【PPA】PPA契約の法的留意点と規制対応のポイント

PPA契約を日本で導入するにあたっては、電力事業に関わる法律・規制の制約を踏まえたスキーム設計が必要です。また、契約書上で環境価値の取り扱いや長期契約ならではの条項を適切に定めることも重要なポイントです。ここでは、日本におけるPPA契約の法制度上の留意点と、企業が取るべき規制対応策について解説します。

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目次

1.日本の電気事業法制に基づく制約と対応策

小売電気事業者の必要性

日本の電気事業法では、発電した電気を送配電ネットワーク経由で他者に供給する事業を行うには国への小売電気事業者登録が必要とされています。したがって、発電事業者が直接需要家に電力を販売する「直接型」のオフサイトPPAは原則として認められていません。実務上、需要家が遠隔地の発電所から電力供給を受ける場合は、需要家と小売電気事業者、発電事業者の三者間契約とすることで法規制に適合させています。この形では需要家は小売電気事業者から電力を購入し、小売が発電事業者とPPAを結ぶことで、結果的に需要家が再エネ電力を得るスキームとなります。

直接契約を可能にする例外

電気事業法にはいくつか例外規定もあります。ひとつは構内供給の例外で、同一の建物内や同一敷地内に限定した電力供給は小売事業者でなくても許可不要で行えます。オンサイトPPAが特別な許可なく実現できるのはこのためです。一方、敷地外への供給については、自己託送や特定供給という制度が関与します。2021年の法改正・指針策定により、発電事業者と需要家が「密接な関係」を有する場合には、送配電網を介して両者間で電力をやり取りできる道が開かれました。

具体的には、需要家と発電事業者が共同で合同会社や協同組合を設立し、その組合を通じて需要家に電気を送る形です。この場合、小売電気事業の登録がなくても経済産業大臣の特定供給の許可を得て電力供給事業を営むことが可能になります。ただし許可要件として供給先は資本関係など密接な関係にある者に限られ、かつ組合方式による場合は原則自営線(専用送電線)での供給に限定されるなど、実務上ハードルは高いです。要するに、一般の第三者企業間で送配電網を用いた直接PPAを行うことは依然困難であり、現状では多くの企業が小売電気事業者を介したスキームで対応しているのが実情です。

規制対応のポイント

以上を踏まえ、企業としては自社のPPA導入に適した法的対応策を検討する必要があります。最も簡便なのは、既存の小売電気事業者が提供するコーポレートPPAメニューを活用することです。自社が契約主体となって発電事業者・小売と三者契約を結び、法令順守しつつ再エネ電力を調達できます。さらに踏み込んだ手法として、自社グループで小売電気事業者のライセンスを取得し、グループ内でPPA電源を調達する方法もあります。実際に、前述のヒューリック社は子会社を小売登録させ、自社グループ内のフィジカルPPAを実現しました。これにより柔軟な契約設計と中間マージンの社内化を図っています。ただし小売事業への参入には制度知識やコストも伴うため、慎重な検討が必要です。一方、自己託送スキームは法的枠組みとして可能性は示されたものの、組合設立や許可取得など煩雑であり、実例は限られます。今後さらなる規制緩和が進めば、より直接的なPPAも普及する可能性がありますが、現時点では間接型を前提に計画を立てるのが無難と言えます。

2.環境価値の取扱いと契約上の留意事項

非FIT電源の選択

PPA契約で再エネ電力を調達する際には、その電源がFIT非適用であることが基本的な前提となります。なぜなら、旧来の固定価格買取制度(FIT)下では発電した電力の環境価値(非化石価値)は国に帰属してしまい、企業が契約しても再エネ利用証明に使えないためです。2022年度から導入されたFIP(Feed-in Premium)制度では、発電事業者が環境価値を保持したまま電力を販売できるようになりました。この制度移行により、非FITまたはFIP適用の発電設備とPPAを結ぶことで、需要家は発電由来の環境価値をそのまま取得し、自社の再エネ利用実績としてカウントできる状況が整っています。したがって企業は、PPA契約の対象となる再エネ発電所がFITではなくFIP/非FITであることを確認する必要があります。契約書にも、供給電力に付随する環境価値(非化石証書等)が需要家に帰属し、当該需要家によって利用されることを明記すべきです。

契約条項上の留意点

PPAは長期かつ特殊な契約形態であるため、契約書において通常の電力契約以上に注意深い条項設定が求められます。まず、前述の法規制対応に関連して「契約当事者」や「契約形態」を明確化し、それぞれの役割と責任範囲を規定します。次に、環境価値の確実な移転のために、非化石証書の発行・譲渡・償却手続きを誰がどのように行うかを具体的に取り決めます。加えて、長期契約ゆえに不可欠な契約期間中の変更・終了条項も重要です。

例えば、「法改正等により契約目的が達成困難となった場合の協議事項」や、「一定期間前通知による中途解約の条件」などを定め、将来の不確実性に備えます。また、先述のリスク対策として、発電量不足時の追加電力調達や価格調整方法、発電所側の長期停止時の救済措置なども盛り込んでおくと安心です。さらに、長期に及ぶPPAでは関係当事者間の定期報告・協議の枠組みを設けておくことも望ましいでしょう。年次での運転状況報告や、技術革新・市場変化に応じた契約見直し検討の場を設けることで、契約期間中の柔軟な対応が可能となります。加えて、契約上は紛争解決方法の明示、損害賠償責任の範囲や上限設定など、長期契約に共通する条項についても漏れなく整備することが求められます。これらの点に適切に対処することで、企業は法規制を遵守しつつ、安全かつ効果的にPPA契約を活用できるでしょう。

以上のように、PPA契約の法的側面では電気事業法の制約への対応策検討と、契約上のきめ細かな条項設定がポイントとなります。企業としては、自社内の法務・電力担当部門のみならず、必要に応じ専門の法律顧問やコンサルタントの助言を得ながら、法令順守と自社利益確保のバランスの取れた契約を締結することが重要です。適切な規制対応と契約管理によって、リスクを抑えつつPPAのメリットを最大限享受できるでしょう。

引用元
自然エネルギー財団
https://www.renewable-ei.org

オフサイトコーポレートPPAについて
https://www.env.go.jp/earth/off-site%20corporate.pdf

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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