第三者保証(Assurance)は、企業や組織が公表する情報の正確性や信頼性を、独立した外部機関が評価し確認するプロセスを指します。このプロセスは、情報の透明性を確保し、ステークホルダーからの信頼を得るための重要な手段です。
特に、温室効果ガス(GHG)排出量やサステナビリティ報告書、ESG(環境・社会・ガバナンス)データの信頼性が厳しく問われる2025年現在において、その意義はますます高まっています。企業は第三者保証を導入することで、法規制への適合性を示すだけでなく、企業価値を向上させるための強固な基盤を構築することが可能です。


1.第三者保証の歴史と背景
企業が財務諸表の透明性を確保するために監査を受けるのと同様に、非財務情報においても同等の信頼性が求められるようになりました。
1990年代以降、環境問題や社会問題に対する関心の高まりとともに、企業の非財務情報の開示が重視されるようになりました。これは、持続可能な開発目標(SDGs)や責任投資原則(PRI)などの国際的な枠組みの採択を背景にしています。
さらに近年では、パリ協定に基づく脱炭素化の加速や、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、IFRSサステナビリティ開示基準(ISSB)などの規制強化が進んでいます。これにより、企業が開示する情報の正確性を担保するために、独立した第三者による保証が必要不可欠なプロセスへと発展しています。
2.第三者保証の対象分野と役割
第三者保証が適用される主な対象は以下の通りです。
温室効果ガス(GHG)排出量
ISO14064シリーズに基づき、Scope1(直接排出)、Scope2(購入エネルギーによる間接排出)、Scope3(サプライチェーン排出)のデータを算定し、その信頼性を検証します。
サステナビリティ情報
有価証券報告書や統合報告書に含まれる、人的資本や気候変動リスクなどの非財務情報全般。SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準への適合性などが検証対象となります。
ESGデータ
投資家が重視するESG(環境・社会・ガバナンス)指標の正確性を保証することで、機関投資家や格付機関に対するデータの透明性を確保します。
3.第三者保証における主な国際基準とフレームワーク
第三者保証を実施する際には、以下のような国際的な基準やフレームワークが用いられます。
ISAE 3000
国際監査・保証基準審議会(IAASB)が策定した、非財務情報の保証業務を実施する際の包括的な基準(リミテッド・アシュアランス等)。
ISO14064-3 / ISO14065
温室効果ガス(GHG)の妥当性確認・検証に関する国際規格(ISO14064-3)および、検証機関の適格性要件を定めた規格(ISO14065)。
ISO14067
製品のライフサイクル全体におけるカーボンフットプリント(CFP)を算定・検証するための基準。
ISSA 5000
IAASBが策定した、サステナビリティ保証に関する包括的な国際基準(International Standard on Sustainability Assurance)。財務監査と同様の厳格な品質管理が求められる保証業務のグローバルスタンダードです。
4.第三者保証のメリットと重要性
最も重要なメリットは、情報の透明性と信頼性を向上させることで、投資家や消費者などのステークホルダーからの評価を高められる点です。特に、ESG投資が拡大する中で、信頼性が担保された(Assureされた)情報を提供することは、資金調達や企業価値向上に直結します。
また、第三者保証は、実態と異なる過剰な環境訴求を行う「グリーンウォッシュ」のリスクを防ぐ役割も果たします。客観的な視点での検証プロセスを経ることで、企業はブランドイメージを守りつつ、持続可能な成長を実現するためのガバナンス体制を強化できます。
5.第三者保証における今後の展望
カーボンニュートラルやネットゼロを目指す動きが活発化し、日本国内でも有価証券報告書へのサステナビリティ情報記載が義務化される中、第三者保証の需要は急速に拡大しています。
今後は、限定的保証(Limited Assurance)から、より信頼性の高い合理的保証(Reasonable Assurance)への移行が進むと予想されます。また、デジタル技術(AIやブロックチェーン)を活用したデータ収集・検証プロセスの効率化も進んでおり、企業はコストを抑えつつ高品質な保証を受けることが可能になりつつあります。
参考
温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-verification/brief_info/mat_2010.pdf
国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2025/01/overview-of-issa5000.html



