデータを安全に共有するためのインフラ整備が官民一体で進められています。

欧州や米国での展開

欧州では、「エコデザイン規則(ESPR)」に基づき、製品の環境性能を示すデジタルプロダクトパスポート(DPP)の実装が進んでいます。これにより、繊維、鉄鋼、電池などの重点製品においてCFP情報の開示が法的義務となります。米国でも、カリフォルニア州などで気候関連情報の開示義務化が進んでおり、グローバル市場でビジネスを行う日本企業にとって、CFP対応は待ったなしの状況です。

5. CFPまとめ

本記事では、カーボンフットプリント(CFP)の定義や概念を中心に、その重要性と最新動向について解説しました。

CFPはもはや「環境意識の高い製品のアピール」ではなく、「グローバルサプライチェーンへの参加切符」となりつつあります。正確な算定(LCA手法)と、サプライチェーンを通じたデータ連携の仕組みを早期に構築することが、これからの製造業における競争力の源泉となるでしょう。

次の記事では、より詳細な計測手法や計算ツールについて解説していきます。CFPを実務レベルで導入する際には、ISO 14067に準拠したデータ収集手順や、効率的な算定ツールの活用が不可欠です。ぜひ続けてお読みください。

引用元
環境省:カーボンフットプリント制度試行事業
カーボンフットプリント(CFP)関連資料(環境省)
ISO 14067:2018 (Greenhouse gases — Carbon footprint of products — Requirements and guidelines for quantification)
ISO 14040:2006 (Environmental management — Life cycle assessment — Principles and framework)
ISO 14044:2006 (Environmental management — Life cycle assessment — Requirements and guidelines)

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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