中小企業のためのGHG第三者検証入門

GHG第三者検証は大企業だけのものではありません。GX-ETS第2フェーズの本格始動や、サプライチェーンを通じた取引先からの検証要請により、中小企業にも第三者検証が必要になるケースが増えています。本記事では中小企業がGHG第三者検証に取り組む際のポイントを、初めて検証を受ける企業向けに分かりやすく解説します。

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目次

要約

中小企業がGHG第三者検証に取り組む主なきっかけは、GX-ETSの対象となった場合と、取引先からの検証要請の2つです。中小企業の検証は対象範囲が限定的なため、大企業に比べて検証の工数と費用を抑えられる場合が多くあります。重要なのは検証に必要なデータを事前に整備し、中小企業の対応に慣れた検証機関を選ぶことです。

背景

従来、GHG第三者検証は大規模排出事業者が中心でした。しかし2026年度から始まるGX-ETS第2フェーズでは、CO2直接排出量の年度平均が10万t以上の事業者に対して、登録確認機関による確認業務が法定義務となります。中小規模ながらこの閾値に該当する企業にとっても、第三者確認は必須の対応となります。

さらに、サプライチェーン全体のGHG管理が重視される中で、大企業の取引先である中小企業にも排出量データの信頼性担保が求められる場面が増えています。取引先からScope3算定のためにデータの第三者検証を要請されるケースや、入札条件として検証済みデータの提出を求められるケースが出てきています。

中小企業にとって第三者検証は初めての経験であることが多く、どこから始めればよいか、何を準備すればよいかが分からないという声が少なくありません。

基礎

中小企業にGHG検証・確認が必要になる場面

GX-ETS第2フェーズの制度対象者に該当した場合
排出目標量と排出実績量について、登録確認機関による確認が義務となります(届出期限は毎年9月末)

取引先からサプライチェーン排出量データの検証を求められた場合
主要顧客のScope3算定に貢献するため、自社のScope1/2データの信頼性を第三者が担保する必要があります

CDPサプライチェーンプログラムで回答を求められた場合
CDP対応のための第三者保証の添付でスコア向上を目指すケースが増えています(CDPは評価機関であり、保証そのものはISO 14064-3やISAE 3000等に基づき別途取得します)

自社のサステナビリティ報告の信頼性向上を目的とする場合
統合報告書やサステナビリティレポートの信頼性確保のために自主的に保証を取得するケースです

中小企業の検証・確認の特徴

  • 拠点数が少ないため検証対象が限定的で工数を抑えやすい
  • 排出源の種類が少なく算定方法がシンプルな場合が多い
  • 専任の環境担当者がいないことが多く、データ整備に時間がかかる場合がある
  • 検証プロセス自体が初めてであり、手続きの全体像を把握する必要がある

大企業と中小企業の違い

比較項目大企業の場合中小企業の場合
拠点数多拠点で複数の事業所や工場を含む単一拠点または少数拠点
排出源の複雑さ多種多様な排出源があり算定が複雑排出源の種類が限られシンプルな場合が多い
社内体制環境部門の専任担当者がいることが多い専任担当者がいないことが多く総務や経理が兼任する場合がある
データ管理自社の独自システムを導入していることが多いExcelなど基本的なツールでの管理が中心
検証工数対象範囲が広く工数が多い対象範囲が限定的なため工数を抑えやすい
検証費用対象範囲と拠点数に応じた費用対象範囲が限定的な分、費用も抑えやすい傾向
機関の対応標準的なプロセスで対応初めての検証に対する丁寧な説明やサポートが重要

重要点

データ整備が最も重要な準備

中小企業にとって検証・確認の準備で最も重要なのはデータの整備です。検証機関および登録確認機関は、エネルギー使用量や燃料消費量のデータとその根拠となる証憑の提出を求めます。

データが整備されていればスムーズに進みますが、整備が不十分な場合は追加のヒアリングや資料依頼が繰り返し発生し、期間の延長と費用の増加につながります。

整備すべきデータは以下のとおりです。

  • 各拠点のエネルギー使用量の月次データと、請求書などの証憑
  • 燃料の種類と消費量
  • 排出係数の出典と適用方法
  • 算定方法の概要を記載した文書
  • 組織境界の設定と対象拠点の一覧

機関の選び方

中小企業が機関を選ぶ際には、大企業向けの実績だけでなく、中小企業の対応経験があるかを確認することが重要です。GX-ETS対応の場合は、経済産業大臣の登録を受けた登録確認機関であることが必須条件となります。そのうえで、①第1フェーズからの確認実績、②準拠基準(ISO 14064-3、ISSA 5000、ISAE 3000等)への対応能力、③自社業種に対する知見と経験、④独立性(助言業務と保証業務の分離)、⑤スケジュール柔軟性、⑥2026年度対応のキャパシティ、⑦コミュニケーション体制の7つの観点で比較することを推奨します。

中小企業にとって特に重要なのは、コミュニケーション体制と2026年度対応のキャパシティです。初めての確認業務では、機関側の説明の丁寧さ、窓口担当者の明確さ、質問への回答スピードが手続の円滑性を大きく左右します。また、2026年度は制度対象者が一斉に登録確認機関へ依頼を行う初年度であるため、機関側のリソースが逼迫します。候補機関には、2026年度に受入可能な案件数と、限られた人的リソースで対応する中小企業への配慮が可能かを具体的に確認することが重要です。

SSPはGXリーグ登録確認機関として、大企業から中小企業まで多業種の実績があり、初めての検証・確認にも丁寧に対応しています。

費用を抑えるためのポイント

1. 見積もり前にデータを整備する。データが整備されているほど工数が少なくなり、費用が抑えられます。

2. 早めに依頼する。届出期限直前の依頼は機関側のリソース逼迫により対応が困難になるだけでなく、費用も高くなる傾向があります。

3. 将来の制度対応も含めて相談する。GX-ETSの確認と他の制度対応(CDP対応/SSBJ/SBTi)を一括で依頼することで費用を効率化できる場合があります。

推奨手順

1. 自社が対象か確認する。GX-ETSの対象判定(CO2直接排出量の年度平均10万t以上)を行い、取引先からの検証要請の有無も整理します。

2. 社内の担当者を決める。専任でなくても総務や経理の担当者が兼任で対応できます。機関との窓口を一本化しておくことが効率的です。

3. データを整備する。エネルギー使用量の月次データと証憑を収集し、算定方法と排出係数の出典も整理します。

4. 機関に相談する。中小企業の対応経験がある機関に連絡し、自社の状況を説明したうえで対応方針を確認します。

5. 見積もりを取得し比較する。複数の機関から見積もりを取得し、費用と対応内容を比較します。

6. 契約し検証・確認を開始する。計画の策定からデータ提出、手続きの実施、報告書の受領まで機関のリードに沿って進めます。

論点

論点重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
検証・確認の必要性GX-ETS対象か、取引先要請があるかを確認中小企業には不要制度対象であれば義務。取引先要請がある場合も事実上必要
社内体制の構築兼任体制でも対応可能専門チームがないと受けられない兼任担当者でも対応可。データ整備の事前準備が鍵
算定方法の選択排出係数法が一般的。実測値がなくても対応可能実測データがないと検証できない排出係数法でも出典が明確であれば問題ない
初年度の対応範囲初年度から完璧を目指す必要はない初年度から全て完璧にしなければならない最低限の要件を満たし継続的改善を計画

FAQ

Q1. 中小企業でもGHG第三者検証は義務ですか

GX-ETS第2フェーズの制度対象者(CO2直接排出量の年度平均10万t以上)に該当する場合は、企業規模に関係なく登録確認機関による確認が義務となります。対象でない場合でも、取引先からの要請により事実上必要になるケースが増えています。

Q2. 専任の環境担当者がいなくても検証を受けられますか

受けられます。手続きは機関がリードするため、総務や経理の担当者が兼任で対応することが可能です。重要なのはデータの所在を把握し、証憑を整理しておくことです。SSPでは初めての検証・確認に対して準備段階からのサポートを提供しています。

Q3. 検証・確認にかかる期間はどのくらいですか

中小企業の場合、作業自体で3か月から4か月が目安です。準備期間を含めると4か月から6か月を見込むのが一般的です。データが事前に整備されている場合は短縮できる可能性がありますが、正確な情報は弊社にご相談ください。

Q4. 費用の目安はありますか

費用は対象範囲、拠点数、データの整備状況によって異なるため一律の目安は存在しません。中小企業は拠点数と排出源が限定的であるため、大企業に比べて抑えられる傾向にあります。SSPでは初回相談から見積もりまで無料で対応しています。

Q5. Excelでのデータ管理でも受けられますか

Excelでのデータ管理でも対応可能です。重要なのはデータの整合性が確保されていることと、算定根拠が追跡可能であることです。月次のエネルギーデータと証憑が紐付いた状態で管理されていれば、専用の環境データ管理システムがなくても対応できます。

まとめ

中小企業にとってGHG第三者検証は決してハードルの高いものではありません。対象範囲が限定的であるため、大企業に比べて工数と費用を抑えやすく、専任担当者がいなくても兼任体制で対応が可能です。

成功の鍵はデータの事前整備と、中小企業の対応経験がある機関の選定です。早い段階から相談することで準備の方向性が明確になり、手戻りのない効率的な検証・確認が実現します。

SSPは中小企業の初めての検証・確認にも丁寧に対応しています。初回相談から見積もりまで無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

参考リンク

  • 経済産業省 GX-ETS制度概要
  • 経済産業省 排出量取引制度のマニュアル(登録申請・算定報告・確認等)
  • 環境省 温室効果ガス排出量算定報告マニュアル
  • ISO 14064-3 温室効果ガスに関する主張の妥当性確認及び検証のための仕様並びに手引
  • ISSA 5000 サステナビリティ保証に関する国際基準
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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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