Profession-Agnostic制度とは、サステナビリティ情報の保証業務において、公認会計士や監査法人に限定せず、幅広い専門家が保証を担えるようにする仕組みを指します。金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」においても議論されており、今後の保証制度のあり方として注目されています。
従来、財務報告の保証は公認会計士や監査法人が主に担ってきましたが、非財務情報・サステナビリティ情報は環境・社会・ガバナンス(ESG)といった多様な分野を含むため、専門性の違いから従来の監査プロセスに当てはめることが難しいという課題があります。そこで、サステナビリティ分野の専門家や第三者機関を保証業務に組み込むことで、品質のより高い検証を行い、透明性と信頼性を高めることが期待されています。
本記事では、Profession-Agnostic制度の背景、必要性、利点と課題、そして従来の保証制度との比較について詳しく解説します。

1. Profession-Agnostic制度の背景
本制度の背景の背景として、サステナビリティ情報開示の義務化、既存保証制度の限界が挙げられます。
サステナビリティ情報開示の義務化
サステナビリティ情報の開示は、ISSB基準(IFRS S1およびS2)やEUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)などの国際的な規制によって強化されています。企業は、以下のようなデータを開示する必要があります。
・温室効果ガス(GHG)排出量
・気候関連リスク
・生物多様性や水資源の利用
・人的資本情報(ISO30414に基づくデータ)
・サプライチェーン全体のESGデータ
既存の保証制度の限界
従来の保証制度では、財務情報の監査を前提としたプロセスが採用されており、サステナビリティ情報の保証をカバーするには限界があると指摘されています。その主な課題は以下の通りです。
・財務監査の専門家がサステナビリティ情報の保証を担うには知識のギャップがある
・ESGデータの計測手法や算定基準が確立されていないため、監査の手法が統一されていない
・公認会計士や監査法人のみでは対応しきれないほど保証対象が拡大している
こうした課題を解決するため、Profession-Agnostic制度の導入が検討されています。
2. Profession-Agnostic制度の概要
上記の課題に対して、ここでは本制度がどのようなものか見ていきます。
基本構造
Profession-Agnostic制度では、サステナビリティ情報の保証業務を、監査法人に限定せず、幅広い専門家に開放することで、より適切な保証を実現します。
例えば、以下のような機関が保証業務を提供できるようになります。
・監査法人
・環境・サステナビリティ専門の第三者検証機関
・ISO14065認定等を得たISO審査機関
・サステナビリティ分野の専門家
保証の対象範囲
現行の制度では、財務情報との関連性が強いサステナビリティ情報(GHG排出量やESGデータ)に対して保証を実施しますが、今後は以下の領域も対象になる可能性があります。
・サプライチェーン全体のESGデータ
・人的資本管理(ISO30414に基づく情報)
3. Profession-Agnostic制度のメリットと課題
メリットは下記の4点、課題については3点が挙げられます。
メリット
・専門性の向上
サステナビリティに精通した専門家が保証業務を担うことで、より精度の高い保証が可能になります。
・柔軟な役務提供体制
監査法人だけでなく、環境・サステナビリティ専門の第三者検証機関、ISO審査機関など、最適な役務提供者を選択できる。
・人材不足の解消
公認会計士に依存しないため、より多くの専門家が保証業務に参画し需要に応えることができる。
・国際基準との整合性
EUのCSRDやIAASB(国際監査・保証基準審議会)が求める基準と整合性を持たせることで、国際競争力を高められる。
課題
・品質の担保
保証の担い手が多様化することで、保証の質が均一でない可能性がある。
・規制・基準の策定
保証基準を統一するために、新たなガイドラインや資格認定制度の整備が必要。
・責任の所在
保証業務の担い手が増えることで、問題が発生した際の責任の所在を明確にする必要がある。
4. Profession-Agnostic制度と既存の保証制度の比較
Profession-Agnostic制度と従来の監査制度には、大きな違いがあります。
5. まとめ
Profession-Agnostic制度は、サステナビリティ情報の保証を、監査法人に限定せず、幅広い専門家が担えるようにする新しい仕組みです。今後、サステナビリティ情報の保証が強化される中、企業はProfession-Agnostic制度の適用に備え、適切な保証体制を整備していく必要があります。
