【排出量取引】GXリーグとは?排出量取引を支える日本独自の枠組み

GXリーグ(Green Transformation League)は、日本が2050年カーボンニュートラルを目指す中で設計された、産官学連携による自主参加型の排出量取引制度(GX-ETS)を推進する枠組みです。

2023年度からの試行期間(第1フェーズ)を経て、2026年度からは排出量取引が本格稼働(第2フェーズ)し、一定規模以上の企業には参加義務や目標達成義務が課されるなど、制度は新たな段階へ進んでいます。本記事では、GXリーグの概要、排出量取引の仕組み、参加メリット、そして最新の申請プロセスについて解説します。

※令和7年7月2日に経済産業省 GXグループにて発表された「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」を反映した内容は下記記事となります。

あわせて読みたい
【排出量取引】第2フェーズ設計の更新―令和7年7月経済産業省 委員会を受けて 2026 年度に義務化が始まる GX-ETS(排出量取引制度)は、2024 年12 月の「GX実現に資する排出量取引制度に係る論点整理(案)」で大枠が示されました。その後、政府は ...
あわせて読みたい
【排出量取引制度】GX-ETSセミナー 令和7年7月更新版 セミナー概要 株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズは、2026 年度から本格施行されるGX-ETS第2フェーズへの実務対応を解説するオンラインセミナーを開催い...
あわせて読みたい
【排出量取引制度】GX-ETS 割当水準セミナー 令和7年11月更新版 セミナー概要 株式会社サステナビリティスタンダードパートナーズは、2026年度から本格稼働するGX-ETS第2フェーズにおける排出枠の割当水準を、最新動向と実務手順の双...
目次

1. GXリーグの概要と目的

引用:GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League

GXリーグの成立背景

GXリーグは、経済産業省が主導し、2050年カーボンニュートラル実現に向けた「経済社会システム全体の変革(GX)」を牽引する企業群が結集する場として設立されました。2025年時点で参画企業は750社を超え、日本全体のCO2排出量の5割以上をカバーする巨大な枠組みへと成長しています。第1フェーズの成果を基に、第2フェーズではより実効性の高い削減メカニズムへと進化しています。

国内での「自主的な排出量取引 (GX-ETS)」

GXリーグの核となるのは、日本版排出量取引制度「GX-ETS」です。第1フェーズ(2025年度まで)は企業の「自主的な目標設定」に基づく運用でしたが、第2フェーズ(2026年度以降)からは、大規模排出事業者に対して法的な参加義務や目標達成義務が課される方向で制度設計が進んでいます。これにより、「自主的な取り組み」から「社会的なルール」へと性質が強化されています。

気候変動を取り巻く「市場創造のためのルール形成」

GXリーグは単なる取引の場にとどまらず、新たな市場ルールを官民で議論する場でもあります。具体的には、グリーン製品の定義やカーボンフットプリントの算定ルール、さらには排出削減貢献量(Avoided Emissions)の評価手法など、日本企業が国際競争力を発揮するためのルール作りを主導しています。

2. 排出量取引の仕組み

引用:国内排出量取引制度のあり方について

自主目標の設定

参加企業は、2030年度および2025年度の削減目標(NDC水準以上)を設定します。第1フェーズでは「誓約(プレッジ)」形式でしたが、第2フェーズでは目標設定に際して第三者検証や認証が必要となるケースが増え、より科学的根拠に基づいた厳格な目標管理が求められるようになります。

排出量報告とモニタリング

参加企業は、毎年度の排出量実績(Scope1, 2)を算定し、報告する必要があります。このデータは排出量取引の基礎となるため、正確性が極めて重要です。第2フェーズからは、排出量の報告・検証(MRV)プロセスが法的義務に基づき強化され、第三者検証の受審が必須となる範囲が拡大します。

GXスタジオ:ベストプラクティスと課題の議論

GXスタジオは、業種を超えた交流を通じて実務上の課題や解決策を共有する場です。削減技術の導入事例や、サプライチェーン連携のノウハウなど、各社のベストプラクティスを共有することで、個社だけでは解決できない課題にアプローチします。

超過削減枠の取引

目標を上回る削減を達成した企業は、その余剰分を「超過削減枠」として売却できます。逆に目標未達の企業は、不足分を市場から調達する必要があります。第2フェーズからは、発電事業者に対する「有償オークション」や、目標未達時の「特定事業者負担金」などが導入され、炭素価格(カーボンプライシング)がよりシビアに経営へ影響する仕組みとなります。

未来社会像対話:ビジネス機会の創発

2050年のカーボンニュートラル社会を見据え、企業とステークホルダーが対話を行う場です。新たなライフスタイルやビジネスモデルの創出を目指し、バックキャスティング思考での議論が行われています。

3. GXリーグに参加するメリット

競争優位性の向上

GXリーグへの参加は、脱炭素経営における「トップランナー企業」であることを対外的に示すシグナルとなります。投資家や取引先からの評価向上に繋がるほか、政府のGX経済移行債を活用した金融支援(投資促進策)を受ける際の要件として優遇されるメリットも大きくなっています。

コスト効率の向上

自社のみでの削減が困難な場合、排出量取引市場を活用することで、高コストな設備投資を行うよりも安価に削減目標を達成できる可能性があります。市場メカニズムを活用して、社会全体で最も効率的な削減を目指せます。

イノベーションの促進

異業種連携やルール形成への参画を通じて、新たな脱炭素技術やビジネスモデルの開発が加速します。また、炭素価格の将来予測を踏まえた早期の投資判断が可能となり、脱炭素市場における先行者利益を確保しやすくなります。

5. 募集期間と申請プロセス

募集期間

GXリーグへの新規参画募集は、原則として毎年度行われます(例年秋から冬頃)。既存の参画企業も、フェーズの切り替わりや年度更新のタイミングで継続意思の確認が行われます。

申請プロセスの詳細

申請は「GXリーグポータルサイト」を通じて行います。事前準備として、排出量データの収集(Scope 1, 2)、2030年度に向けた削減目標の設定、および経営層のコミットメントを含む社内合意形成が必要です。その後、ポータルサイトで企業情報や目標値を登録し、誓約書を提出します。

第2フェーズ(2026年度)からの義務化対象となる企業については、別途法的な届出が必要になる可能性があるため、経済産業省やGXリーグ事務局からの最新の公募要領を確認することが重要です。

6.まとめ

GXリーグは、単なる排出量取引制度にとどまらず、社会全体の脱炭素化に向けた多面的な取り組みを支える重要な枠組みです。企業が積極的に参加し、透明性や効率性を高めることで、GXリーグは日本のカーボンニュートラル実現における重要な推進力となるでしょう。加えて、参加企業間での知識共有やイノベーションの促進を通じて、持続可能な経済成長を実現する基盤を提供しています。

あわせて読みたい
【排出量取引】試行期間を解説ーGXリーグ第1フェーズについて GXリーグ第1フェーズ(2023年度~2025年度)は、日本が独自に設計した排出量取引制度(GX-ETS)の導入初期段階であり、カーボンニュートラルに向けた企業の自主的な挑戦...
あわせて読みたい
【主要テーマ解説】GX-ETS 第2フェーズ解説資料 令和7年7月更新版 GX-ETSとは、日本の脱炭素化を推進するための制度で、企業が排出するCO2の上限を設定し、排出枠を取引できる仕組みです。2026年度から開始する第2フェーズでは、排出枠...

この記事を書いた人

大学在学中にオーストリアでサステナブルビジネスを専攻。 日系企業のマネージングディレクターとしてウィーン支社設立、営業戦略、社会課題解決に向けた新技術導入の支援など戦略策定から実行フェーズまで幅広く従事。2024年よりSSPに参画。慶應義塾大学法学部卒業。

目次