温室効果ガス(GHG)排出量の管理は、地球環境への影響を軽減し、持続可能な社会を構築するために不可欠な取り組みです。国際規格や国内法に基づき、企業は排出量を正確に算定し、透明性のある削減目標を設定することが求められています。その中で、ISO14064およびISO14065をはじめとする規格は、排出データの信頼性を高め、第三者保証による透明性確保に寄与します。本記事では、GHG排出量に関する国際的な基準や国内外の動向を概説し、データ分析と戦略的活用に向けた具体的な指針を提供します。


1,Scope1,2,3の分類と基礎知識
GHG排出量は、直接排出(Scope1)、購入エネルギーに伴う間接排出(Scope2)、サプライチェーン全体を含むその他の間接排出(Scope3)の3つに分類されます。この分類は、企業活動の環境影響を可視化し、効果的な削減施策を特定するための共通言語となります。
- Scope1(直接排出): 自社施設内での燃料燃焼や工業プロセス、所有車両の使用に伴う直接的な排出。
- Scope2(エネルギー起源間接排出): 他社から供給された電力、熱、蒸気の使用に伴う間接的な排出。
- Scope3(その他の間接排出): 原材料調達、輸送、製品の使用・廃棄など、Scope1, 2以外のサプライチェーン全体で発生する排出(15のカテゴリに分類)。
詳細記事 Scope1,2,3 温室効果ガス排出量の分類について解説

2.Scope1,2,3削減のための国際的枠組み
国際的には、UNFCCC(気候変動枠組条約)やパリ協定を中心とした取り組みが進められています。これらの枠組みは、各国や企業が削減目標(1.5℃目標など)に向けて取り組むための統一的な基盤を提供しています。
さらに、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の科学的報告書や、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の開示基準(IFRS S1/S2)は、企業の気候変動戦略の策定において重要な指針となっています(※TCFDの提言内容はISSB基準へ統合・継承されました)。
地域別では、EU ETS(排出量取引制度)が市場メカニズムを活用した効率的な削減を推進しており、中国でも全国規模の排出量取引市場が拡大しています。日本においても、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法や地球温暖化対策推進法に基づき、国際的な枠組みと整合した取り組みが加速しています。
詳細記事 Scope1,2,3削減と国際的枠組み(UNFCCC、IPCC、TCFD)

3.GHGプロトコルやISO14064と国内の排出量報告義務
日本では、エネルギー管理法(省エネ法)と地球温暖化対策推進法(温対法)が、事業者に対してGHG排出量の報告や削減計画の策定を義務付けています。
- エネルギー管理法: 一定規模以上のエネルギーを使用する事業者に対し、中長期的な計画書の提出や定期報告を義務付け。
- 地球温暖化対策推進法: 温室効果ガスを多量に排出する事業者(年間3,000t-CO2eq以上など)に対し、排出量の算定・報告・公表を義務付け。
これらの法的枠組みは、GHGプロトコルやISO14064といった国際基準と相互に補完し合う関係にあり、正確で一貫性のあるデータ管理が法令遵守の観点からも不可欠です。
詳細記事 GHGプロトコルとISO14064 日本国内の排出量報告義務について

4.第三者保証(ISO14064とISO14065)
ISO14064シリーズは、GHG排出量の算定と報告、および検証に関する国際規格です。
- ISO14064-1: 組織レベルでのGHGインベントリの設計・報告。
- ISO14064-2: プロジェクトレベル(削減貢献など)の算定・報告。
- ISO14064-3: GHG声明の妥当性確認および検証のための手引き。
一方、ISO14065は検証機関に対する適格性要件を定めています。これらの規格に基づく第三者保証を取得することで、データの透明性と信頼性が客観的に証明され、投資家や顧客からの信頼獲得につながります。
詳細記事 ISO14064 ISO14065 温室効果ガス算定と報告の国際規格

5.GHGデータの活用と戦略的活用
GHG排出量データを効果的に活用するには、Scope1、Scope2、Scope3それぞれのデータ特性を理解し、適切な指標(KPI)を設定することが重要です。総量削減だけでなく、排出原単位を用いた効率性のモニタリングや、サプライチェーン全体(Scope3)でのホットスポット特定を通じて、実効性のある削減施策を立案できます。
また、SaaS型算定ツールの導入によるデータ収集の効率化や、LCA(ライフサイクルアセスメント)視点での製品設計など、データを経営戦略に統合していくことが、環境パフォーマンスと企業価値の向上に寄与します。
詳細記事 Scope1,2,3の正確な読み取りと戦略的な活用方法

6.まとめ
第三者保証は、GHG排出量データの信頼性を担保し、企業の環境パフォーマンスを透明に示すための重要なプロセスです。正確な算定と検証を経たデータ開示は、ステークホルダーからの評価を高め、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)のリスクを回避することにもつながります。
法規制への対応だけでなく、ネットゼロ社会における競争優位を築くためにも、国際基準に基づくGHG管理と第三者保証の活用が求められています。



