

GXリーグ概要:GXリーグとは?
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、経済と環境の好循環を生み出す観点から、国際競争で勝てる企業群を産官学一体で創出するために構築された枠組みです。
2023年11月現在のGXリーグ参加企業数は550社ほどで、家庭部門等への電力供給に伴う排出を加味すると、日本全体のCO2排出量の4割以上を占め、多排出企業上位30社の内25社程が参加しています。(【補足】2025年11月現在、GXリーグ参画企業数は900社を超え、日本全体の温室効果ガス排出量の5割超をカバーする規模に達しています。)参加企業の種別は、製造業、電気・ガス、小売、金融、建設、運輸等と幅広く、大企業からベンチャー企業まで自主的に参加しています。
GXリーグ創設の背景
2020年10月「2050年カーボンニュートラル宣言」に向け、企業が自ら以外のステークホルダーもふくめた経済社会システム全体の変革(GX:グリーントランスフォーメーション)を牽引していく活動の一環としてGXリーグは設立されました。
GXリーグには、主に3つの活動意義があります。1つは日本企業の環境投資を正当に評価する構造としての意味です。日本企業には低炭素やカーボンニュートラル達成への技術で世界で貢献できるポテンシャルをもち、TCFD賛同数は世界一ですが、地理的・エネルギー構造的制約により、ネガティブなイメージが固定化されています。そのような中、企業努力を正当に評価する仕組みの構築が急がれています。2つ目は日本国と日本企業の官民連携でのルール形成能力を高めていくことが重要である点です。現在の環境領域におけるルールメイキングは主に欧州政府や海外のNGO/NPO主体で先行しています。欧州基準を受け入れるのみならず、官民がポテンシャルを活かすルールメイキングを行っていくことが求められています。そして3つ目は、企業のGX市場創出のためのリーダーシップを育んでいく意味合いです。ルールメイキングは主にグローバル主体で行われ、他分野においても日本においては、政府が策定したルールに則り、企業がプレイヤーとして参加する構造が一般化されています。日本から世界に向けた国際スタンダードの提案を行うことが必要とされています。
GXリーグの理想像
GXリーグではこのような背景を踏まえ、「経済社会システム全体の変革」を目指しています。それには、企業が生活者視点でのカーボンニュートラルに向けた未来像を描き、リーダーシップ(行動指針)のあり方を示すこと、GXとイノベーションを活用していち早く実践・移行した企業が消費者に選ばれ、適切に収益を上げられる構造を作ること、そして企業のGX投資が金融市場・労働市場・市民社会から協賛される仕組みを構築することが含まれます。こうした循環構造を構築することで、企業活動と環境対応の双方を評価する仕組みが整い、将来的にはカーボンニュートラル時代のハブとして世界からESG資金を呼び込み、日本企業のさらなる成長につながることが期待されます。
GXリーグの活動
GXリーグの取り組みは下記の4項目です。
①自主的な排出権取引(GX-ETS)
GXリーグ参画企業が自ら目標を掲げて、GX投資とGHG排出量削減及び、ステークホルダーへの開示を行う活動です。
排出権取引とは、炭素排出に価格を付け排出者の行動を変容させる「カーボンプライシング」手法のひとつで、政府による明示的なカーボンプライシングに分類されます。排出権取引は1プレッジ、2実績報告、3取引実施、4レビューの順に実施され、実績報告においては第三者保証が必要とされています。
②市場創造のためのルール形成
将来的なビジネス機会を踏まえ、新市場創造に向けて官民連携でルール形成を行う場です。GXリーグ内では複数のワーキンググループ(WG)が設置され、各種テーマに沿ったルールの設計、実証、将来的に世界に向けたスタンダードの確立を目標としています。
市場創造のためのルール形成は、「1. WGテーマ提案」「2. アジェンダ設計」「3. 議論」「4. 実証」「5. 評価」の順に進められます。参画企業から出されたルールメイキングに関する希望事項として、部素材のCO2ゼロ表示、カーボンクレジットの活用、金融市場での評価、削減貢献量の表示・開示といったテーマが挙げられています。
③ビジネス機会の創発
2050年カーボンニュートラルに向けた官民のルールメイキングや、参画企業による中長期の経営戦略・事業開発・研究テーマ開発などへの活用を目指し、業種を超えた対話を行う活動です。2023年には参画企業および有識者、各地域の関係者、生活者をゲストとしたディスカッションが開催され、社会実装に向けたアイデアの具体化・ブラッシュアップが行われました。
④GXスタジオ
参画企業同士の連携や共創を推進するための交流の場です。企業のサステナビリティ担当者同士の横のつながりを広げ、ディスカッションや情報交換を行うことができます。2023年6月より隔月での開催が計画されています。

GXリーグ事務局 GXリーグ活動概要
GXリーグへの参画に求められる要件
GXリーグ参画企業に求められる取り組みは以下の3項目です。
①自らの排出削減(目標設定、実施、公表)
2050年カーボンニュートラルに賛同し、それと整合的と考えられる2030年の排出量削減目標を掲げ、その目標達成に向けたトランジション戦略を構築します。ここでの目標設定範囲は自社の直接排出および間接排出が対象です。また、目標に対する進捗度合いを毎年公表し、目標実現に向けた活動を行います。自社が設定した削減目標を達成できなかった場合は、直接排出分についてJクレジット等のカーボンクレジットや企業間での自主的な超過削減分の取引を実施したかどうかも公表するなど、目標達成に向けてコミットします。さらに推奨事項として、国の削減目標(46%減)よりも野心的な目標設定が推奨されています。
②サプライチェーンでの排出削減
自社のみならずサプライチェーン上の幅広い主体に積極的に働きかけを行い、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現するための排出量削減への取り組み支援を行います。また需要家・生活者に対しても、自社の製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)などの取り組みを通じて、能動的な付加価値の提供と意識醸成を行います。推奨事項として、サプライチェーン排出についても2030年の削減目標を設定し、目標達成に向けたトランジション戦略を構築します。
③製品・サービスを通じたグリーン市場の創造
グリーン製品の積極的・優先的な購入等により、市場のグリーン化を牽引します。生活者・教育機関・NGO等の市民社会との対話を積極的に行い、そこで得られた示唆を自社の経営に活かすことや、自社でのイノベーション創出に取り組み、イノベーションに挑む他の主体と協働して新たな製品・サービスを通じた排出削減への貢献を行うことで、グリーン市場の拡大を図ります。推奨事項として、自社のグリーン製品を率先調達することで需要を創出し、消費市場のグリーン化を促進します。
GXリーグ参画による3つのメリット
①気候変動対応や排出削減の効果的なPR
GXリーグはカーボンニュートラル時代のハブとして将来的に世界からESG資金を呼び込むことを想定しており、日本の正式な官民連携による排出権取引制度として注目度が高まっています。GXリーグという公式の場で排出削減状況を定量的に報告し続けることは、各社のウェブサイト上などで行われる一般的な開示以上の効果を持つと考えられます。
②政府からの優遇措置
経済産業省の「GXリーグ基本構想」によると、GXリーグに参画し一定の項目を実践した企業に対して、先駆的な取り組みに必要な資金調達や人材確保への支援を行った上で、補助金やその他の優遇措置を含む政府からの施策が積極的に検討されています。
③GX-ETSの取り引き
参画企業は毎年、自社の排出量に関する進捗状況をまとめて公表することになっており、その際に排出削減目標を超過達成した量に関しては、政府がその量をクレジット化した上でカーボンクレジット市場で排出量取引を行うことができます。
④サステナビリティ推進担当者間の横の繋がり
多くの企業にとってカーボンニュートラルに向けた取り組みは前例のない新たな挑戦だと言えます。そのようにナレッジや情報が不足している中、GXリーグでWGやディスカッションの場を共有することで生まれる企業のサステナビリティ推進担当者同士の繋がりは、直近の課題解決だけでなく将来的な企業間提携の機会にもつながります。
GXリーグに求められる検証・保証
GXリーグの算定範囲
GXリーグ参画企業は、排出量実績につき毎年度、第三者検証をうける必要があります。(GXリーグ規定23条2項)ただしGroup X企業は排出量実績につき、毎年度の検証は任意です。
Group G企業は、排出量算定結果につき第三者検証(限定的保証水準)が必須です。また超過削減枠創出の場合には、合理的保証水準の検証が必須です。
保証基準
合理的保証は、GXリーグの超過削減枠創出の際に適用されます。合理的保証業務では、積極的形式による意見表明を行う基礎として、合理的な低い水準に保証業務リスクを抑えるように手続きが実施されます。合理的保証の意見は、主張が適正であることを保証するため、「~と認める」等の積極的形式で表明される。
限定的保証は、GXリーグの排出量実績報告の際に適用されます。限定的保証業務は、合理的保証業務の場合よりは高い水準ではあるが、消極的形式による結論の報告を行います。基礎としては受け入れることができる程度に保証業務リスクの水準を抑えるように手続きが実施されます。限定的保証の意見は、主張に誤りがないことを保証するため、「~していないと認められる事項はすべての重要な点で認められなかった」等の消極的形式で表明されます。
GXリーグの今後のスケジュール
カーボンニュートラル達成以降には残余排出量と吸収量を均衡させるクレジット取引が必要であることを見据え、達成以前から企業間で排出量を調整する仕組みを通じ効率的な取り組みを進めることが重要です。GXリーグは将来の排出量を調整する仕組みに向けての準備の取り組みとして位置づけられています。
2023年度~2025年度の試行期間では、参画企業は排出量、排出削減目標を開示し、排出量算定結果に対する第三者検証を導入します。2026年度から2032年度の排出量取引市場本格稼働の時期では、参画企業が設定する目標が政府方針と合致するかについて第三者検証が行われます。また直近では、2024年9月から2023年度排出量実績報告が最重要イベントとなります。

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まとめ
GXリーグは企業群や官公庁、大学と一体となり、経済社会システムの変革や新たな市場を作るための挑戦的な取り組みで、参画企業はGXリーグという枠組みを使うことで、カーボンニュートラルに向けた取り組みのルールメイキングから投融資・人材獲得まで様々な機会を獲得できます。GXリーグを有効に自社に適用するためにも、排出量報告、削減目標設定、削減活動、そして必須要件である第三者保証を実施することが重要となります。SSPではGXリーグに適用可能な限定的保証を実施することが可能です。詳しくはお問い合わせよりご連絡ください。
参考文献
経済産業省「GX リーグ基本構想」
経済産業省「GXリーグの取組について」
GXリーグ事務局「GXリーグ活動概要」
GXリーグ事務局「GXリーグ基準年度排出量等算定・報告ガイドライン」


