GX-ETS設計概要 2025年ベンチマーク検討WG総括

製造業ベンチマーク検討ワーキンググループ (以下WG)は、2025年に計5回開催され、排出量取引制度における各製造業種のベンチマーク (基準となる排出効率指標) の設定を議論しました。ベンチマークは業種ごとの平均的な排出原単位を示す基準値で、企業への排出枠 (許容排出量) 配分の根拠となります。この記事では、WG第1回から第5回までの議論の経緯を時系列で解説し、主要な論点と各回のポイント、そして今後の実務への影響をまとめます。

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目次

ベンチマーク 結論

製造業ベンチマーク検討WGは、日本の新たなGX-ETS (排出量取引制度)の設計の一環として設置されました。GX-ETSは2026年度から本格稼働し、年平均CO2直接排出量が約10万トン以上の企業 (約300~400社)が参加を義務付けられます 。制度開始当初は排出枠が全量無償で各社に割り当てられ、その際に業種ごとの特性を考慮した政府指針 (ベンチマーク) が用いられる方針です 。ベンチマーク方式は、エネルギー多消費産業でも公平かつ効率的に排出枠を配分し、国際競争力の維持と脱炭素の両立を図る狙いがあります。

結論として、WGの議論を通じて製造業17業種にわたるベンチマーク指標(排出原単位)が策定されました。各業種の生産設備や工程の違いに応じて細分化した基準値を設定し、企業ごとの排出枠が公平性を保ちながら算定される仕組みが整えられました。特に、第5回WGで各業種ベンチマーク案の最終調整が行われ、製品ミックスや設備規模の違いによる排出量のばらつきを補正する方法が示されています。これにより、削減努力以外の要因を排除して企業間比較できるベンチマーク指標が出揃い、年内の小委員会最終決定へと結実しました 。

ベンチマーク 要約

製造業における排出量取引制度のベンチマークとは、各業種の標準的なCO2排出効率(排出原単位)基準値のことです。政府は業種別ベンチマークに基づき排出枠を無償配分し、効率の良い企業は排出枠に余裕が生じ、不効率な企業は不足分を削減や取引で補う仕組みです。

ベンチマーク 定義

ベンチマーク (Benchmark)とは、温室効果ガス排出量に関して業種ごとの標準的な排出効率水準を示す数値です。SSPでは、この数値を「各企業の排出効率を客観的に評価するための基準値」と定義します。排出量取引制度においてベンチマークは、企業へ割り当てる排出枠を算定する際の基礎となり、同業種内で効率の高い企業ほど相対的に多くの枠を受け取ることができるよう設計されています。これは効率的な企業へのインセンティブとなり、産業全体の低炭素化を促進する狙いがあります。

ベンチマーク 背景

日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向け、GX推進法に基づいてカーボンプライシングを導入しました。その柱である排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年度から大規模排出企業に参加義務を課し、各社にCO2の排出枠を割り当てる仕組みです 。割当量(排出枠) の算定方法として、過去の排出実績に基づく方法(いわゆるグランドファザリング方式)ではなく、ベンチマーク方式が採用されました。この背景には、過去実績に依存すると早期に排出削減を進めた企業が不利になるという懸念や、新規参入企業への対応が難しいという課題があります。ベンチマーク方式であれば、業種平均あるいは先進水準の排出原単位を基準とするため、排出効率の高い企業がより多くの排出枠を得られる公平な設計となります。

しかし業種ごとに製造プロセスや製品特性が異なるため、単純な一律基準では公平性を欠く可能性があり、国際競争にさらされる産業では排出コストが企業負担増につながり、カーボンリーケージ (生産の海外移転)のリスクも指摘されています。そこで、経済産業省は産官学の専門家によるWGを設置し、製造業の各分野ごとの最適なベンチマーク値を検討してきました 。対象となった業種は以下の通りです。

  • 石油精製(製油所のエネルギー効率・装置構成の違いを考慮)
  • 石油化学(ナフサクラッカーおよび有機化学品:製品多様性に対応)
  • 紙・板紙(紙パルプ: 製品種別ごとに大きく異なるプロセスに対応)
  • 鉄鋼(高炉・電炉) (高炉による一貫製鉄と電気炉製鋼〈一般鋼・特殊鋼〉)
  • セメント(クリンカー生産などセメント製造工程)
  • アルミニウム(製錬・加工工程、再生アルミ利用率の差異など)
  • 石灰(石灰石焼成プロセス)
  • カーボンブラック (用途・品質特性ごとのエネルギー強度差)
  • ゴム製品(タイヤ等の加硫成形工程など)
  • ソーダ工業(苛性ソーダ・塩素製造:電解プロセス)
  • 板ガラス(フラットガラス製造)
  • ガラスびん (ガラス容器製造)
  • 自動車(自動車組立:塗装工程等のエネルギー消費)

各業種の選定は、日本の産業全体で排出量の大きい分野を網羅しており、これら合計17種類のベンチマーク指標が検討対象となりました 。以下、WG各回の議論内容を時系列で整理します。

ベンチマーク 論点

論点実務での重要度判断のポイントよくある誤解SSPの推奨スタンス
ベンチマークの役割業種平均的な排出効率を示す基準値として排出枠配分に用いるベンチマーク=各社の削減目標値だと考えてしまうベンチマークは目標というより指標であり、効率評価配と分の基礎として位置付けるべき
業種ごとの細分化各業種内でも製品や工程の違いに応じて指標を細分化し公平性を確保単一の基準値で全企業を評価できると考える業種内の多様性を考慮し必要な細分化を行うことが重要。製品カテゴリ別指標の設定を支持
補正係数の導入原料や副産物利用(例:黒液利用)など効率差以外の要因を補正ベンチマーク値は純粋な排出原単位そのものと思い込む補正係数で特殊要因を調整し、削減努力以外の差異を慣らすアプローチを推奨
自家発電・間接排出の扱い工場内発電設備を持つ企業の排出は直接排出に算入(対象外の電力分と差が生じる)ベンチマークが間接排出も含めて評価してくれると期待する現行制度では直接排出のみ対象。自家発電分で不利になる場合は他要因と合わせ補正を検討
国際競争力とリーケージ対策排出コストによる競争力低下を防ぐため初期は全量無償配分+調整措置ベンチマーク適用で直ちに厳しい削減義務が生じると懸念段階的導入を支持。初期は十分な無償配分を行い、将来的に有償配分割合を慎重に拡大
早期削減努力の評価過去に積極的削減を行った企業には割当時に加点(ボーナス措置)基準年以降に削減してしまうと割当が減って損と捉えるEarly Actionのインセンティブを導入し、先行削減企業が不利とならないよう推奨
ベンチマーク値の定期見直し技術進歩や業界動向に合わせ数年ごとに基準値を更新検討一度決まったベンチマークは固定で変わらないと思い込む定期的なレビューが必要。最新データで基準値をアップデートし継続的改善を誘導
他手法(実績配分・オークション)との比較ベンチマークは効率性重視、一方で将来は一部有償オークションも検討中ベンチマークさえ導入すれば市場メカニズムは不要と誤解ハイブリッド型を提案。まずベンチマーク方式で公平配分し、徐々に市場オークション導入で効率向上を図る

ベンチマーク 比較

視点ベンチマーク方式の配分排出実績(過去ベース) 方式の配分
配分の基準業種ごとの基準排出原単位× 活動量で算出。
(効率的な企業ほど配分量に余裕)
過去の排出量(例:直近数年平均)を基準。
(過去排出が多い企業ほど多く配分)
インセンティブ効果効率改善に強い動機付け: 業界平均より低排出なら余剰枠が得られる。
新規参入・増産にも柔軟対応可能。
削減インセンティブが弱い: 排出を減らすと次期配分が減る懸念。
過去実績がない新規参入企業への対応が課題。
公平性公平性が高い: 同業種内で基準が共通なため、類似条件で比較可能。
過去の努力や業態の違いも補正係数で考慮可能。
不公平の恐れ: 削減努力をしてきた企業ほど過去排出が少なく配分が減る。
業種間・企業間の条件差を反映できない。
実務上の負担データ整備が必要: 生産量や製品別排出量データの報告・算定が求められる。
基準値や補正係数の算定には専門知見が必要。
シンプルだが硬直的:過去排出量データさえ用意すれば算定可能。
しかし将来の事業変化を反映しづらく調整の余地が少ない。
将来展開当初は全量無償配分で採用。将来的にオークション(一部有償配分)と組み合わせ、徐々に市場原理も導入する計画 。過去実績方式のままでは排出上限削減のみに依存し、市場取引のメリットが活かせない。
多くの制度は過度な履歴依存を避けベンチマーク等へ移行。

ベンチマーク 章解説

製造業ベンチマークWGの第1回から第5回までの議論を時系列に沿って解説します。各回で対象となった業種と主要な論点、その後の議論へのつながりを整理しました。

第1回(2025年7月24日)

初回会合ではWG設置の目的と今後の進め方が確認され、まず「石油精製」 「石油化学 (ナフサクラッカー・有機化学品)」 「紙・板紙」の3分野に焦点が当てられました。石油精製部門では、石油連盟から業界の現状と排出削減の課題が報告され、製油所のエネルギー効率や装置構成の違いを踏まえたベンチマーク設定の必要性が議論されました。事務局から提示された石油精製ベンチマーク案では、製油所の規模・複雑度指数を取り入れた指標が提案されています。委員からは「海外データも活用しつつ日本の燃料構成でCO2換算しており、国内実態を反映した公平な指標になっている」と評価する声がありました。

石油化学部門では、石油化学工業協会からプロセス特性について説明がありました。製品多様性と工程の複雑さから、一律の指標では適切でないことが強調され、素材産業課からはナフサクラッカー向けのベンチマーク案が示されました。有機化学品については、製品グループごとに別々のベンチマーク値を設定する方針が提示されました。

紙・板紙部門では、紙種によって工程やエネルギー源が大きく異なるため、品種別ベンチマークの必要性が議論されました 。各品種ごとにエネルギー消費原単位の基準値を設定し、品種構成による有利不利を是正するための補正係数が導入されました。さらに紙業界特有の論点として黒液のエネルギー利用があり、「黒液由来エネルギーによる排出削減効果はバージンパルプを使う品種側に重点的に配分し、古紙主体の品種には配分しない」との方針が示されました 。

第2回(2025年9月1日)

第2回WGでは、「鉄鋼」および「セメント」 産業が取り上げられました。鉄鋼分野では、高炉による一貫製鉄と電炉による製鋼のプロセス差が議論の中心となりました。経産省金属課から提示された案では、高炉系と電炉系で別々の基準を設ける方針が示されました。電炉ルートについては、一般構造用鋼と特殊鋼でエネルギー原単位が大きく異なるため、それぞれ別のベンチマーク値を設定する案となりました 。

セメント分野では、石灰石の焼成工程で大量のCO2が発生するプロセス排出と、燃料由来のエネルギー排出が主因です。提示された案では、製造1トン当たりCO2排出量の業界平均値を基準に設定することが提案されました。また、混合セメントを推進する観点から、クリンカー当たり排出原単位で比較するか、混合材使用による削減効果を加味した算定式を検討すると応答しました。

第3回(2025年10月2日)

第3回WGでは、「アルミニウム」 「石灰」 「カーボンブラック」 「ゴム製品」の分野が議題となりました。

アルミニウム産業では、国内の多くを占めるアルミリサイクル工程(二次合金メーカー)のエネルギー消費に着目したベンチマーク案を提示しました。石灰産業では、代表的な炉タイプ(シャフト炉、ロータリー炉等)ごとの基準原単位を設定し、それらを業界平均的な生産シェアで重み付けした合成ベンチマーク値が提案されました。

カーボンブラック部門では、製品用途を「通常用途」 と 「特殊用途」に二分類し、窒素吸着比表面積 (BET値)の範囲ごとに排出原単位を算定する方法が示されました。特殊用途・高比表面積品では補正係数が非常に大きな値となり、製品特性による不利が生じない設計となっています。ゴム製品分野では、タイヤ製造を中心に、業界平均原単位をベースに据え置く方針が示されました 。

第4回(2025年10月27日)

第4回WGでは、「ソーダ工業」 「ガラス (板ガラス・ガラスびん)」 「自動車」の分野を議題としました。

ソーダ工業では、大量の電力を消費する電解プロセスのため、電力消費効率を評価軸とした指標づくりが承認されました。ガラス業界では、板ガラスとガラスびんで別に検討され、板ガラスでは厚み、ガラスびんではカレット投入率を考慮した基準が設定されました。

自動車製造分野では、組立工場でエネルギー消費の大きい塗装工程に着目し、完成車1台当たりの直接CO2排出量を基準指標とする方針が示されました。車種構成の違いによる不公平を避けるため、平均的な乗用車を基準に、車両重量等に応じた補正を加える仕組みが検討されました。自工会からは車種の違いによる調整を慎重に行うよう要望が出されました。

第5回(2025年11月19日)

第5回WGは最終回として、これまで議論された主要業種の案を総ざらいし、全体を俯瞰した仕上げが行われました 。キーワードは「補正の仕方」であり、効率努力とは別の要因による差(品種構成、設備規模、塗装方法、直間比率、副生燃料利用等)をどこまで公平にならすかが集中的に議論されました。

石油精製ではSolomon指数の継続的な運用が、紙・板紙では黒液利用の恩恵配分と直間比率の補正が再度確認されました。カーボンブラックでは用途と品質の違いによるばらつきが補正適用後に大幅に縮小したことが報告されました 。第5回WGの総括として、製造業17種のベンチマーク案が全て揃い、制度全体として整合の取れた指標体系が構築されました 。これらの結果は、2025年12月の排出量取引制度小委員会で正式に了承され、日本のGX-ETSの無償割当ルールが確定しました 。

ベンチマーク 重要点

ベンチマーク算定における公平性の確保

ベンチマーク方式の成否は、企業間の公平性をどこまで担保できるかにかかっています。今回のWGでは、製品カテゴリ別の補正、装置別係数、品質特性区分、エネルギー形態別補正といった多角的な補正要素が組み込まれました。これにより、企業努力とは無関係な構造的要因は予め考慮されたうえで排出枠が配分されます。

公平性確保のテクニカルな例として、石油精製のSolomon指数の活用や、紙パルプ業界の黒液補正(古紙リサイクルの進展度合いを反映)が挙げられます。このような補正を重ねた結果、各業種内で排出原単位のばらつきが大幅に縮小し、残る差異はほぼ各社のエネルギー効率や削減努力の差と見なせる水準になりました 。公平性を維持しつつシンプルさとのバランスを取ることが、今後の制度定着の鍵と言えます。

無償配分の現状と将来動向

GX-ETSは当初、排出枠の100%無償配分でスタートします 。これは産業界の競争力低下や急激な負担増に配慮した措置ですが、政府は中長期的には一部有償配分 (オークション)の導入を見据えています 。

2027年度以降に段階的にオークション比率を高める方針が示唆されています。無償配分が減ることは、CO2排出のコストが顕在化し、排出削減投資の採算性が向上することを意味します。日本では当面、リーケージリスクの高い製造業について無償配分を厚めに残し、オークション導入は慎重に進めるスタンスです。企業は、初期段階で無償配分を最大限活用しつつ、将来的な市場メカニズムの導入に備えてカーボンプライスを内部化した経営判断を進めていくことが重要です。

ベンチマーク 手順

排出量取引制度の開始に向けて、企業が取り組むべき実務対応をステップ形式で示します。

  1. 自社の対象確認
    自社が制度対象(年間CO2排出10万トン以上)に該当するかを確認します。対象であれば、自社の属する業種カテゴリー (ベンチマーク種別) がどれかを把握してください。

  2. 排出データと活動量の整備
    自社の過去数年分の直接排出量と、製品生産量や原料投入量の実績を整理します。必要に応じ品種別や工程別の内訳データも用意します。

  3. 自社排出原単位の算出
    事務局提示の算定式にならって自社の排出原単位を計算します。複数品目にまたがる場合、補正係数を適用して統合原単位を算出します。

  4. ベンチマーク値との差異分析
    公表された業種ベンチマーク値と比較して、自社の排出原単位が上回っているか下回っているかを確認します。上回っている場合は将来的な排出枠不足リスクが高いことを意味します。

  5. 排出枠シミュレーション
    自社の生産量とベンチマーク値に基づき、初年度 (2026年度)および数年先までの割当排出枠をシミュレーションします。自社の排出量見通しを重ね、過不足を試算しましょう。

  6. 対応策の立案
    不足が見込まれる場合は、自社排出削減、クレジット市場での調達、他拠点・他企業との融通などの対策を立案します。削減ポテンシャルの高いものから計画に織り込みます。

  7. 内部プロセス整備
    排出量算定方法の標準化、第三者検証への対応準備、排出枠取引の社内ルール策定など、社内体制を整え経営層への定期報告プロセスを明確にします。

  8. 最新情報のフォロー
    経産省から公表される正式な実施指針や詳細なベンチマーク値を継続的にフォローし、自社計画に反映してください。説明会やガイドラインへの参加も推奨されます。

ベンチマーク FAQ

Q1排出量取引制度におけるベンチマークとは何ですか?

A1: ベンチマークとは、各業種の平均的または先進的なCO2排出効率(排出原単位)を示す基準値です。この値に各社の生産量を掛け合わせることで排出枠が算定されます。業界共通のものさしで企業の排出パフォーマンスを測る仕組みです。

Q2 ベンチマーク値は誰がどうやって決めていますか?

A2: 経済産業省の審議会WGにおいて産業界・有識者の意見を踏まえ策定され、政府指針として最終決定されます 。基本的には業界平均値や優良事例の水準がベースとなり、プロセスの違い等を考慮して補正が行われます。

Q3 中小企業もベンチマークの対象になりますか?

A3: 直接排出量が年10万トン未満の企業は制度上の義務対象ではありません 。ただし、対象企業に製品を供給するサプライヤーであれば、サプライチェーン全体での脱炭素化として削減を求められる可能性があります。

Q4 ベンチマークの値は今後変わることがありますか?

A4: はい、定期的な見直しが行われる可能性があります。技術進歩や燃料転換の状況によって業界平均の排出原単位は変化するため、政府も「必要に応じて見直しを行う」としています 。

Q5 自社の排出原単位がベンチマークより低い(良い)場合、どうなりますか?

A5: 自社の実排出より多めの排出枠を受け取れる可能性があり、余剰分を他社へ売却して収入を得るチャンスになります。将来の生産拡大にも有利であり、競争優位となります。

Q6 自社の排出原単位がベンチマークより高い(悪い)場合、どうなりますか?

A6: 割当排出枠が不足する恐れがあり、不足分を市場から購入するか、自社の削減で埋め合わせる必要が生じます。これはコスト負担につながるため、早期の工程改善が急務となります。

Q7購入電力など間接排出にも排出枠が必要ですか?

A7: 現行のGX-ETS制度では、間接排出に対して排出枠の保有義務はありません 。対象となるのはあくまで Scopel(直接排出)です。ただし自家発電設備を持つ場合は直接排出となるため排出枠が必要です。

ベンチマーク まとめ

製造業ベンチマーク検討ワーキンググループの結論として、ベンチマーク方式は日本の排出量取引制度において産業界の公平性と実効性を担保する中核的なメカニズムとなりました。業種ごとに緻密に設定された指標により、企業は共通物差しで評価され、効率改善への動機付けが働きます。

企業のサステナビリティ担当者にとって、ベンチマークは自社の強み弱みを見極める指標です。ベンチマーク以下の原単位を達成しているならその効率性はアドバンテージとなり、上回っている場合は改善のチャンスと捉えてキャッチアップを急ぐ必要があります。SSPとしては、企業がこの枠組みを前向きに捉え、早期に準備を整えて排出削減と企業価値向上の両立を実現することを強く推奨します。

ベンチマーク 参考リンク

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この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

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